はじめに
ChatGPTに仕事を頼むと、そのたびに画面を開いて指示を書き、答えを待って、また次の指示を書くことになります。この往復に疲れて、「自分が見ていない間に進めておいてほしい」と思ったことはないでしょうか。
OpenAIは9月29日の開発者向けイベントで、ChatGPTの中で常に動き続けるAIエージェント「dots」を発表しました。本記事では、ChatGPT dotsとは何か、できることは何かを押さえたうえで、会社の仕事を任せる前に決めておきたい4つを整理します。スマートエイトは生成AI研修と業務の自動化支援で、AIにどこまで任せてどこで人が止まるかを企業と一緒に設計してきました。
結論を先に書きます。dotsは、会話していない間もクラウド上の自分のコンピューターで仕事を進め、結果と、判断が要ることを持ってくるAIです。OpenAIによると、先回りの調べ物は読むだけに制限されており、送信や変更の線は利用者が自分で引けます。つなぐアプリ、送信の扱い、PCの接続、記憶の消し方の4つを先に決めれば、下書き止まりの安全な使い方から始められます。
本記事は、2026年10月4日に確認したOpenAIの公式情報をもとにしています。dotsは順次提供中で、対象は18歳以上の Pro(月100・200・500ドル)と Business Premium の利用者です。Pro の対象外は欧州経済領域・英国・スイスで、日本は対象外の地域に入っていません。Enterprise は管理者が有効にしたときだけベータ版として使えます。
ChatGPT dotsとは|会話していない間も仕事を進めるAI
普通のChatGPTと何が違うのか
ふだんのChatGPTは、こちらが話しかけたときだけ答えます。dotsは、目的と任せてよい範囲を渡しておくと、会話と会話の間も仕事を進め、結果や判断が要ることを本人に持ってくる点が違います。
中で動くのは GPT-6 Astra* です。OpenAIはdotsを、クラウド上に自分のコンピューターを持ち、目標に向けて動き続けるエージェントと説明しています。使い込むほど、本人の好みや「良い仕上がり」の基準を覚えていく作りです。
いまは1人につき1つのdotsから始めます。名前と見た目は自分で決められます。最初の呼び名は「@自分の名前-dot」で、dotsに名前を付けると「@自分の名前-dotsの名前」に変わります。話しかける先は、パソコンのChatGPTアプリと、対応する更新が届いたスマートフォンのアプリのほか、会話画面の電話ボタンからの音声通話もあります。
dots自身のコンピューターと、自分のPCの関係
dotsには、ブラウザまで入った専用のコンピューターがクラウド上に1台付いてきます。調べ物、データの分析、資料づくりはこの中で進むため、自分のPCの電源を切っていても仕事は続きます。
専用のコンピューターの画面は、いつでも開いて中の様子を見られます。途中で自分が操作を代わり、終わったらdotsに戻すこともできます。
自分のPCのファイルを使わせることもできますが、最初は切られた状態です。つなぐかどうかは本人が決め、つないだ場合の条件は3章で整理します。

頼んでいないのに動く「先回りの調べ物」
dotsは、本人が話しかけていない間も、つないだアプリの中身を見て手伝えることを探します。OpenAIはこれを先回りの調べ物*と呼んでいます。
この調べ物で使える道具は、読むことしかできないように作られています。メッセージを人に送る、アプリの中身を書き換える、ブラウザやPCを操作するといったことは、仕組みの側で止められています。見つけたことをもとに何かを実行するときは、ふだんの依頼と同じ確認の手順を通ります。
*GPT-6 Astra:OpenAIが2026年9月に出したモデルで、同社は最も高性能なモデルと説明している。Enterprise のモデル設定はdotsには効かない。 *先回りの調べ物:dotsが頼まれていない間に、つないだアプリを読んで役立ちそうなことを探す動き。読むだけで、送信や書き換えはできない。
dotsでできること|任せられる仕事の3つの型
受信箱や予定から「判断が要ること」を持ってくる
いちばん分かりやすいのは、メールや予定表から、本人が手を打つべきことを拾ってくる使い方です。返事が要るメール、近づいている期限、まだ相手の返事を待っていることを見つけ、返信の下書きまで用意して本人に見せます。
公式発表には、早期テスターの例として、出版社への請求書の出し忘れにdotsが気づいた話が載っています。dotsは請求書を用意し、本人の承認を得てから送りました。拾うのも下書きもAIに任せ、送るかどうかは人が決める流れです。
本記事では、この「請求書の出し忘れ」を通しの例として使います。3章では、同じ例で送信の線をどこに引くかを考えます。
進行中の資料を最新の状態に保つ
2つ目は、1回で終わらない仕事を持ち続けてもらう使い方です。公式の使い方の例では、提案書と顧客の要件を渡しておくと、席数や条件が変わるたびに数字を直し、残っている確認事項を追い、次に決めることを持ってきます。
連絡の窓口も選べます。Slack* でdotsに直接メッセージを送ったり、チャンネルで呼びかけたりできます。途中経過はChatGPTに、判断が要ることはSlackに、という振り分けも頼めます。
毎朝、予定を確かめるような決まった作業は、繰り返しの予定として登録できます。予定した作業の結果は会話の中に届き、止める・時刻を変えるといった操作は一覧から行います。
大きな依頼は作業を分けて進め、結果を確かめて返す
3つ目は、手順の多い依頼をまとめて渡す使い方です。dotsは、裏で動く別のAIや作業用のスレッドを自分で立ち上げ、複数の作業を並行して進めます。本人はその間もdotsと話し続けられます。
立ち上げた作業には、dotsが詳しい指示を書いて渡し、返ってきた結果を確かめ、必要なら追加の指示を出してから本人に返します。秘書というより、段取りを組んで進める担当者に近い動き方です。dotsが確かめた後でも、終わった作業の結果は自分で見直してください。
dotsが動かした作業の一覧は、パソコンのアプリの「アクティビティ*」で見られます。途中で文脈を足す、勘違いを正す、止めるといった指示もここから出せます。
*Slack:社内のやり取りに使われるチャットツール。dotsを追加すると、メッセージで仕事を頼んだり経過を受け取ったりできる。 *アクティビティ:dotsが進めている作業と、別のAIに任せた作業の状況をまとめて見られる画面。パソコンのChatGPTアプリにある。
会社で任せる前に決める4つ|アプリ・送信・PC・記憶
dotsは便利な反面、メールやファイルに広く手が届きます。会社の仕事を任せる前に、次の4つを決めておくと、後から「そこまでやるとは思わなかった」が起きにくくなります。

つなぐアプリと「読むだけ」の線を決める
dotsが使えるアプリは、ChatGPTにつないだアプリの許可をそのまま引き継ぎます。メールやファイルの保管サービスをChatGPTにつないでいれば、dotsも同じ範囲で読めます。
注意したいのは、つないだアプリの中身を、頼まれていなくてもdotsが読み、覚えていく点です。個人のメールと仕事のメールを1つのアカウントで使っている場合は、つなぐ前に分けるか、つなぐアプリを仕事用に絞ってください。
送信は人が押す。「送る前に見せる」をルールにする
dotsには、何を自分で進め、何を本人に確かめるかの初期設定が入っています。そこへ利用者が Custom Rules* で線を足せます。行動ごとに、確認なしで進める・事前に頼んだ場合だけ進める・毎回確かめる・本人に渡すの4つから選ぶ作りです。
会社で始めるなら、メールやメッセージの送信は「毎回確かめる」にしておくのが無難です。請求書の例でいえば、拾って下書きを作るまではdotsに任せ、宛先と金額を見て送るのは人、という分担になります。外に出る操作の直前で人が止まる設計は、AIエージェントの暴走対策|長く動くAIを安全に自動化する3つの関門でも詳しく扱っています。
利用者が何も決めなくても、パスワードの変更や送金は必ず本人に戻されます。データの完全な削除などは毎回の確認が要り、メールを送る前には宛先と中身を自動チェック*が確かめます。とはいえ、これは間違いを減らす仕組みで、なくす仕組みではありません。
PCをつなぐか、記憶をどう消すかを決める
自分のPCをつなぐと、dotsはその中のファイルやアプリを使えるようになります。つなげるのは一度に1台だけで、PCが起動していてChatGPTアプリが開いている間だけ使えます。つなぐ場合は、dotsに扱わせるフォルダを決め、それ以外に機密の資料を置かない運用にしてください。
もう1つ見落としやすいのが記憶です。10月4日時点の公式ヘルプでは、アプリの接続を切っても、それまでにdotsが覚えた内容は消えないとされています。覚えた中身を1件ずつ見たり消したりもできず、消すにはdotsそのものを削除する案内です。
dotsを削除しても、dotsとの会話からChatGPTのメモリに入った内容は残り、dotsが作ったファイルも別に残ります。担当者の異動や退職のときは、dotsの削除、ChatGPTのメモリの整理、作られたファイルの整理の3つを手順に入れておくと安心です。
*Custom Rules:dotsの行動ごとに、自分で進めてよいか、確認が要るか、本人に渡すかを利用者が決める設定。初期のルールに上乗せして使う。 *自動チェック:dotsがメール送信やファイル変更をする前に、指示やルールに合っているかを別の仕組みで確かめる機能。OpenAIはAuto-reviewと呼ぶ。
dotsを使える条件と始め方|プラン・地域・料金
対象のプランと料金
dotsが使えるのは、次の3つの区分に入る利用者です。どの区分も18歳以上が対象で、個人向けの Pro と、会社向けの Business Premium・Enterprise で条件が分かれます。
区分 | 月額(米ドル) | dotsの提供条件 |
|---|---|---|
Pro 100・Pro 200・Pro 500 | 欧州経済領域・英国・スイスを除く地域で順次提供 | |
Business Premium(1席) | 提供地域全体で順次提供 | |
Enterprise | 契約による | ベータ版。管理者が有効にしたときだけ使える |
Pro と Business Premium では、最初の1つのdotsが追加料金なしでプランに含まれます。対象プランでも、アカウントに届くまで数日かかることがあります。
始め方の手順
dotsは、パソコンのChatGPTアプリか、パソコンのブラウザで作ります。10月4日時点の公式ヘルプでは、スマートフォンでは作れない案内です。作った後は、対応する更新が届けばスマートフォンのアプリからも話しかけられ、アプリの接続、Custom Rules やChatGPTのメモリの確認、dotsのコンピューターを開く操作もできます。
- パソコンのChatGPTアプリ、またはブラウザでChatGPTを開く
- 案内に沿ってdotsを作り、名前と見た目を決める
- 使わせるアプリをつなぐ。アプリ版なら、ここで自分のPCを使わせるかも選べる
- dotsの自己紹介を受け、最初の仕事を1つ頼む
最初の仕事は、毎日見ていて確認しやすいものが向いています。公式の案内も、1回目の結果を見て足りない点を直してから、任せる範囲を広げる進め方を勧めています。
会社で入れるときの管理者の設定
Enterprise では、管理者が有効にするまでdotsは使えません。法人向けの案内では、dotsの利用、Slackへの追加、利用者のPCへの接続、Custom Rules の編集を、役割ごとに別の権限として許可する作りです。
PCへの接続は、管理者が別に許可しないと使えません。データの保存場所を固定する設定を有効にしている会社では、PCへの接続そのものが使えなくなります。Enterprise のデータは、初期設定ではOpenAIのモデルの学習に使われません。
導入の効果は、削った時間より「人が手を入れずに終わった仕事の件数」で数えると判断しやすくなります。数え方の考え方は、生成AIの費用対効果を測る4つの問い|OpenAI CFOの採点表の使い方にまとめています。
よくある質問|dotsを試す前の疑問
スマートフォンだけでdotsを始められますか?
10月4日時点の公式ヘルプでは、始められない案内です。dotsを作るのはパソコンのChatGPTアプリか、パソコンのブラウザです。作った後はスマートフォンのアプリで使えますが、同じヘルプではスマートフォンのブラウザは対象外とされています。
dotsを使うとChatGPTの利用上限が減りますか?
dotsとの会話そのものは、ChatGPTの利用上限に数えられません。dotsが ChatGPT Work* などの別の機能に作業を立ち上げた場合は、その分がその機能の上限に数えられます。
プランには、dotsが手間のかかる作業をするための枠も含まれます。発表文ではこの枠が発表から1か月広げられるとされ、リリースノートではこの1か月はdotsの利用をプランの枠に数えないとされています。その後の条件は、プランごとに案内される予定です。
dotsを削除すると、作ったファイルも消えますか?
公式のFAQでは、消えないとされています。削除で消えるのはdotsが覚えた内容と会話、予定した作業です。dotsが作ったファイル、ChatGPTの会話、ChatGPTのメモリに入った内容は残るため、必要なら個別に整理します。
ChatGPT Workとdotsはどう使い分けますか?
ChatGPT Work は、こちらが頼んだ作業を進める場所です。dotsは、仕事を持ち続け、会話の合間にも次にやることを考えて動く点が違います。自分のPCをつないでいれば、必要なときにdotsのほうから ChatGPT Work に作業を立ち上げます(PCが起動していてChatGPTアプリが開いている間)。ChatGPT Work でできることはChatGPT Workとは|できることと使い方・自社で使えるかの確認手順で解説しています。
*ChatGPT Work:ChatGPTの中で、資料づくりや調べ物などの手順の多い作業を任せる機能。自分のPCをつないだdotsからも作業を立ち上げられる。
さいごに
ChatGPT dotsは、会話していない間もクラウド上の専用コンピューターで仕事を進め、結果と、判断が要ることを持ってくるAIです。OpenAIによると、先回りの調べ物は読むだけに制限され、送信や変更の線は利用者が引けます。会社で任せる前に決めたいのは、つなぐアプリ、送信を人が押すルール、PCをつなぐかどうか、記憶の消し方の4つです。
まずは、毎日目を通しているメールや予定の確認を1つだけ任せ、送信は「毎回確かめる」にして1週間回してみてください。AIにどこまで任せてどこで人が止まるかの決め方は、スマートエイトの生成AI研修でも業務の棚卸しから扱っています。
どの業務から手を付けるかで迷っている場合は、AIに任せられる業務が分かる無料診断から始めてください。3分で終わり、登録もメールアドレスも要りません。 ※生成AI研修資料/導入事例も無料ダウンロードいただけます。




