はじめに
見積書を作るたびに、前の案件のExcelをコピーして宛名と明細を書き換え、合計の金額を電卓で確かめていないでしょうか。急いでいる日ほど、有効期限の直し忘れや、単価の打ち間違いが起きます。
本記事では、AIで見積書を作成する方法を、AIに任せる作業とExcelに任せる作業に分けて解説します。スマートエイトは、自社の見積書をExcelのテンプレートから、xlsxとPDFの両方で自動で作っています。
結論を先に書きます。AIに任せるのは、明細の下書きと、テンプレートへの書き込みまでです。金額・小計・消費税・合計はテンプレートの数式に計算させ、単価と最終の金額は人が決めます。この3つを分けると、計算の誤りを出さずに見積書を速く作れます。
本記事の手順は、ChatGPT・Claude・Geminiのどれを使っても同じです。2026年10月18日時点のスマートエイトの運用をもとにしています。
AIで見積書を作成する流れ|明細を決める・金額を出す・書類に整える
見積書づくりは、1つの作業に見えて、実際には3つの作業に分かれます。どの作業をAIに任せるかを先に決めておくと、AIに頼む内容がはっきりします。

見積書づくりは、3つの作業に分かれます
1つめは、何をいくつ提供するかという明細を決める作業です。2つめは、数量と単価から金額・小計・消費税・合計を出す作業です。3つめは、宛名や日付を入れて、決まった様式の書類に整え、PDFにする作業です。
このうち、AIが得意なのは1つめの下書きと、3つめの書き込みです。2つめの計算は、AIに頼まず、表計算の数式に任せるほうが確実です。
商談でも、見積書を手で作っているという声が出ます
スマートエイトが商談で聞いた話では、小さな建築設計事務所が、契約書・見積書・仕様書を案件ごとの条件に合わせて、手作業で作っていました。社員が約100名の求人広告の代理店でも、媒体のプランや見積もりを人の手で作っていると聞いています。
見積の金額そのものを、経験のある人が判断して決めている会社もあります。この判断は、AIに任せる作業ではありません。AIに任せるのは、決まった単価を使って書類を組み立てる部分です。
見積書の項目ごとに、決める担当を分けます
見積書の項目を1つずつ見ると、AI・数式・人のどれが決めるかを分けられます。
見積書の項目 | 決める担当 | 理由 |
|---|---|---|
宛名・明細の品目・数量 | AIが下書き、人が確認 | 商談のメモから拾える |
単価 | 人が決めた単価表から写す | 値付けは判断が要る |
金額・小計・消費税・合計 | テンプレートの数式 | 計算を誤らない |
見積日 | 自動で当日 | 人もAIも打たない |
有効期限 | 人に聞いて決める | 案件ごとに違う |
生成AIで見積作成の下書きを出す|過去の見積を単価表にする
AIに明細の下書きを任せるには、AIが写せる単価表が要ります。過去の見積書から、品目と単価を表にまとめたマスタ*を作り、それを毎回AIに渡します。

研修の受講者が、見積書のマスタをAIで作っていました
スマートエイトの全社研修のあと、回答69件のアンケートで、次に扱ってほしい業務を聞きました。営業の1人は、Claudeで作った見積書のマスタをもとに、見積作成の業務を自動にしたいと書いていました。研修の後、すでに自分の業務にAIを持ち込み、単価表づくりまで進めていた回答です。
提案や見積の作成を、次に扱ってほしい業務に挙げた人は3人でした。回答の頻度と1回の時間から換算すると、3人で月に約51時間かかっています。「2時間以上」の回答を2時間で数えた、少なめの見積もりです。
マスタには、品目・単位・単価・よく付く条件を並べます
マスタの列は、品目・単位・標準の単価・よく付く条件の4つで足ります。よく付く条件とは、「交通費は別途」「2回目以降は割引」のように、その品目に毎回添える一文です。
過去の見積書をAIに読ませて、この4列の表に起こさせると、マスタの下書きが早くできます。単価は案件ごとに揺れているため、標準の単価をどれにするかは人が決めます。
明細の下書きを出すプロンプト例
商談のメモとマスタを一緒に渡し、明細の下書きを頼みます。
下の商談メモと単価のマスタから、見積書の明細の下書きを作ってください。
・列は「品目・数量・単位・単価」の4つにする
・品目と単価は、マスタにある名前と金額をそのまま使う
・マスタに無い品目は、単価を空欄にして「要確認」と書く
・金額と合計は計算しない
・値引きや特別な単価は、メモに書いてあっても入れずに、最後に別の行で知らせる
【商談メモ】
(ここに貼る)
【単価のマスタ】
(ここに貼る)「金額と合計は計算しない」と書くのは、次の章で説明するとおり、計算をテンプレートの数式に任せるためです。
*マスタ:品目・単位・単価のように、毎回の書類で使う基本の情報をまとめた表。見積書なら、過去の見積から作った単価表がこれにあたる。
金額はAIに計算させない|見積書をxlsxとPDFで自動作成する仕組み
スマートエイトの見積書は、Excelのテンプレートに値を入れる形で、xlsxとPDFを自動で作っています。この仕組みで決めているのは、AIには計算をさせず、値を入れるだけにすることです。

AIは、宛名・明細・有効期限のセルに値を入れるだけです
テンプレートには、宛名・明細・有効期限などを入れるセルと、金額を出す数式のセルが決まっています。AIはテンプレートをコピーし、値を入れるセルにだけ書き込みます。
明細の金額は数量×単価の数式、小計は明細の合計、消費税は小計の10%を四捨五入、合計は小計と消費税の足し算です。宛先の下に大きく出す「お見積り金額」の欄も、合計のセルを参照しています。AIは金額のセルに触れないので、計算の誤りが見積書に入り込みません。
見積日は当日に、有効期限は必ず聞きます
見積日は、作った日の日付を自動で入れます。人もAIも打たないため、前の案件の日付が残ることがありません。
有効期限は、案件ごとに違うため、指示に無ければAIが必ず聞き返す決まりにしています。「月末まで」のように年を省いた指示は、今日より後の一番近い月末にします。見積番号は、指定が無ければ欄ごと空けて、空の見出しだけが残らないようにしています。
PDFはExcelから書き出し、最後に検収の係が確かめます
PDFは、値を入れたExcelをそのまま表計算のソフトで書き出して作ります。PDFを別に描き起こすと、罫線や金額の枠の位置がずれ、テンプレートの型が崩れるためです。
作った後は、検収の係のAIが、金額が3桁区切りの半角数字か、見積日が当日で有効期限が今日以降か、宛名に「御中」が付いているかを確かめます。作る役と確かめる役を分けておくと、作った側の思い込みが見積書に残りません。
AI見積作成を会社で始める手順|テンプレートの整理から
AIで見積書を作る仕組みは、新しい道具を入れる前に、今使っているExcelの見積書を整えるところから始めます。順番は、テンプレートを分ける、マスタを作る、人に残す判断を決める、の3つです。

今の見積書のExcelを、値のセルと数式のセルに分けます
最初に、いつも使っている見積書のExcelを開き、人が打ち込んでいるセルと、計算しているセルに色を分けます。合計を手で打っているセルがあれば、この時点で数式に直します。
値のセルだけが決まれば、AIに頼む内容は「このセルにこの値を入れて」で済みます。明細の行数の上限も、テンプレートで決めておきます。
過去の見積から、単価のマスタを作ります
次に、過去の見積書を何件か集め、2-2の4列のマスタに起こします。品目の名前の揺れはここでそろえます。同じ作業を「研修費」「講師料」と別の名前で書いていると、AIが別の品目として扱ってしまうためです。
単価と値引きの判断は、人に残します
最後に、AIに任せない判断を決めます。標準の単価を使うか、値引きをするか、特別な条件を付けるかは、商談の流れと取引先との関係で決まるため、人が決めます。
AIに任せた後は、見積書1件にかかる時間と、出した後の直しの件数を数えておきます。効果を数字で比べると、ほかの帳票へ広げるかを判断できます。数え方は、生成AIの費用対効果を測る4つの問いで整理しています。
よくある質問|AIで見積書を作成するときに迷う点
ChatGPTに、見積書を丸ごと作らせてもよいですか?
下書きの確認には便利ですが、合計の金額まで任せるのはおすすめしません。AIの返す数字は、計算した結果に見えても、表計算の数式と違って毎回同じ結果になるとは限らないためです。明細だけをAIに作らせ、金額はExcelの数式に任せます。
見積作成の専用サービスと、どう選びますか?
見積書の形が決まっていて、社内のExcelで回っているなら、まずテンプレートとAIの組み合わせで足ります。承認の流れや、顧客の管理の仕組みとつなぎたい場合は、専用のサービスか、社内の仕組みに組み込む開発を考えます。開発にかかる費用の目安は、AI開発・AI導入の費用はいくらかで解説しています。
社外秘の単価を、AIに渡してよいですか?
会社で契約し、入力を学習に使わない設定のAIを使うことが前提です。単価のマスタは社内の共有フォルダに置き、AIには見積に使う行だけを渡します。マスタを丸ごと渡さない形にしておくと、渡す情報を最小にできます。
見積書のテンプレートを持っていない場合は、どうしますか?
先にExcelでテンプレートを1つ作ります。スマートエイトのテンプレートは、上から「見積書」の題、宛先と差出人、お見積り金額、支払条件と有効期限、6行の明細、小計・消費税・合計、備考の順に並べています。この形で、金額のセルにだけ数式を入れておけば、AIに値を入れさせる準備が整います。
さいごに
本記事では、AIで見積書を作成する方法を、明細の下書き・金額の計算・単価の判断の3つに分けて解説しました。AIに任せるのは明細の下書きとテンプレートへの書き込みまでで、金額はExcelの数式に、単価と値引きの判断は人に残します。
見積書を前の案件のコピーから作っている会社は、まず今のExcelを値のセルと数式のセルに分けるところから始めてください。値のセルが決まれば、AIに頼む内容は一気に短くなります。
スマートエイトは、見積書のような社内の帳票づくりにAIを組み込む開発を支援しています。
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