はじめに
会社の発信に動画を出したいのに、撮影も編集も手が回らないと感じたことはないでしょうか。AI動画の作り方を調べても、道具の名前ばかりが並び、どれをどの順に使えば1本になるのかは見えにくいものです。
本記事では、手描きの絵1枚から、会社のキャラクターが動く縦動画を投稿するまでの全工程を、実際に使った依頼文と失敗した版つきで紹介します。題材は、スマートエイトが自社のTikTok用に作った、仕事をAIに任せる新入社員のハシビロコウのキャラクター「ロコウ」です。
結論として、工程は5つで、使った道具は画像生成AI、Runway、Remotion、Claude Codeの4つです。スケッチを渡してから、1本目の投稿までにかかったのは2日でした。
本記事は、2026年11月5日時点の情報をもとにしています。道具の料金は、各社の公式ページの記載です。
AI動画の作り方の全体像|手描き1枚から投稿までの5工程
AI動画は、1つの道具で最後まで作る物ではありません。動画生成AIが受け持つのは「絵を動かす」工程だけで、絵、字幕、声、組み立ては別の道具で作ります。

AI動画は何をどの順に作りますか?
順番は「キャラを決める、絵を作る、動かす、1本に組む、投稿する」の5つです。先にキャラの見た目を1枚の絵で決めておくと、後の工程はすべてその絵を見本にして進められます。
ロコウの場合、キャラを決める所は紙と鉛筆でした。絵を作る所は画像生成AIで清書し、動かす所は画像を動画にするサービスのRunwayに任せています。
1本に組む所では、動画をプログラムで描くRemotion*を使い、字幕と声と本物の操作画面を重ねました。Remotionの操作も、Runwayへの依頼も、Claude Code*に日本語で頼んで進めています。
なぜ写真や既製のキャラではなく、手描きの絵から始めるのですか?
自分で描いた絵なら、会社の物として使い続けられるからです。ロコウも最初は、市販のハシビロコウのぬいぐるみの写真で試作しました。動きは十分に作れましたが、市販品の見た目を会社の発信に使い続けてよいかは、作った会社の権利が絡むため、別に確かめが要ります。
手描きの絵には、見た目の基準が1枚で決まる利点もあります。毛が何本か、目はどんな形か、くちばしはどこから始まるかを、後の依頼文にそのまま書き写せます。絵の上手い下手は関係なく、特徴が3つほど描けていれば足ります。
道具は何を使い、いくらかかりますか?
ロコウで使った道具と費用の目安は、次の通りです。
工程 | 道具 | 何をするか | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
キャラを決める | 紙と鉛筆 | 特徴を3つ決めて描く | なし |
絵を作る | OpenAIの画像生成 | スケッチを清書し、歩く姿も作る | 使った枚数に応じた料金 |
動かす | Runway | 絵を4秒の縦動画にする | 720pで1秒30クレジット |
1本に組む | RemotionとClaude Code | 字幕、声、操作画面を重ねて書き出す | Remotionは3人までの会社は無償 |
投稿する | TikTok | AIで作ったと示すラベルを付けて出す | なし |
Runway の料金は、生成のたびに減るクレジットという点数で払います。720pというスマホの縦画面で十分な画質の動画は、1秒で30クレジットを使います。いちばん費用が動くのはこの「動かす」工程で、作り直しの回数がそのまま料金に跳ね返ります。費用の考え方を社内で説明するときは、AIへの投資の効果を測る物差しが役立ちます。
*Remotion:文字や図の動きをプログラムで書き、動画として書き出す道具。字が崩れず、同じ型の動画を何本も作れます。 *Claude Code:Anthropic のAIに、パソコン上の作業を日本語で頼める道具。ファイルを読み書きし、ほかのサービスも呼び出せます。
手描きの絵からキャラクターを作る|画像生成AIで1体に決めるまで
絵が得意でなくても、自社のキャラクターは作れます。鉛筆のスケッチを画像生成AIに渡し、特徴を文で守らせながら清書させれば足ります。

鉛筆のスケッチはどう清書しますか?
スケッチをそのまま画像生成AIに渡し、残したい特徴を先に書きます。ロコウでは、画像を渡して直せるOpenAIの gpt-image-2.5*を使い、紙が斜めで影が入った写真のまま渡しました。依頼文の書き出しは次の通りです。
Use the attached pencil sketch as the base. Keep its proportions, the 3-pointed tuft, the half-closed eyes at different heights, and the shield-shaped beak. Clean it up into a finished character design.1文目で絵を土台にすると伝え、2文目で守る特徴を4つ並べています。この後に体の形と色を書き、最後の1行の画風だけを替えて、2Dのアニメ調、3Dの映画調、ゆるキャラ調の3案を作りました。毛の本数、目の高さ、くちばしの形が残っているかで見比べます。
「もっとかわいく」と頼むと何が起きますか?
見た目の質感まで変わってしまいます。3Dの案に「もっとふわふわに」「顔はそのまま、ほかはかわいく」と頼んだところ、羽が1本ずつ描かれた写実的な毛並みになり、最初の絵と雰囲気が別物になりました。
直すときは、元の絵と直した絵の2枚を一緒に渡し、「形は直した絵のまま、質感だけ元の絵に戻す」と書きます。ふわふわ感は毛を描き込まず、丸くやわらかい輪郭だけで出すよう指定すると、元の雰囲気に戻りました。
頭の毛は、知人から「顔が大きすぎる、頭の毛はひよこの細い3本がいい」と言われて直しています。依頼文には「大きな冠羽をやめ、頭のてっぺんの1点から細く少し曲がった毛を3本生やす」と1文足しました。
画像生成AIはどれを使えばいいですか?
同じ依頼文で比べ、形を崩さない物を選びます。ロコウでは、OpenAIの画像生成、Runwayの画像生成、Runwayの中から呼べるGoogleの Gemini*の3つに、正面と歩く姿を作らせました。スケッチを顔の見本、清書した3Dの絵を形の見本として渡しています。

結果は大きく分かれました。OpenAIは形を保ち、Geminiはソフビ人形のようなつるつるの質感になり、Runwayは胴に崩れた英字が出て、歩く姿にもなりませんでした。以後の見本は、2章で清書した3Dの正面の絵と、形を保ったOpenAIの歩く姿の2枚にしています。
2Dの版も同じ手順で試しました。実写のような事務所の映像に置く冒頭と締めの場面にはリアル系の3Dを使い、字幕を重ねる真ん中の場面には線がはっきりした2Dの版を使い分けています。
*gpt-image-2.5:OpenAI の画像生成モデル。文から絵を作るだけでなく、渡した画像を元に描き直すこともできます。 *Gemini:Google の生成AI。画像も作れ、Runway の画面の中から呼び出して使うこともできます。
作ったキャラを動かす|ClaudeからRunwayを動かして動画を生成する
1枚の絵を、見た目を変えずに動画にする鍵は、変えたくない物を全部文で書くことです。どの動画生成サービスを選ぶかは、動画生成AIの比較で扱っています。
Claude CodeからRunwayをどう動かしますか?
Claude Code と Runway を MCP*でつなぎ、チャットで頼むだけで動画を作れるようにしました。絵を上げる、依頼文を送る、できた動画を保存する、までを Claude Code が続けて行います。
最初に、AIに「この見た目を守って」と渡す見本の絵を上げます。正面の絵に @rokou、歩く姿に @rokou2 と名前を付けると、依頼文の中で呼べます。
動画は、Runway の中で選べる Seedance 2.5*で作りました。長さは選べる最短の4秒、縦長、音はなしです。短いクリップをつないで1本にする作り方は、Runway の入門ガイドでも勧められています。
見た目を毎回そろえるには何を書きますか?
顔、毛、色、首から下げる物、表情、動きを、すべて文で書きます。体の色は数字で書き、ずれやすい色を名指しで禁じました。
Rokou's body color stays the same muted blue-gray as the references (about RGB 118,120,136) in every frame. Do not shift it to teal, cyan, green, brown or purple.動きは秒ごとに、してはいけないことは最後にまとめて書いています。冒頭の4秒で送った依頼文の後半は次の通りです。
0.4〜1.3秒: ロコウが無表情のまま、首と体をカメラの方へ回し、正面を向く。
1.5〜1.9秒: 正面を向いたまま、ゆっくり1回だけまばたきする。
ロコウは最初から最後まで笑わない、しゃべらない、くちばしを開かない。人間は出さない。人の顔を描かない。それでも起きた失敗は何ですか?
文で固定するまでに起きた失敗と、文では防げず後で直した失敗は次の通りです。
失敗 | 起きたこと | 対処 |
|---|---|---|
社員証 | 無地と指定しても、人の顔写真や字が描かれた | Claude Code に、カードの部分を白く塗らせる |
ノートパソコン | 蓋に実在の会社のロゴが出た | Claude Code に、ロゴの部分を毎回塗らせる |
体の色 | 青みの灰色が青緑にずれた | 依頼文に色の数値を書く |
足 | 机に隠れ、大写しで切れた | 遠めの固定カメラで横にだけ歩かせる |
文字 | 動画に描かせた字が崩れた | 字は組む工程で入れる |

*MCP:AIの道具と外のサービスをつなぐ共通の決まり。つなぐと、Claude Code からチャットで Runway を操作できます。 *Seedance 2.5:Runway の中で選べる動画生成モデルの1つ。見本の絵と文を渡すと、数秒の動画を作ります。
動画を1本に組む|Remotionで字幕・画面・声を合わせる
生成した4秒の動きだけでは、伝えたい中身が入りません。字幕、声、本物の操作画面は、Remotion で後から重ねます。
Remotionとは何で、なぜ使うのですか?
Remotion は、動画の場面をプログラムで描く道具です。字を動画生成AIに描かせないので崩れず、場面の型を一度作れば、中身を差し替えて何本も作れます。プログラムは Claude Code が書くので、こちらは台本と場面の割り振りを日本語で伝えるだけです。
ロコウの動画は、冒頭の約2秒が Runway の場面、真ん中が Remotion の場面、締めの約2秒がまた Runway の場面という形です。真ん中では、2Dのロコウの絵が画面の隅で小さく弾み、本物の ChatGPT の画面に字幕を重ねて見せています。
操作画面は、Claude Code にブラウザを操作させて撮り、アカウント名が映らないようにしました。Remotion を Claude Code で使うための準備は、Claude Code の動画作成スキルで紹介しています。
声と字幕はどう作りますか?
声は、聞き比べて選びます。最初に使った声は「野太い」と感じたので外し、10の候補から Runway の日本語の声に決めました。1文ずつ作ると1回約1クレジットで、気になる文だけ作り直せます。
読み間違いを防ぐため、数字や道具の名前は「リモーション」のように、かなで渡します。できた声は1文ずつ文字起こしし、台本どおりに読んでいるかを確かめました。話す速さは、TikTok でよく見られている動画と比べ、1秒に約8字にそろえています。
字幕は白い字に濃い縁取りを付け、縦1920ピクセルの画面の上220、下400、右160ピクセルには置きません。この範囲には TikTok のボタンや説明文が重なるからです。
出す前に何を確かめますか?
確かめるのは、2秒ごとのコマを並べた一覧、字幕と声のずれ、テンポの3つです。コマの一覧を見ると、字幕がボタンの範囲に入っていないか、社員証や画面に余計な物が映っていないかを1枚で見渡せます。
テンポは、作り直すほど縮みました。最初に作った、動画の道具を紹介する回は57.5秒あり、3回作り直して30秒に収めています。投稿の時は、TikTok の投稿の画面の「その他のオプション」で「AI生成コンテンツ」の設定をオンにし、AIで作ったと示すラベルを付けます。
同じ型で作り、TikTok に1本目として出したのは、お詫びのメールをAIで書く回で、長さは約33秒です。
https://www.tiktok.com/@rokou_ai/video/7704650824148192532

よくある質問|費用・権利・かかった時間
全部でいくらかかりますか?
主な費用は Runway の月額プランです。いちばん安いプランは月15ドルで625クレジットで、冒頭や締めに使う4秒の生成なら約5回分にあたります。
720pの Seedance 2.5 は1秒30クレジットなので、15秒なら450、冒頭と締めの4秒ずつなら240です。作り直しが入るため、最初に作った道具の紹介の回では、冒頭と締めだけで821クレジット、次の版で521クレジットを使いました。11月3日の夜から5日の夜までに使った量は、試作やほかの回、声を含めて約5,800クレジットです。キャラと型を決める最初の1〜2本は、いちばん安いプランでは足りないと見ておきます。
Remotion は、個人と、関わる人が合計3人までの会社なら無償で使えます。4人以上の営利企業は、社内で使う場合も有償のライセンスが要ります。
作ったキャラは会社の物として使えますか?
元の絵を自分たちで描いていれば、会社のキャラとして使い続ける土台になります。そのうえで、画像生成や動画生成の各サービスの利用規約で、作った物を商用に使えるかを確かめます。
市販の人形や他社のキャラの写真から始めると、元の物の権利が残ります。投稿先の決まりにも合わせ、TikTok ではAIで作ったと示すラベルを付けます。
どれくらい時間がかかりましたか?
鉛筆のスケッチを渡した11月4日16時ごろから、TikTok に投稿した11月5日20時40分までです。その間に、キャラの絵だけで30枚あまりを作り、最初に作った道具の紹介の回は3回作り直しました。
2本目からは、同じ見本の絵と場面の型を使い回せます。キャラと型が決まるまでが最も時間のかかる所で、そこを越えると1本ごとの作業は台本と声づくりが中心になります。
さいごに
本記事では、手描きの絵1枚から、会社のキャラが動く縦動画を投稿するまでの5工程を紹介しました。絵は画像生成AIで清書し、見た目を文で固定して Runway で動かし、字幕と声は Remotion で後から重ねます。
撮影や編集に手が回らない会社でも、キャラ1体と4つの道具があれば、発信用の動画を続けて作れます。まずは自社のキャラを紙に1枚描き、守りたい特徴を3つ書き出すところから始めてみてください。
本記事で Claude Code に任せた、依頼文の送り分けや動画の組み立てのように、手作業を Claude Code に任せる手順は、スマートエイトの Claude Code の研修で対面で学べます。
※生成AI研修資料/導入事例も無料ダウンロードいただけます。




