はじめに
会社のアカウントでGeminiを使っていて、「この会話内容は会社にバレるのだろうか」と気になったことはないでしょうか。管理者の側でも、社員にそう聞かれたときに、何がどこまで見えるのかを説明しにくいものです。
本記事では、2026年10月22日にGoogle VaultがGmailやドキュメントのGeminiとの会話に対応したことを受けて、会社に見られるのはどの会話か、書き出しに何が入るのかを解説します。スマートエイトは法人向けの生成AI研修で、会社で契約したGeminiの設定を扱っています。
結論を先に書くと、会社のGoogle Workspaceのアカウントで使ったGeminiの会話は、会社が権限を渡した管理者なら見られます。調査や訴訟に備える道具のVaultを含む契約では人と期間を決めて書き出せ、Vaultの無い契約でも、最上位の管理者が組織のデータをまとめて書き出すと、その中に会話が入ります。同じファイルを開ける同僚には見えず、個人のアカウントで使ったGeminiは会社の外です。
社員の側に止める設定は無いため、管理者は書き出しを使う前に、誰がどんな場面で使うかを決め、社員に伝えておく必要があります。
本記事は2026年10月28日時点のGoogleの公式の告知とヘルプをもとにしています。Vaultを使えるのは、Business Plus、Enterprise Standard・Plusなど、Vaultを含む契約か、Vaultを追加した契約です。Businessのプランで、Vaultが最初から含まれるのはBusiness Plusだけです。
Geminiの会話は会社に見られるのか|Vaultで管理者が書き出せる会話
会社のアカウントで使ったGeminiの会話は、Google Vault*を使える管理者が書き出せます。今回加わったのは、GmailやドキュメントのサイドパネルでGeminiと交わした会話で、Geminiアプリの会話は以前から書き出せました。

10月22日から、GmailやドキュメントのGeminiも書き出せる
Googleは2026年10月22日、Vaultで、GmailやドキュメントなどのGeminiとの会話を書き出せるようにしました。対象は、Gmail・ドライブ・ドキュメント・スプレッドシート・スライド・Meetのサイドパネル*で交わした会話です。
Vaultの画面では、これらをまとめて「Gemini in Workspace」と呼びます。提供は告知と同時に始まっており、Vaultを使える組織ならすでに書き出せます。
例えば、営業の担当者がGmailのサイドパネルで、取引先への返信の下書きを頼んだとします。その頼み方と、Geminiが返した下書きが、書き出しの対象になります。
Geminiアプリの会話は、2025年から書き出せる
gemini.google.comやスマートフォンのアプリを、会社のアカウントのまま開いて交わした会話は、もっと前から対象です。Vaultは2025年2月に、Geminiアプリの会話の検索と書き出しに対応しました。
2026年6月には、会話を残す期間を決める設定と、調査や訴訟のために消えないよう押さえる設定も、Vaultで決められるようになりました。これらの設定がかかっていれば、社員が会話を消しても、Vaultの側には残ります。
個人のアカウントで使ったGeminiは、会社のVaultに入らない
Vaultが扱うのは、組織のGoogle Workspaceのデータです。社員が自分で作ったGmailのアカウントでGeminiを使った会話は、会社のVaultの外にあります。
ただし、会社に見られないからと個人のアカウントに仕事の情報を入れると、その扱いは会社の契約ではなく、Googleの個人向けのルールで決まります。個人のアカウントで何が起きるかは、Googleプライバシーポリシー変更で会社のGmailは広告に使われるのかで詳しく解説しています。
*Google Vault:会社のGoogle Workspaceのデータを、調査や訴訟に備えて残し、探し、書き出すための管理者向けの道具。使えるのは一部の契約だけ。 *サイドパネル:GmailやドキュメントなどGoogleのアプリの画面の右側に開いて、Geminiに頼める欄。開いているメールや文書を踏まえて答える。
Vaultで書き出せる範囲|入る物と入らない物
書き出しに入るのは、社員の頼み方とGeminiの答えだけではありません。作られた画像や、参照したファイルへのリンクまで入ります。一方で、絞り込みに使えるのは人と期間だけで、言葉で探すことはできません。

書き出しに入るのは、頼み方・答え・画像・参照したファイル
サイドパネルの会話の書き出しには、次の物が入ります。
- 社員が入力した頼み方と、Geminiの答え
- 答えとして作られた画像などの添付
- 参照したドライブの文書やGmailのスレッドへのリンクと、答えの引用元
- 会話の日時などの記録
1章の営業の担当者なら、下書きを頼んだ文、Geminiが返した下書き、そのとき開いていたメールのスレッドへのリンクが、1件の会話としてまとまります。会話は1件ずつのファイルになり、画像は別のファイルで届きます。
Geminiアプリの会話の書き出しには、頼み方と答えが入ります。頼み方に添えた画像などのファイルや、答えとして作られた画像は、Vaultの対象外です。
書き出せるのは、履歴がオンになってからの会話だけ
サイドパネルの会話は、会話の履歴*がオンの間に作られた物だけが書き出しの対象です。サイドパネルに履歴が残るようになったのは2026年3月から4月にかけてで、それより前の会話は保存されていません。
裏を返すと、この春以降にサイドパネルで交わした会話は、書き出しの対象になる前提で考えます。書き出しのファイルには会話を消した日時を記す欄もあり、社員が消した会話が書き出しから外れるとは限りません。
絞り込めるのは人と期間で、言葉では探せない
サイドパネルの会話は、人と期間で絞って書き出します。人はアカウントか組織部門*で指定でき、組織部門で指定するときは5,000人までの部門が対象です。期間は日付の範囲で指定し、どの地域の時刻で区切るかも選べます。
サイドパネルの会話は、Vaultの画面で中身を読めず、特定の言葉を含む会話だけを選ぶこともできないため、指定した人と期間の会話がすべて書き出されます。Geminiアプリの会話は、同じく人と期間で探したうえで、Vaultの画面で中身を読めます。2つの会話の扱いをまとめると、次のとおりです。
項目 | Geminiアプリの会話 | サイドパネルの会話 |
|---|---|---|
書き出せるようになった時期 | 2025年2月 | 2026年10月22日 |
Vaultの画面で探して中身を見る | できる | できない |
消さずに残す設定 | できる | 今後の予定 |
作られた画像 | 入らない | 入る |
*会話の履歴:サイドパネルで交わしたGeminiとの会話を、後から開き直せるように残す機能。アプリごとに分かれ、本人にだけ表示される。 *組織部門:Google Workspaceで、社員のアカウントを部署や拠点ごとにまとめる単位。設定や権限をこの単位で分けられる。
管理者が書き出す前に決めること|権限・残す期間・使う場面
Vaultの権限は、社員の会話をまとめて読める強い権限です。使い始める前に、誰に権限を渡すか、会話をどれだけ残すか、どんな場面で使うかの3つを決めておきます。

誰にVaultの権限を渡すか
Vaultの権限は、特権管理者*が管理者の役割を作って割り当てます。書き出しを作るには、「検索の管理」と「エクスポートの管理」の2つの権限が要ります。この2つは組織部門に限って渡せるため、人事部の担当者には人事部の社員の分だけ、という分け方ができます。
特権管理者でも、組織の中のすべての書き出しを開けるわけではありません。開けるのは、自分が作った書き出しと、共有された案件*の書き出しだけです。
誰が書き出しのファイルをダウンロードしたかは、管理コンソールの「レポート」から「監査と調査」の「Vault のログイベント」で後から確かめられます。権限を渡した後も、使われ方を点検できる形にしておきます。
会話をどれだけ残すか
サイドパネルの会話は、管理コンソールの「生成 AI」から「Gemini for Workspace」の「会話の履歴と削除」で、残し方を決めます。社員が自分で会話を消せるかを「手動削除」で、使われなくなった会話を消すまでの日数を「自動削除」で選びます。
自動削除は、90日・540日・1,080日の中から選べます。社員それぞれに選ばせることも、自動では消さないこともでき、管理者が何も設定しなければ、会話は期限なく残ります。
Geminiアプリの会話は、管理コンソールの会話の履歴の設定に加えて、Vaultの側でも残す期間を決められます。会話の履歴が既定で何か月残るか、オフにすると何が変わるかは、Geminiアクティビティはオフにした方が良いかにまとめています。
どんな場面で書き出すか
Vaultは、もともと調査や訴訟に備えるための道具です。Geminiの会話の書き出しも、情報の持ち出しの調査や、取引先との争いへの対応のように、理由のある場面で使う物と考えるのが自然です。
社内の決まりには、書き出してよい場面と、承認する人を書いておきます。例えば「情報漏えいの疑いがある時に、情報システムと人事の責任者が承認してから書き出す」と決めておけば、権限を持つ管理者が1人で判断する形を避けられます。
*特権管理者:Google Workspaceの管理者のうち、管理コンソールのすべての設定を変えられる役割。Vaultの権限をほかの管理者に渡すのもこの役割。 *案件:Vaultで、調査や訴訟の対応など1件ごとに作る作業の場所。検索の条件・書き出し・操作の記録がここにまとまる。
社員にどう伝えるか|書き出せることを先に知らせる
Vaultの書き出しは、社員の側で止める設定が無いため、書き出せることは会社から先に伝えておきます。

伝えるのは3つ
社員に伝えるのは、次の3つです。
- 会社のアカウントで使ったGeminiの会話は、Geminiアプリもサイドパネルも、管理者が書き出せる
- 書き出すのは決まりに書いた場面だけで、承認する人が決まっている
- 会話を消しても、会社の設定によっては残る
伝え方は、社内の生成AIの決まりに1項目足すのが手早い方法です。決まりそのものの作り方は、生成AI利用ガイドラインの決め方4手順で扱っています。
会社のGeminiで仕事をしてよい理由も、一緒に伝える
書き出せると聞くと、会社のGeminiを避けて、個人のアカウントで使おうとする人が出ます。伝える目的は社員を縛ることではなく、仕事の情報を入れてよい場所をはっきりさせることです。
会社のWorkspaceのGeminiに入れた中身は、許可なく会社の外でAIの学習に使われない扱いです。1章の営業の担当者が、取引先への返信をサイドパネルで下書きするのは、会社が想定している使い方にあたります。
周知の文には、禁止の一覧より先に、「会社のGeminiでやってよい仕事」の例を2つか3つ添えます。見られることより、どこで使えばよいかが伝わると、社員は会社のアカウントで使い続けやすくなります。
よくある質問|Geminiの会話とVaultの書き出し
Geminiアプリで会話を消せば、会社に見られませんか?
残ることがあります。Geminiアプリの会話は、Vaultで残す期間や消えないよう押さえる設定がかかっていれば、社員が消しても、Vaultの管理者には見える状態で残ります。見られるかどうかは、消したかどうかより、会社がVaultで何を設定しているかで決まります。
会社のアカウントで、Geminiのチャットを削除できないのはなぜですか?
管理者が、社員による会話の削除を止めている可能性があります。Geminiアプリでは、管理者が組織部門やグループごとに会話の削除をオフにできます。サイドパネルでは「手動削除」をオフにすると、消そうとした時に、管理者が削除を止めていることが画面に表示されます。
消したい事情があるときは、情報システムの担当者に相談してください。
Vaultを含まない契約なら、会話は書き出されませんか?
書き出されることはあります。特権管理者は、管理コンソールのデータ エクスポート ツールで組織のデータをまとめて書き出せ、この手順はGoogle Workspaceのすべての契約で使えます。
その書き出しには、社員とGeminiの会話も含まれます。Geminiが用意した3つの回答の下書きがすべて入るため、社員が画面で見ていない文が含まれることもあります。
ほかの社員に、自分の会話を見られることはありますか?
会社が権限を渡した管理者のほかに、見られることはありません。サイドパネルの会話の履歴は本人にだけ表示され、共有されたファイルで交わした会話も、同じファイルを開ける他の社員には見えません。
見られるのは、Vaultの権限を持つ管理者と、データ エクスポート ツールを使う特権管理者です。Geminiアプリの会話は、Vaultの「検索の管理」の権限があれば、書き出さなくても画面で中身を見られます。
さいごに
本記事では、2026年10月22日にGoogle VaultがGmailやドキュメントのGeminiとの会話の書き出しに対応したことを受けて、会社に見られる会話の範囲と、書き出しに入る物を解説しました。会社のアカウントで使ったGeminiの会話は、Geminiアプリもサイドパネルも、権限を持つ管理者が書き出せます。
社員から「Geminiの会話は会社に見られるのか」と聞かれたら、書き出せることを隠さずに伝え、誰がどんな場面で使うかを社内の決まりに書くのが次の一歩です。
スマートエイトの生成AI研修では、会社のGeminiに入れてよい情報の線を最初に受講者と確かめ、そのうえで受講者の実際の業務を題材に演習します。
※生成AI研修資料/導入事例も無料ダウンロードいただけます。




