はじめに
毎月の頭に売上や商談の数字を手で集め、計画に届いたかどうかを見て終わっていないでしょうか。経営ダッシュボードを作っても、悪い数字の次に何をするかが決まらなければ、やがて開かなくなるものです。
この記事で作り方を解説する経営ダッシュボードは、次のような画面です。本記事の画像はすべて、スマートエイトのダッシュボードの形で作った見本で、会社も数字も架空です。

本記事では、打ち手が決まる経営ダッシュボードの作り方を、KPIツリーの描き方から毎月の管理の仕方、つなぐデータ、AIへの頼み方まで順に解説します。
スマートエイト代表の小坂井は、リクルートの事業で、最終目標のKGI、途中の数字のKPI、そのKPIに対するKPIを、年単位と当月・前月で見ながら、課題と打ち手を決めていました。スマートエイトは、同じ数字の見方を自社のダッシュボードの画面にして、AIで作っています。
結論として、KGIからKPI、行動の数を測るKDIまでを式でつないだツリーを作り、受注や商談のデータをつなぐと、足りない数字を上からたどって次のアクションを決められます。
経営ダッシュボードとは|数字を見る画面ではなく、打ち手を決める画面
経営ダッシュボードとは、会社の数字を1枚で見る画面です
経営ダッシュボードとは、受注額や商談の数といった会社の数字を、計画と並べて1枚で見る画面です。表を開いて足し上げなくても、どの数字が計画に届いていないかが分かります。
画面の起点に置くのは、最終目標を数字にしたKGI*です。この記事では、1年の受注額をKGIに置いて説明します。
その下に、目標への途中の進み具合を測るKPI*を置きます。KPIを中心に置いた画面なので、KPIダッシュボードと呼ぶこともあります。

画面の先頭には、今のペースで計画に届くかを言い切る結論の1文を置き、その下にファクト・課題・打ち手を1行ずつ並べます。開いて数行で、足りない数字と次に打つ手が分かります。
作っても見なくなるのは、次の行動が決まらないからです
スマートエイトが商談で伺う悩みは、ダッシュボードが無いことだけではありません。数十名の会社の代表が事業ごとの計画と実績を手で計算している例のほか、作った画面が使われず、レポートは手作業のままという例もあります。
作っても見なくなる原因は、次の2つに絞れます。
- 更新が手作業で、数字が古くなる
- 数字が式でつながらず、悪い数字を見ても次の行動が決まらない
1つ目は、集計をAIに任せれば軽くなります。重いのは2つ目です。受注額が足りないと分かっても、数字同士のつながりが無ければ、件数が減ったのか単価が下がったのかを毎回調べ直すことになります。
スマートエイトの最初の画面は、数字が式でつながらず、作り直しました。式でつないでから、初めて課題が読めるようになりました。
打ち手を決める画面に要るのは、数字の多さではなく、数字同士のつながりです。今の集計表を開き、受注額が足りない時に次に見る数字を1つ言えるかを確かめてください。言えなければ、足りないのは式です。
*KGI:Key Goal Indicatorの略で、最終目標を数字で表した指標です。売上高や受注額などを置きます。
*KPI:Key Performance Indicatorの略で、最終目標への途中の進み具合を測る指標です。
KPIツリーを描く|KGIからKDIまで式でつなぐ
経営ダッシュボードの画面を作る前に、何の数字を載せるかを決めます。紙に1枚、KPIツリー*を描いてください。KPIツリーとは、KGIを頂点に置き、それを支える数字を段ごとに並べた図です。
目標の数字を、掛け算と足し算で分けます
ツリーの段の間は、式でつなぎます。法人向けのサービスなら、受注額から次の4本の式で分けられます。
- 受注額=受注件数×平均単価
- 受注件数=新規の受注件数+既存顧客の追加
- 新規の受注件数≒初回商談×受注率
- 初回商談=経路ごとの初回商談の合計
初回商談は初めて会う会社との商談で、経路はメール営業や展示会のような出会い方を指します。商談の月と受注の月がずれることがあるので、3本目だけ「≒」で結びます。
経路の数や、新規と既存の分け方は、会社ごとに違います。式の項目は自社の事業に置き換え、上の数字を下の数字の掛け算か足し算で言える形にしてください。

ツリーの四角い枠を、この記事では箱と呼びます。箱の間に式があると、どの箱を動かせば上の箱がどれだけ動くかが読めます。数字を並べただけの画面との違いは、この点にあります。
KPIは1本に絞り、ほかは「指標」と呼びます
箱の全部をKPIと呼ぶと、今どの数字を動かすのかが分からなくなります。スマートエイトの画面では、KPIと呼ぶのは初回商談の1本だけにし、KGIとKDIの間の、ほかの箱は「指標」と表記しています。
1本に絞る基準は、今の事業で最も足りず、社内の行動で増やせる数字であることです。平均単価や受注率も見続けますが、毎月の会議でまず動かす箱を1つに決めておくと、話す順番がぶれません。
KDIで、行動の数まで落とします
初回商談が足りないと分かっても、誰が何をするかはまだ決まりません。そこで経路ごとに、行動の数まで分けます。行動の数を測る指標をKDI*と呼びます。
メール営業ならメール送信数、フォーム営業ならフォーム送信数、電話なら架電数、展示会なら名刺の獲得数のように、経路ごとに測る行動を決めます。行動の数に率を掛けると、経路ごとの初回商談の見込みが出ます。
KDIは多くしすぎず、自社が動かせる行動だけを数本に絞ります。紹介やパートナーのように相手のある数字は、目標に置かなくて構いません。
ここまでを紙に描けば、ツリーは完成です。計画の数字が決まっていない箱は推測で埋めず、「未定」と書いておきます。
*KPIツリー:KGIを頂点に、それを支える数字を木の形に並べた図です。どの数字が目標につながるかを1枚で見られます。
*KDI:Key Do Indicatorの略で、行動の数を測る指標です。メール送信数や架電数が当たります。
毎月の管理の仕方|月次で全体を見て、次のアクションを決める
ツリーを1枚のHTML*の画面にして毎月開くと、全体の流れ、足りない箱、次のアクションの順に管理できます。
まず月別の計画と実績で、全体の流れを見ます
経営ダッシュボードを開いて最初に見るのは、月別の計画と実績です。受注額と初回商談を月ごとに図と表で並べておくと、単月の上下なのか、続いている不足なのかを分けられます。

初回商談も同じ形で並べると、受注額の不足が商談の数から来ているかの見当がつきます。

1か月だけの不足なら、その月の事情を確かめます。不足が続いているなら、次にツリーで原因を探します。
月次のツリーで、足りない箱を上からたどります
画面の各ツリーの上には、ファクトと課題の2つの欄を出します。何が起きていて、何が足りないかをここで読みます。次に何をするかは、画面の先頭のサマリーの打ち手にまとめます。
2つの欄の根拠は、箱で確かめます。ツリーは左上の受注額から、各箱の天気を見てたどります。天気は計画に対する実績の割合で、95%以上が晴れ、85%以上95%未満がくもり、85%未満が雨です。

受注額がくもりや雨なら、右の箱へ進みます。平均単価と受注率が晴れで初回商談が雨なら、足りないのは商談の数です。

初回商談の箱は、経路別からKDIへと続きます。例えば、展示会の経路が雨でKDIの名刺の獲得数も雨なら、展示会で名刺が足りない、というところまで絞れます。メール営業が雨なのにメール送信数が晴れなら、足りないのは送る数ではなく反応です。KDIの箱には行動の数だけを出し、率が足りないのか行動の数が足りないのかは、ツリーの上の課題の欄に書きます。
絞った原因は、累積と当月で確かめます。累積は期初から前月までで、年の計画に届く勢いかを見ます。当月は今月の1日から今日までで、月末を待たずに今月のうちに動くかを決めます。
期間は時間枠をはっきり分けて、一貫させるため、1本のツリーの中で混ぜません。3つの期間で同じ箱が雨なら、単月の事情ではなく、続いている原因だと読めます。
小坂井がリクルートの事業でやっていたのも、同じ考え方です。数字から課題と打ち手を決め、推移を見て、次の改善策を打っていました。
足りない箱を分解し、箱ごとに次のアクションを決めます
全体を見渡せると、次の分解に進めます。受注額と受注件数は商品別と顧客の種別別に分け、KPIや指標の箱も同じように分けます。どの商品の、どの顧客で数字が落ちたかまで見えると、次に動く相手が決まります。
打ち手は、足りない箱ごとに1つ決めます。足りない行動の数に、反応率と受注率と平均単価を順に掛けると、その打ち手で受注額がどれだけ動くかを式で言えます。
例えば、展示会の名刺が足りないなら、名刺をもらえる仕掛けを作ります。ブースで5分の診断を行い、結果を後日送る代わりに名刺をもらう、といった形です。メールの反応率がリストで違うなら、反応の高いリストへ送信を寄せます。担当と期限を決め、翌月のツリーで同じ箱の天気が変わったかを確かめます。
*HTML:Webページを作る形式です。ブラウザで開くだけで、画面を見られます。
作るには、どのデータをつなぐか|AIが数える数字、手で入れる数字、経営者が決める数字を分ける
ツリーの箱ごとに、つなぐデータを決めます
元のデータは、今のExcelやスプレッドシートのままで構いません。次のデータをつなぎます。
見たい箱 | つなぐデータ | つなぐと分かること |
|---|---|---|
受注額・件数・単価 | 受注の表 | 足りないのは件数か単価か |
計画 | 月別の計画の表 | 各箱が計画に届いたか |
初回商談・受注率 | 商談の一覧やカレンダーと、受注の表 | 足りないのは商談か受注率か |
経路 | 問い合わせや商談の経路の列 | どの経路が足りないか |
KDI | メール配信・フォーム送信・架電の記録、名刺の一覧から、月の数を手で写す | どの行動が足りないか |
商品別・顧客の種別 | 受注の表の商品と顧客の列 | どの商品の、どの顧客で数字が落ちたか |
最初は受注の表と商談の一覧で始めます。受注の表に「計画」のシートを足し、箱ごとに月別の計画を並べます。
受注の表には新規か既存か、商品、顧客の種別の列を足します。商談の一覧には経路、商品、顧客の種別の列を足します。どちらもExcel形式で保存し、1つのフォルダに入れてください。
何を受注と数えるかは、経営者が決めます
受注額、受注件数、初回商談の社数はAIが自動で数えます。行動の数であるKDIの実績は人が手で入れ、何を受注と数えるかと計画の値は経営者が決めます。ファクト・課題・打ち手はAIが下書きし、やる打ち手は経営者が決めます。

スマートエイトの場合、受注に数えるのは申込書・注文書・発注メールがある物だけです。
AIに作らせる|自社の名前に替えて渡し、毎月作り直す
表がそろったら、経営ダッシュボードは1枚のHTMLとしてAIに作らせられます。使う道具はClaude Code*です。パソコンのファイルを読み書きしながらAIに作業を任せる道具で、Claudeのデスクトップアプリの「Code」のタブから使います。
使うにはProなどの有料プランが要ります。
この文を自社の名前に替えて、AIに渡します
Codeのタブで表を入れたフォルダを開き、次の2つの見本の文を続けて貼ります。ファイル名、列の名前、受注の基準、期の始まりの月は、自社のものに替えてください。
このフォルダの「受注表.xlsx」と「商談一覧.xlsx」を読み、KPIツリーの画面を1枚のHTMLで作ってください。元のファイルは書き換えません。期は4月始まりです。
ツリーの式です。
受注額=受注件数×平均単価
受注件数=新規の受注件数+既存顧客の追加
新規の受注件数≒初回商談×受注率
初回商談=経路ごとの初回商談の合計
初回商談は、商談一覧で会社ごとに最初の商談を1社と数えます。受注額と受注件数は、「受注日」に日付がある行だけで数えます。計画は受注表の「計画」のシートにあります。
受注率は、その期間に初回商談をした会社のうち、受注表に受注がある会社の割合です。2つの表は会社名でつなぎます。既存顧客の商談は初回商談に数えません。続けて、画面の形を指定します
前の文に続けて次の文を貼り、送ります。
先頭に、今のペースで計画に届くかを言い切る結論の1文を置き、その下にファクト・課題・打ち手を1行ずつ書きます。続けて、受注額と初回商談の月別の計画と実績を図と表で並べ、さらに下に、前月の月次、期初から前月までの累積、今月の1日から今日までの当月のツリーを並べます。
ツリーは受注額の箱を左上に置き、右へ進むほど細かい数字にします。各箱には実績・計画・差・達成率を出し、95%以上は晴れ、85%以上はくもり、85%未満は雨と出します。計画が無い箱は「—」にします。初回商談の箱に「KPI」、ほかの途中の箱に「指標」と書きます。
当月の量の計画は、月の計画×経過日数÷月の日数にします。各ツリーの上に、ファクトと課題の案を書きます。打ち手の案は、先頭のサマリーにまとめます。足りない箱は、商品別と顧客の種別別の実績を前月と並べます。
読めない行は推測で埋めず、画面の下に並べます。作る前に、読んだ列の名前と分からない点を質問してください。来月も同じ形で作り直せるよう、作り方をこのフォルダにファイルで残してください。画面の数字を確かめ、翌月は同じ形で作り直します
AIの集計は、月の初めに受注額の合計を元の表で足し上げ、画面の数字と合うかを確かめます。
KDIの箱は、画面の数字が元の表と合ってから足します。受注表に「KDI」のシートを作り、経路ごとの行動の数の計画・実績・率と入力日を月に2回入れ、「KDIのシートを読み、経路の箱の右にKDIの箱を足してください。箱には行動の数の計画・実績・達成率だけを出し、率は課題の欄で使ってください。入力日から14日を過ぎた数字には「古い」と出してください」と続けて伝えます。
翌月は表を最新にしてから同じフォルダを開き、「残した作り方で、最新の表から画面を作り直してください」と伝えます。
*Claude Code:Anthropic社の、AIに作業を任せる道具です。表の集計や画面づくりまで進めます。
よくある質問|指標の数・会社の規模・データの扱い
指標はいくつ載せればいいですか
数より、式でつながっているかで決めます。上の箱の式に入らない数字は、動かしても目標が動かないので画面から外します。
迷ったら、箱を1つ隠してみてください。打ち手の話が止まらなければ、その箱は要りません。スマートエイトも、ツリーと図に同じ数字が出ていた節を中心に、画面から18節を外しています。
売上の小さい会社でも作る意味はありますか
あります。受注額が小さくても式は同じで、経路が2つなら経路の箱も2つです。受注の表と商談の一覧に計画を足すだけで始められるので、経営者が自分で数字を集めている会社なら、集計の手を離せる分だけ判断に時間を回せます。
AIの集計を確かめて直す時間も書き留めると、集計をAIに任せた費用が見えます。数え方は生成AIの費用対効果を測る4つの問い|OpenAI CFOの採点表の使い方で整理しています。
経営の定型業務をAIに任せた実例は、Claude Codeで会社経営を回す|提案書・朝の確認・経費を任せた実例で紹介しています。
財務や顧客の数字をAIに渡しても大丈夫ですか
渡す前に、社内の決まりと、使うAIの契約で入力した内容がどう扱われるかを確かめてください。最初の1本は、会社名と担当者名を記号に置き換えた表で作れば、社名や人の名前を見せずに画面の形と式を試せます。金額まで隠すなら、数字も仮の値に替えます。
スマートエイトでは、できあがった画面を1枚のHTMLのまま手元のパソコンだけで開き、外のサーバーには置いていません。ただし、Claude Codeで作る間は、読み込んだ表の中身もAnthropicのサーバーへ送られます。社内で共有する場合も、誰が見てよい数字かを先に決めてから広げます。
さいごに
本記事では、打ち手が決まる経営ダッシュボードの作り方を解説しました。KGIからKPI、KDIまでを式でつないだツリーに、受注の表と商談の一覧、月別の計画をつなぐと、月次で全体を見て、足りない箱から次のアクションを決められます。集計と画面づくりはAIに任せ、何を数えるかと計画は経営者が決めます。
毎月の数字を手で集めて見て終わっている会社は、この順番で変えられます。まず今週、受注額を式で分けたツリーを紙に1枚描いてみてください。
スマートエイトのスマートAIコーチでは、経営者や事業責任者の方が、こうした画面をご自身でAIに作らせられるよう、個別の実践とレビュー、チャットの相談で助言しています。
※生成AI研修資料/導入事例も無料ダウンロードいただけます。




