はじめに
店の電話に出たら、「こちらはGoogleのAIアシスタントです」と名乗る声が予約を取りにきた、という場面を想像したことはあるでしょうか。
Googleは、Geminiが利用者の代わりに店や会社へ電話をかける機能「Call for Me」の試験提供を米国で始めました。本記事では、この電話代行で何ができるのかを押さえたうえで、電話を受ける側の会社が備えておきたい4つを整理します。見分け方、断るか受けるかの設定、受付ルールの見直し、自社もAIの電話受付を入れるかの判断です。スマートエイトは生成AI研修と導入支援で、電話受付のAI化の相談も受けてきました。
結論を先に書きます。AIからの電話は、冒頭で「AIであること」「録音していること」「依頼者の名前」を必ず告げる作りです。受ける側は、断るなら店の番号をGoogleの拒否リストに入れられます(今は米国の番号のみ)。受けるなら、予約を確定させる条件を人の電話と同じ基準で決めておけば、慌てずに済みます。
本記事は2026年10月4日に確認したGoogleの公式ヘルプをもとにしています。Call for Me を使えるのは、米国在住の18歳以上で、米国のSIMを入れたPixel 11を持ち、Googleの有料のAIプランに入り、電話アプリ「Phone by Google」のベータ版を使い、端末の言語を英語にしている人です。2026年9月24日ごろから早期プレビューとして順に届いている段階です。日本ではまだ提供されていません。電話をかけられる先も今は米国の電話番号に限られているため、日本の店の番号にこの機能から電話がかかる仕様にはなっていません。
Geminiの電話代行「Call for Me」とは|何ができて、誰が使えるのか
Call for Me は、Geminiのアプリに用件を伝えると、Geminiが店や会社へ電話をかけて会話をこなす機能です。使う人は電話をかけず、結果の要約だけを受け取ります。
予約・変更・問い合わせをAIが電話で済ませる
Geminiが電話でこなせる用件は、営業時間・在庫・見積もりの確認と、予約の取得・確認・変更です。レストランの席の予約や、美容室の予約日の変更が想定されています。
使う人の操作は短く終わります。Geminiに「土曜19時に4名で予約して」と頼むと、かける先の番号と相手に伝える内容の要約が出ます。使う人がそれを確かめて「Call for me」を押すと、発信が始まります。
通話中、使う人は文字起こしを画面で追えます。マイクは最初は切れていて、「Take over」を押すと本人が会話を引き継げます。通話が終わると通知が届き、結果の要約と録音、全文の文字起こしを後から見返せます。
使う人の電話番号から、個人の用事としてかかってくる
受ける側にとって大事なのは、電話がどこから来るかです。Geminiは使う人の携帯回線と電話番号で発信します。着信表示に出るのは、依頼した客本人の番号です。
用途にも枠があります。Googleの利用規約では、この機能で電話してよいのは個人的な理由に限られ、営業の電話・業務目的の電話・政治的な呼びかけ・迷惑電話に使うことは禁じられています。受ける側から見ると、AIから来る電話は、規約上は個人の用事の電話に限られます。
2018年の Duplex との違いは、本人がいつでも割って入れること
Googleは2018年に、AIが美容室やレストランに電話して予約を取る*Duplex を発表しています。このときの説明は、利用者が頼んだ後は本人が関わらずに裏側で電話が進む、というものでした。
Call for Me は、本人の番号から発信する形に変わっています。本人は文字起こしを見ながら、いつでも割って入れます。見ているかどうかは本人次第で、結果だけを通話後に確かめる使い方もできます。
*Duplex:Googleが2018年に発表した、AIが人の代わりに店へ電話して予約などを済ませる技術。自然な話し方で注目を集めた。
AIからの予約電話をどう見分けるか|最初の一言と、AIに頼めないこと
備えの1つ目は、AIからの電話だと気づけるようにしておくことです。見分ける手がかりは、冒頭の名乗りと、AIが扱えない用件の2つです。
冒頭で「AI」「録音」「依頼者の名前」を必ず告げる
Geminiは、すべての通話の最初に、GoogleのAIアシスタントが録音のある回線で、依頼者の代わりに電話していることを、依頼者の名前とともに告げます。利用規約でも、使う人はこの名乗りを外せない決まりです。

受付の担当者には、「GoogleのAIアシスタント」「録音」「◯◯さんの代わり」の3つの言葉が聞こえたらAIからの代行電話だ、という1点を伝えれば足ります。名乗りが聞き取れなかったときは、「どなたの代わりのお電話ですか」と聞き返して、依頼者の名前を確かめます。
支払い・カード番号・健康情報はAIに頼めない
Geminiには、電話でできないことが決められています。緊急通報、支払いや金融取引、カード番号などの金融情報の受け渡し、健康情報などの機微な個人情報の受け渡し、物を売る電話です。
この線引きは、受ける側の安全確認にも使えます。Googleを名乗る電話がカード番号や前払いを求めてきたら、それはこの機能の範囲の外です。Googleも、ビジネスプロフィールの案内で支払い・カード情報・パスワードを電話で求めることはないと書いています。
受付で確かめる項目は、人の電話と同じでよい
「土曜19時、4名、テラス席」とAIが言ってきたときに、受付が確かめる項目は、人からの電話と変わりません。日時・人数・席・名前・連絡先を復唱し、相手が「はい」と答えたら確定、という流れです。
Geminiは、使う人が発信前に承認した名前と連絡先を相手に伝えます。逆に、承認の範囲を超える質問、たとえば「アレルギーはありますか」には答えられない場面が出るかもしれません。その場合は、「ご本人から折り返しをお願いします」と伝えて、確定を保留にしておけば十分です。
AIからの電話を断るか受けるか|拒否リストと予約の取りこぼし
備えの2つ目は、AIからの電話を受けるか断るかを決めることです。Call for Me を断る窓口は、Geminiからの電話を受けない番号を登録する拒否リストです。

店の番号をGeminiの拒否リストに入れる
Geminiのヘルプは、他の利用者のGeminiから自動の電話を受けたくない人のために、拒否の手続きを案内しています。電話番号を入れ、SMSで届く確認コードを打ち込むと、その番号が拒否リストに加わり、Geminiからの自動の電話が来なくなります。
2026年10月4日時点で、この登録画面で選べる国・地域は米国(+1)です。Call for Me が電話できる先も今は米国の番号だけなので、米国に拠点や予約窓口を持つ会社が対象になります。日本の店は、手続きの場所を知っておけば足ります。
ビジネスプロフィールの設定は、Google自身の電話向け
*Googleビジネスプロフィールにも、自動の電話を止める設定があります。「その他」から「ビジネス プロフィールの設定」、「詳細設定」と進み、「Google からの自動通話と自動テキスト メッセージ」で切り替えるものです。
Googleの説明は、この設定の対象を、Google自身が検索や地図の利用者の依頼を受けて店へかける電話としています。この設定の説明に Gemini や Call for Me は出てきません。Gemini のヘルプが案内している断り方は、3-1 の拒否リストです。
断るか受けるかは、予約の取りこぼしで決める
断ると、AIに頼んだ客の予約は電話では入らなくなります。その客は別の店を探すかもしれません。逆に受けると、内容の確認に少し手間がかかる電話が増えます。
判断の物差しは、自社が予約や問い合わせをどれだけ電話に頼っているかです。電話予約が売上の入口になっている店は受ける側に、予約をWebに寄せたい会社は断る側に寄せる、と決めると迷いません。
*Googleビジネスプロフィール:Googleの検索や地図に出る店や会社の情報を、事業者が自分で管理する無料の仕組み。営業時間や電話番号を載せる。
受付ルールの見直しと自社のAI受付|残り2つの備え
備えの3つ目は受付ルールの見直し、4つ目は自社もAIの電話受付を入れるかの判断です。どちらも、AIからの電話が日本に来る前に決めておけます。
確定の条件を「人かAIか」で分けない
受付ルールで決めておくのは、どの時点で予約を確定とみなすかです。人の電話でもAIの電話でも、同じ条件にしておくと、担当者が迷いません。
先の「土曜19時、4名、テラス席」の例なら、復唱して相手が承知したら確定、と決めます。AIからの電話は依頼者本人の番号で着信するので、着信の番号を予約台帳に残しておけば、変更や確認の連絡は本人へ直接届きます。キャンセル料など条件の説明が要る店は、AIへの説明だけで済ませず、確定の連絡を本人へ送る運用を足すと行き違いを防げます。
録音されている前提で、言い方をそろえる
Geminiの通話は録音され、依頼者は後から録音と文字起こしを見返せます。受付の言葉は、そのまま客の手元に残ると考えておくのが安全です。
そのため、料金・キャンセル条件・遅刻の扱いなど、言い方で揉めやすい項目は、受付の決まった言い回しを1枚にまとめておくと役立ちます。人の電話でも同じ言い回しを使えば、受付の品質がそろい、録音が残っても困りません。
自社もAI受付を入れるかは、電話の取りこぼしで決める
AIが電話をかけてくる側に回るなら、受ける側もAIにする選択肢が出てきます。判断の軸は、人件費を減らせるかより、すぐに出られない電話を後で処理できる形に変えられるかです。営業時間外や繁忙時間に鳴る予約電話を取りこぼしているなら、入れる理由になります。
自社側もAIで電話を受けるなら、予約の確定まで人が出ない仕組みの作り方を、AI電話で受付を自動化する方法|予約の確定まで人が出ない仕組みで手順にしています。入れる前に、効果を何で数えるかを決めておくと判断がぶれません。数え方は生成AIの費用対効果を測る4つの問い|OpenAI CFOの採点表の使い方が参考になります。
よくある質問|Geminiの電話代行と受ける側の疑問
日本の店にもGeminiから電話がかかってきますか?
2026年10月4日時点で、Call for Me を使えるのは米国の利用者だけで、電話をかけられる先も米国の電話番号に限られています。そのため、日本の店の番号にこの機能から電話がかかる仕様にはなっていません。Googleは米国で小さく試験を始めた段階で、日本での提供予定は発表されていません。受付ルールを先に決めておけば、日本で提供が始まったときに慌てずに済みます。
AIからの電話の着信番号に折り返すと、誰につながりますか?
依頼した客本人につながります。Geminiは使う人の携帯回線と電話番号で発信するためです。予約内容の確認や変更の相談は、その番号へ折り返せば本人と直接話せます。
AIが間違えて予約したときの責任は誰にありますか?
Googleの利用規約では、AIの誤りから生じた結果についてGoogleは責任を負わないとされています。受ける側の実務としては、復唱で確かめた内容を予約台帳に残し、着信番号を控えておくことが、後で行き違いを解く材料になります。
Googleを名乗る電話がカード番号を聞いてきたら?
応じないでください。Geminiの電話代行は支払いやカード番号の受け渡しができない作りで、Googleもビジネスプロフィールの確認で支払い情報を求めることはないとしています。その場で電話を切り、Googleの公式ヘルプから連絡先を確かめるのが安全です。
さいごに
Geminiの電話代行は、AIが客の代わりに店へ電話をかけ、冒頭で「AI」「録音」「依頼者の名前」を告げて予約や問い合わせを済ませる機能です。いまは米国の一部の利用者に限られていますが、受ける側が備えることははっきりしています。名乗りで見分けること、断るか受けるかを決めること、確定の条件と言い回しをそろえること、自社もAI受付を入れるかを取りこぼしで判断することの4つです。
まずは、AIから予約の電話が来たときにどこで確定とみなすかを、受付の担当者と1つ決めるところから始めてください。電話受付をどこまでAIに任せるかの設計は、スマートエイトの生成AI研修でも業務の棚卸しから扱っています。
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