はじめに
Googleのプライバシーポリシーの変更で、Gmailの中身が広告に使われるという報道を見て、社員から「会社のGmailは大丈夫ですか」と聞かれた方はいないでしょうか。ポリシーの文面を読んでも、自社に関わる話なのかは判断しにくいものです。
本記事では、2026年10月16日に発効した改定で何が変わったのか、Gmailのデータが広告に届くのはどんな時か、会社のアカウントと個人のアカウントで扱いがどう違うのかを解説します。スマートエイトは法人向けの生成AI研修で、GeminiやGoogle Workspaceを会社で使うときの設定と線引きを扱っています。
結論を先に書くと、広告に使われる例外が働くのは、個人のGoogleアカウントで、検索などにGmailやフォトを読ませる設定を自分でオンにした時だけです。会社がGoogle Workspaceで契約したアカウントのデータは、広告に使われません。会社として確かめたいのは、仕事のやり取りが社員の個人のGmailに入っていないかという点にあります。
本記事は2026年10月28日時点のGoogleの公式のポリシーとヘルプをもとに、日本で使う場合を前提にしています。個人のアカウントは無料のGmailと有料のGoogle AIプランの両方を、会社のアカウントはGoogle Workspaceで契約したアカウントを指します。
Googleのプライバシーポリシー変更で何が変わったか|広告の約束に付いた例外
今回の改定で書き換わったのは、Gmail・ドライブ・Googleフォトの中身を広告に使わないという約束です。約束そのものは残り、そこに1つの例外が付きました。

書き換わったのは、どの1文か
Googleのプライバシーポリシーは、2026年10月16日に発効した版に替わりました。広告の節にある1文に、ただし書きが加わっています。
改定前の10月1日版では、ドライブ・Gmail・フォトの中身に合わせて広告を出すことはない、と言い切っていました。改定後もこの約束は残っています。
違うのは文の末尾です。これらのサービスのデータを使うことを、「パーソナライズド広告*をサポートするその他の Google サービス」に利用者が許可した場合は、約束の外になります。あわせて、広告を出し分ける元になる物に、関心のある事柄とアクティビティに加えて「パーソナライズされたコンテンツ」が入りました。
例外が働くのは、どんな時か
例外が働くのは、検索のように広告を出すGoogleのサービスに、Gmailやフォトのデータを読ませる許可を出した時です。ポリシーが広告の例に挙げるのも検索で、許可した後のデータは、読む側のサービスのポリシーと設定に従って扱われます。
Googleが挙げる例はホテルの予約です。出張のホテルの予約メールを個人のGmailで受けている営業担当が、検索にホテルの近くの過ごし方を聞くと、予約メールの中身を使っておすすめを返すことがあります。
広告が受信トレイそのものから作られるわけではありません。ただ、検索がメールから取り出した要約や推測は、広告の表示にも使われることがあります。予約メールから分かった出張先が、広告の出し分けにも使われうるということです。
パーソナル インテリジェンスで、何がつながるのか
検索やGeminiアプリが、その人の検索の履歴や、GmailとGoogleフォトの中身を使って答えを合わせる機能を、パーソナル インテリジェンス*と呼びます。このうちGmailやフォトの中身が読まれるのは、利用者が自分でつないだ時だけです。
検索につなげるのは、今のところGmailとGoogleフォトで、フォトは国や地域によってはつなげません。カレンダーをつなげるのは米国の英語版だけで、ドライブなどほかのアプリは近く加わる予定です。
Geminiアプリのほうは、ドライブやドキュメント、スプレッドシートまでつなげます。どちらも対象は、18歳以上で、個人のGoogleアカウントを使っている人です。
*パーソナライズド広告:見る人の関心や過去の行動に合わせて、表示する内容を変える広告。Googleではアカウントの設定で止められる。 *パーソナル インテリジェンス:検索やGeminiアプリが、履歴やGmail・Googleフォトの中身を使い、答えをその人に合わせる機能。メールや写真を読むのは、自分でつないだ時だけ。
会社のGmailは広告に使われるのか|Google Workspaceと個人のGmailで分かれる
「会社のGmail」と一口に言っても、Google Workspace*で契約したアカウントと、社員が自分で作った個人のGmailでは、扱いを決める文書が違います。画面は同じGmailでも、答えはどちらのアカウントかで変わります。

Google Workspaceで契約した会社のアカウントは、どうなるのか
広告には使われません。Googleは、Workspaceのサービスに広告を出さず、広告のためにGmailなどをスキャンすることも、データを集めて使うこともないとしています。今後も広告を出す予定はないという立場です。
会社のアカウントのデータの扱いは、今回変わったプライバシーポリシーではなく、契約と、Google Cloudのプライバシーに関するお知らせで決まります。
例外の入り口になるパーソナル インテリジェンスも、Workspaceのアカウントでは使えません。WorkspaceのGeminiに入れた中身は、人が確かめることも、許可なく会社の外で生成AIの学習に使われることもない扱いです。
個人のGmailを仕事に使っている場合は、どうなるのか
個人のGmailには、今回変わったプライバシーポリシーがそのまま当てはまります。社員が自分で作ったGmailで取引先とやり取りしていれば、そのアカウントで検索にGmailをつないだ時点から、例外の対象です。
1章の営業担当なら、受信トレイには出張の予約メールだけでなく、取引先との見積もりのやり取りも並んでいるはずです。Geminiアプリにつないだ場合は、つないだ後に届いたメールも読める範囲に入ります。
広告のほかに、つないだデータはどう使われるのか
会社として広告より気にしたいのは、AIの改善への使われ方です。検索にGmailをつなぐと、メールから取り出した要約や抜粋、推測が、生成AIの学習に使われることがあります。
その一部は、Googleが委託した事業者も含めて、人のレビュアーが確かめる対象になります。学習やレビューの前には、アカウントとの結び付きを外し、個人情報を除く処理を挟むとGoogleは示しています。
Google自身も、学習やレビューに使われたくない機密情報が入っているなら、アプリをつながないよう勧めています。仕事のメールが入ったGmailは、この「つながない」側に入れておくのが自然です。
*Google Workspace:会社や学校がGoogleと契約して使う、Gmail・ドライブ・カレンダーなどの一式。管理者がアカウントを発行し、設定をまとめて管理する。
Gmailを広告に使わせないにはどうするか|個人のGoogleアカウントで確かめる3か所
個人のアカウントで仕事のメールを受けているなら、検索のつなぎ先、Gmailの側の設定、広告の設定の順に3か所を確かめます。画面には「Google Workspace」という項目が出ますが、これは会社の契約ではなく、その個人のアカウントのGmailなどのことです。

検索につないだGmailを外すには
検索のつなぎ先は、Googleアカウントの設定から外します。手順は次のとおりです。
- Googleアカウントを開き、「データとプライバシー」を選びます
- 「パーソナライズ設定」の中の「検索サービスにおけるパーソナライズされたおすすめ表示」を開きます。google.com/search-personalization から直接開くこともできます
- 「追加のパーソナル インテリジェンス」の「接続済みのコンテンツ アプリ」で、「Google Workspace」と「Google フォト」の接続を外します
検索の設定は今、段階的に新しい画面へ移っており、上の名前が見つからない間はウェブとアプリのアクティビティの側で管理されます。
Gmailの側で、つなぎ先をまとめて止めるには
Gmailには、メールの中身をGoogleの他のサービスに使わせるかを決めるスマート機能*の設定があります。パソコンのGmailで、次の順にオフにします。
- 設定から「すべての設定を表示」を開きます
- 「全般」タブの「Google Workspace のスマート機能」で、「Workspace のスマート機能の設定を管理」を選びます
- 「他の Google サービスのスマート機能」をオフにして保存します
オフにすると、検索とGeminiアプリのパーソナル インテリジェンスは、Gmailの中身を使えなくなります。
日本ではこの設定は既定でオフなので、オフのままであれば、ここは変えずに済みます。
広告をその人に合わせないようにするには
いちばん外側の止め方は、マイ アド センター*で「パーソナライズド広告」をオフにすることです。オフにすると、Googleのサービスの広告は、アカウントの行動ではなく、時間帯や見ているページの話題、いま検索している内容から選ばれます。
ただし、この設定が止めるのは広告の出し分けだけです。2章で見た生成AIの学習やレビューは、3-1と3-2でつなぎ先を外さない限り続きます。仕事のメールを守るなら、3-1か3-2を先に済ませてください。
*スマート機能:Gmailなどの中身を使い、予定の自動追加や文の候補を出す機能の総称。サービスごとにオンとオフを選べる。 *マイ アド センター:Googleの広告の設定画面。広告をその人に合わせるかどうかや、表示を減らしたい話題を選べる。
会社では何を決めておくか|仕事のメールを個人のGoogleアカウントに置かない
3章の設定は一人ひとりが変えられる一方で、会社が社員全員の個人アカウントを見て回ることはできません。会社で決めるのは、仕事の情報をどのアカウントに置くかという線です。

仕事のやり取りを、どのアカウントに置くか
最初に決めるのは、取引先とのやり取りを会社のアカウントで受けることです。会社のメールを個人のGmailへ自動で転送している人がいれば、その転送を止めます。
会社のアカウントを社員に配っていない会社では、仕事用と私用でGoogleアカウントを分けるところから始めます。1章の営業担当のように、出張の予約も見積もりも同じ個人のGmailに入っている状態が、例外の対象になりやすい形です。
個人のアカウントでAIを使う人には、何を決めるか
個人のアカウントでGeminiや検索のパーソナル インテリジェンスを使うこと自体は、止める必要はありません。決めるのは、つなぐのは仕事のメールが入っていない私用のアカウントだけ、という1点です。
社内の生成AIのルールに、「個人のアカウントで、仕事の情報が入ったアプリをAIにつながない」という1行を足すと、線が伝わります。ルールの作り方は生成AI利用ガイドラインの決め方4手順で扱っています。
会社でAIを使うなら、どこに寄せるか
2章で見たとおり、WorkspaceのGeminiは、入れた中身が許可なく会社の外で学習に使われない扱いです。仕事のメールやファイルをAIに読ませたい要望には、個人のアカウントではなく、会社の契約のGeminiで応えます。
会話の保存や学習の扱いを個人と会社でどう分けるかは、Geminiアクティビティはオフにした方が良いかで詳しく扱っています。
会社の契約に寄せる費用が見合うかは、生成AIの費用対効果を測る4つの問いで確かめられます。
よくある質問|Googleのプライバシーポリシー変更とGmail
何も設定を変えていなければ、Gmailの中身は広告に使われますか?
使われません。例外が働くのは、パーソナル インテリジェンスでGmailを検索などにつないだ時だけで、つなぐには自分で接続を選ぶ必要があります。日本ではGmailの「他の Google サービスのスマート機能」も既定でオフです。
接続を外せば、それまでのデータは消えますか?
消えません。接続を外しても、検索サービスの履歴に残ったデータは、生成AIの学習を含む改善に引き続き使われることがあります。消したい場合は、activity.google.com で検索サービスの履歴を削除してください。
広告主に、メールの中身が渡ることはありますか?
ありません。検索にGmailやフォトをつないでも、広告主が受信トレイやフォトを見られるようにはならない仕組みです。人種・宗教・健康状態のようなデリケートな情報で広告を出し分けないという方針も、改定の前後で同じです。
Geminiアプリでの会話は、広告に使われますか?
使われません。Googleは、Geminiアプリとの会話を広告の表示に使っていないとし、変える場合は知らせるとしています。今回のポリシーで広告の例に挙がっているのは、検索のほうです。
さいごに
本記事では、2026年10月16日のGoogleプライバシーポリシー変更で何が変わり、Gmailのデータが広告に届くのはどんな時かを解説しました。例外が働くのは、個人のアカウントで検索などにGmailを自分でつないだ時だけで、会社のGoogle Workspaceのアカウントは広告に使われません。
社員から「会社のGmailは大丈夫か」と聞かれたら、まず仕事のやり取りが個人のGmailに入っていないかを確かめてください。入っていれば、3章の3か所を見直し、仕事の情報を会社のアカウントに寄せる線を決めるのが次の一歩です。
スマートエイトの生成AI研修では、会社で契約したAIの画面を使い、どのアカウントにどの情報を入れてよいかを決めてから実務の演習に入ります。
※生成AI研修資料/導入事例も無料ダウンロードいただけます。




