はじめに

AIシステム開発は、業務の分析、試作、本開発、運用の4つの段階で進めます。段階の終わりごとに社内で決めることがあり、決める人が決めないと、次の段階へ進めません。

最初の1週間で決めるのは、段階ごとに決める人の名前と、AIに任せる業務とその測り方です。この記事では、段階ごとに社内の誰が何を決めるかを1枚の表にまとめます。あわせて、社内に残す仕事と外に頼む仕事の分け方と、期間と費用の決まり方にも答えます。

例は、社内の規程や手続きの問い合わせに答えるAIの仕組みです。開発を外の会社に頼む前提で書いており、AIを使ってプログラムを書く開発の方法は扱いません。公的な資料は、2026年10月時点で公開されている版をもとにしています。

AIシステム開発の4つの段階|普通のシステム開発と何が違うのか

AIシステム開発の流れは、業務の分析、試作、本開発、運用の4つの段階です。普通のシステム開発との違いは、本開発の前に、実際のデータで答えの合い方を確かめる試作の段階を置く点にあります。

4つの段階では、それぞれ何をするのか

社内の規程や手続きの問い合わせに答えるAIの仕組みを例にすると、4つの段階の終わりに手元に残る物は次のとおりです。

  • 業務の分析の終わりには、AIに任せる問い合わせの種類1つと、今の月の件数と1件にかかる時間の数字が残ります
  • 試作の終わりには、実際に届いた質問のうち何割に規程どおり答えたかの結果が残ります
  • 本開発の終わりには、社内のチャットから社員が使える仕組みができあがります
  • 運用では、規程の改定に合わせた文書の差し替えと、間違えた答えの直しの記録が積み上がります

契約ガイドラインのAI編は、開発を*アセスメント、*PoC、開発、追加学習の4つの段階に分け、段階ごとに次へ進むかを確かめながら契約する進め方を示しています。経済産業省が2018年に、データから学ばせるAIの開発を対象にまとめた資料です。

名前は違いますが、確かめてから次の段階へ進む順番は、この記事の4つの段階と同じです。どの段階も、終わりに社内で決める事項があります。誰が何を決めるかは、次の章で表にして示します。

なぜAIでは試作の段階を置くのか

普通のシステムは、決めた仕様どおりに作れば、決めたとおりに動きます。AIは、実際のデータと実際の質問で動かすまで、答えがどれだけ合うかが分かりません。古い版の規程が混ざっていたり、社員の聞き方が規程の言葉と違ったりするだけでも答えが外れることがあるので、本開発の前に試作で確かめます。

*アセスメント:英語で「評価・見極め」を意味する語です。ガイドラインでは最初の段階の名前で、一定量のデータで作れそうかを先に確かめます。

*PoC:本格的に作る前に、小さく作って効果を確かめる試作のことです。日本語では概念実証と訳されます。

段階ごとに社内で決めること|誰が何を決めれば次へ進めるか

段階ごとに、決める人と次へ進む線を先に決めておくと、段階の終わりで判断が止まりません。4つの段階の決めごとを並べると、次の表のとおりです。

段階

社内で決めること

決める人

次へ進む線

業務の分析

AIに任せる業務と効果の測り方、後の段階で決める人

現場の責任者。後の段階で決める人は事業の責任者

任せる業務が1つに決まり、今の件数と時間を測ってある

試作

始める前に予算と合格の線、終わりに本開発に進むか

事業の責任者

実際に届いた質問で、合格の線を超えた

本開発

使う人の範囲、読ませる情報と安全の決めごと、本番の日

使う人の範囲は事業の責任者、ほかは法務と情報システムの担当

決めごとがそろい、本番の前のテストが通った

運用

答えの合い方を誰が見て、誰が直すか

現場の責任者

決めた測り方で、件数か時間が減った

業務の分析で決めることは何か

業務の分析で決めるのは、AIに任せる業務を1つと、効果の測り方です。測り方は、今の月の件数と1件にかかる時間のように、AIを入れる前の数字を今のうちに取れるものにします。

今の数字が無いと、運用に入った後で、減ったかどうかを確かめられません。例の仕組みでは、まず人事の手続きの問い合わせに絞り、月に何件届き、1件の回答に何分かかっているかを数えます。

決める人は現場の責任者で、規程の問い合わせなら、問い合わせを受けている総務や人事の責任者です。件数と時間を知っているのは受けている現場なので、数字の取り方まで一度に決まります。後の3つの段階で決める人の名前は、この段階のうちに事業の責任者が決めておきます。

試作の後に、進むか止めるかをどう決めるのか

試作の前と後で決めるのは、事業の責任者です。総務や人事を受け持つ役員が、例の仕組みでの事業の責任者にあたります。始める前に試作の予算を通して合格の線を決め、終わりに、進む、やり直す、方向を変える、止めるの4つから選びます。

やり直すのは、結果に見込みはあるものの合格の線に届かず、直す所を決めて短い期間でもう一度試す場合です。方向を変えるのは、今の作り方では線に届かないと分かったときで、別の作り方で試し直すか、業務の分析に戻ります。

合格の線は、実際に届いた質問のうち規程どおりに答えた割合が何割を超えれば合格か、という形で置きます。線を後から決めると、出た結果に合わせて線が動き、判断の物差しになりません。

開発会社のGeekyAntsは、試作の段階の終わりにこの4つから選ぶ場を置き、選ぶ承認者を決めておく進め方を勧めています。日本の会社なら、その場を稟議か定例の会議に置き、承認する人と会議の日を試作の前に押さえておきます。

本開発と運用で決めることは何か

本開発で決めるのは、使う人の範囲、AIに読ませる情報の範囲と安全の決めごと、本番の日です。本開発の最初に行う*要件定義で、これらを文書にまとめます。

使う人を全社員にするか一部の部署に絞るかは、本開発の費用を動かすので、事業の責任者が決める事項です。読ませる情報の扱いは法務が、社内のチャットとのつなぎ方や使える人の権限の設定と本番の日は情報システムの担当が受け持ちます。給与や人事評価のような見せてはいけない情報は、読ませる文書に入れません。

運用で決めるのは、答えの合い方を誰が見て、誰が直すかです。現場の責任者が、規程を改定したときに読ませる文書を差し替える人と、間違えた答えを集める人を決めます。件数か時間が減ったと、業務の分析で決めた測り方で確かめてから、ほかの業務へ広げます。

*要件定義:作る物の範囲と、何ができれば合格かの条件を、頼む側と作る側で文書に決める作業です。

内製と外注の分け方|社内でやる仕事、頼む仕事、契約の形

社内に残す仕事は、要件を決めること、データの用意、現場での評価の3つです。仕組みづくり、社内のシステムとのつなぎ込み、本番での動かし方は外に頼めます。契約は、段階ごとに分けて結びます。

社内に残す仕事は何か

1つ目は、要件を決めることです。要件定義は発注する側の仕事で、開発会社の支援を受けても、責任は発注する側に残ります。

2つ目は、データの用意です。どれが最新の版かは社内の担当にしか分からないため、最新の規程を集めて古い版を外す作業は、外に任せられません。試作で使う実際の質問を集めるのも、社内の仕事です。

3つ目は、現場での評価です。AIの答えが規程どおりかは、規程を持つ部署の担当でなければ判断できません。

エストニアの開発会社のMindTitanも、最初の3つの段階で頼む側が受け持つ仕事に、成功の基準づくりと、作る側がデータを使えるようにする準備を挙げています。社内では、3つを受け持つ担当者を、業務の分析の段階で名前で決めておくと進めやすくなります。

外に頼む仕事は何か

外に頼むのは、作る仕事と、動かし続ける仕事です。社内に作れる人がいれば仕組みづくりも社内でできますが、いない会社では開発会社の仕事になります。

作ってもらうのは、規程を読ませて答える仕組みと、社内のチャットとのつなぎ込みです。本番に出した後の、止まったときの復旧と仕組みの手直しも、外に頼む仕事です。

分け目を決めないまま頼むと、データの用意や答えの確かめまで頼んだつもりになり、試作の途中で誰がやるかが決まらずに止まりやすくなります。頼む前に、社内に残す3つと頼む仕事を書き分け、依頼の文書に添えて渡します。

契約は、段階ごとにどう結べばよいのか

契約は段階ごとに分けて結び、試作の契約には合格の線を評価の基準として書いておくのが基本です。そうしておくと、試作の後に進むか止めるかを、頼む側と作る側が同じ物差しで決められます。

契約の形には、仕事の完成を約束する*請負と、決めた作業を注意深く行うことを約束する*準委任があります。経済産業省の契約チェックリストは、この区分は相対的で、頼む側が成果の中身と水準をどこまで求めるかが大事な論点になる場合が少なくないとしています。

新しくAIを作る開発については、契約ガイドラインのAI編が段階ごとのひな形を用意しています。アセスメントには秘密保持契約、PoCには導入検証契約、開発にはソフトウェア開発契約を当てる形です。どの段階の契約でも、はっきり書くのは、目的と評価の基準と報酬の払い方の3つです。

例の仕組みのように、既にあるAIのサービスに規程を読ませて作る場合も、試作と本開発は別の契約にします。試作で合格の線に届かなかったときに、本開発の分まで払う約束を残さないためです。

*請負:作る側が仕事の完成を約束し、納めた物が契約と合わないときの責任も負う契約の形です。

*準委任:作る側が決めた作業を注意深く行う義務を負い、完成までは約束しない契約の形です。

よくある質問|期間・費用・データ

段階ごとに、どれくらいの期間がかかりますか?

段階ごとの長さを、公開されている例と、長さを決める条件で並べると次のとおりです。全体の期間は、試作の結果で本開発の範囲が決まった時点で見積もれます。

費用は、どの段階で決まりますか?

試作の費用は、業務の分析で任せる業務が1つに決まった時点で見積もれます。その予算を事業の責任者が通してから、試作に入ります。本開発の費用の土台になるのは、試作で合格の線を超えた範囲と、本開発の最初に決める使う人と読ませる情報の範囲です。

費用の内訳と見積もりの比べ方は、AI開発・AI導入の費用相場はいくら?内訳と相見積もりの比べ方で説明しています。

社内のデータが少なくても始められますか?

始められます。既にある生成AIのサービスに社内の文書を読ませて作る形なら、AIに学ばせるための大量のデータは要りません。

経済産業省の契約チェックリストは、AIの契約を汎用的なAIサービスを使う型、カスタマイズする型、新しく作る型の3つに分けています。社内の規程の問い合わせに答える仕組みはカスタマイズする型にあたり、新しくAIを作らずに済むため、要るのは最新の規程と、試作で答えを確かめる質問の例です。

過去の数字から先を予測するAIのように、新しくAIを作る場合は、過去のデータの量と質で答えの合い方が変わります。その場合も、今あるデータで足りるかを試作で確かめてから、本開発に進めます。

段階を分けて頼める開発|スマートエイトのAIシステム開発

スマートエイトのAIシステム開発は、まず試作で効果を確かめ、その結果を見て本開発に進むかを決める進め方です。開発のページの言葉をこの記事の4つの段階に当てはめると、次のとおりです。

  • 業務の分析は、任せる業務がまだ決まっていなければ「AIコンサルティング」、決まっていればAIシステム開発の「業務プロセス分析」です
  • 試作は「PoC開発」で、効果を検証した結果を見て、頼む側が本開発に進むかを決めます
  • 本開発は「要件定義・設計」と「開発・テスト・本番導入」です
  • 運用は、納品後の「保守運用」と「継続改善」のプランです

AIコンサルティングでは、現場の社員への聞き取りとアンケートから業務を洗い出し、優先順位をつけてAI化の企画案まで作ります。標準の期間は1〜2か月です。

料金は、PoC開発が60万円から、納品後の保守運用が月3万円からで、いずれも税抜です。本開発は個別に見積もります。

求人広告代理店Gの開発は、AIコンサルティングによる業務の棚卸しの約1か月で任せる業務を決めてから、開発に入りました。要件定義を含めて約4か月の開発のうち、最初の試作から3つの納品までの約2か月半は、試作を現場の営業に会議の中で触ってもらいながら進めました。納品した後は、保守運用を続けています。

開発の内容と費用は、スマートエイトのAIコンサルティング・開発のページから無料で相談できます。

さいごに

この記事では、AIシステム開発の4つの段階と、段階の終わりごとに次へ進むかを決める人を示しました。決める人は、業務の分析と運用が現場の責任者、試作の予算と本開発に進むかと使う人の範囲が事業の責任者、読ませる情報と安全の決めごとが法務と情報システムの担当です。

まずは1週間以内に、AIに任せる業務を1つ選び、今の月の件数と1件にかかる時間の測り方を1枚にまとめ、段階ごとに決める人の名前を書き入れてください。その1枚があれば、スマートエイトの無料相談で、どの段階から頼むかまで具体的に話せます。

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