はじめに

Microsoft 365 Copilotを導入したものの、社内の文書を入れてよいかで手が止まっていないでしょうか。「Copilotは安全だと聞いたが、結局はMicrosoftに情報が渡っているのでは」という不安は、決裁者からも現場からも出てきます。

本記事では、Microsoft 365 Copilotの情報漏洩の不安に、入力と回答がどこに残るかという仕組みから答えます。そのうえで、社内データが誰に見えるかの押さえ方と、入れてよい情報の線の決め方を解説します。スマートエイトはCopilotの研修を設計する中で、この疑問に繰り返し向き合ってきました。

会社のアカウントで使うCopilotは基礎のモデルの学習に使われず、やりとりの記録は自社のMicrosoft 365の中に残ります。注意すべきは学習より、社内の共有設定の広さと、個人のアカウントで開いてしまうことです。線は会社が1枚に決め、社員には線のどちら側かだけを判断してもらうのが近道です。

本記事は2026年10月18日時点のMicrosoftの公式情報をもとにしています。Microsoft 365 Copilotは現在「Microsoft Copilot」という名前に変わっていますが、組織のデータの扱いは変わっていないため、本記事では検索で使われることの多い旧名で書きます。

Microsoft 365 Copilotの情報漏洩で多い疑問|「Microsoftには渡っているのでは」

Copilotの導入を決めた会社でも、社内の文書を入れる段になると手が止まることがあります。スマートエイトの商談では、別々の会社から同じ疑問が出ました。

Copilotの情報の扱いが分からないままだと起きる2つのことの図。社内の文書を使えず使い方が一般論で終わることと、社員ごとに入れてよいかの判断が割れることを示している

別々の2社から出た同じ疑問

製造業Aでは、研修の事前の打合せで決裁者が「Microsoftからは漏れないと言われているが、Microsoftには漏れているのではないか」と聞きました。分析を頼みたい情報ほど重要な情報になる、図面は社名を隠せば入れてよいのか、と具体的な場面で迷っていました。

M&A助言会社Bでも、「Copilotも結局はMicrosoft側に情報が行くのでは」という同じ疑問が出ました。機密を扱う業務ほど、この一点が決まらないと使い始められません。

学習が嫌で、Copilotだけにした会社もある

製造業Cは、社内で使えるAIをCopilotだけにし、ほかのAIを禁じていました。理由は「知らない間に変な情報を学習させるのが嫌だった」というものです。

Copilotを選んだ理由が安全なのに、その安全の中身は社内で説明されていない、という状態は珍しくありません。選んだ側も使う側も、仕組みを言葉で説明できないまま運用が始まっています。

疑問が残ったままだと何が起きるか

仕組みが分からないままだと、社員は社内の文書を入れられず、Copilotの使い方は一般的な文章作成で止まります。逆に、線が無いまま使い始めると、入れてよいかの判断が社員ごとに割れます。

どちらの場合も、原因は「Microsoftに渡るか」の答えを持っていないことです。次の章で、その答えを公式の仕組みから整理します。

Copilotの入力と回答はどこに残るか|学習に使われる範囲と記録の場所

「Microsoftに渡るか」は、学習に使われるかと、記録がどこに残るかの2つに分けると答えやすくなります。会社のアカウントで使う場合、この2つはどちらも会社の契約の内側で決まっています。

Copilotの入力と回答の行き先の図。会社のアカウントで入れた指示と回答は基礎のモデルの学習に使われず、使った人のメールボックスに監査のための記録として残ることを示している

会社のアカウントなら、基礎のモデルの学習に使われない

Microsoftは、Microsoft Graph経由でアクセスされる指示・回答・データが基礎のモデルのトレーニングに使われないとしています。製造業Cが心配していた「知らない間の学習」は、会社のアカウントで使う限り起きない設計です。

無償のCopilot Chatでも、会社のアカウントでサインインしていれば、*企業データ保護が自動で効きます。有償のライセンスを配っていない社員も、会社のアカウントで開けば同じ守りの中にいます。

やりとりの記録は、自社のメールボックスに残る

Copilotへの指示と回答は、使った人のメールボックスの見えないフォルダに保存されます。会社はこの記録を、メールと同じように保持のルールの対象にでき、監査や調査のときに探せます。

つまり、やりとりは「Microsoftに渡る」というより、自社のMicrosoft 365の中に残ります。決裁者への説明は「学習には使われず、記録は自社のメールと同じ場所に残る」の1文で足ります。

個人のアカウントで開いたCopilotは別の扱い

個人のMicrosoftアカウントで使う消費者向けのCopilotは、会社の契約とは別の製品です。同じ「Copilot」という名前でも、会社のアカウントで開いたときだけ、ここまでの守りが効きます。

会社のアカウントで開いているかは、サインインしているアカウントと、WordやCopilotのアプリに出るライセンスの表示で確かめられます。社員に案内するときは「会社の情報は、会社のアカウントで開いたCopilotにだけ入れる」と伝えます。

*企業データ保護:会社のアカウントでサインインしたときに自動で効くCopilotのデータの守り方。指示と回答を会社の契約の内側で扱う。

社内データが見える範囲|情報漏洩のリスクは共有設定の広さで決まる

学習に使われないとしても、Copilotが社内の誰に何を見せるかは別の問題です。Copilotの情報漏洩のリスクは、外に出ることより、社内で見えてはいけない人に見えることのほうが現実的です。

Copilotで社内データが見える範囲を決める3つの図。本人が開ける範囲、共有設定の広さ、管理者が決める設定の3つが、Copilotの回答に何が出てくるかを決めることを示している

Copilotは本人が開ける情報だけを使う

有償のライセンスでは、Copilotがメールやファイル、会議、予定表といった組織のデータを踏まえて答えます。使うのは、その人がもともと開ける情報の範囲です。

裏を返すと、本人が開けてしまう情報は、Copilotの回答にも出てきます。Copilotが新しく穴を開けるのではなく、すでにある共有設定がそのまま回答の範囲になります。

共有のしすぎが、探しやすさで表に出る

社内には、共有の範囲が広すぎるフォルダが昔からあるものです。これまでは探す手間がかかるため、見えてはいけない人の目に触れることはまれでした。

Copilotに自然な言葉で聞けるようになると、その手間が消えます。人事の資料や役員会の議事録が全社共有のフォルダに置かれていれば、聞き方しだいで回答に混ざります。導入の前に、*過剰共有になっているフォルダを洗い出すのが先です。

管理者が先に決める2つの設定

1つ目は、有償のライセンスを誰に配るかです。無償のCopilot Chatが組織の内容を使うのは、社員が貼り付けやアップロードで渡したときや、OutlookやTeamsで開いている内容を使うときなどに限られます。メールやファイルを自動で横断して答える範囲は、ライセンスの配り方で決まります。

2つ目は、Web検索を使わせるかです。管理者はWeb検索を止めるポリシーを、Copilot全体か、社内のデータを扱う画面だけに当てられます。

*過剰共有:社内の共有設定が広すぎて、本来は見る必要のない人にも資料が見えている状態。

入れてよい情報の線を1枚にする|研修で社員が判断したのは1点だけ

仕組みが分かっても、どの情報をどこまで入れるかは会社ごとに違います。スマートエイトが製造業AのCopilotの研修を組んだときは、線を会社が1枚に決め、受講者には線のどちら側かだけを判断してもらいました。

決めること

決める人

いつ決めるか

入れてよい情報の線を1枚にまとめる

会社

研修の前に配る

自分の題材が線のどちら側か

受講者

研修の当日

社内のガイドラインをどこまで緩めるか

会社

研修の後

線は会社が決め、社員一人ひとりには決めさせない

研修の前の打合せでは、社内に生成AIのルールがあるかを最初に確かめました。情報の線引きは会社が決めるもので、20〜30名が各自で決めれば、20〜30通りの線ができてしまうからです。

ルールがある会社なら、その中身をスマートエイトが1枚に整理し、事前の接続確認と一緒に配ります。ルールが無い会社なら、たたき台を1枚作り、社長の承認を得てから配る段取りにしました。

当日は業務の例3つで、線のどちら側かを判定した

研修の当日は、情報の取り扱いに10分だけ使いました。配った業務の例3つについて、Copilotに入れてよい側か、入れない側かを受講者が判定する練習です。

受講者が当日に判断するのは、自分の題材の入力が線のどちら側かの1点だけです。線の中身を議論する時間を取らないので、残りの時間をCopilotの操作に使えます。研修の選び方は、Copilot研修の内容と選び方で解説しています。

ガイドラインを緩めるかは、研修の後に決めた

製造業Aでは、社内のガイドラインを厳しめに作って配ってありました。ところが以前の口頭の運用と食い違っていて、現場が守れるかにも不安がありました。そこで、どこまで緩めるかは研修の場では決めず、研修の後に社内で判断することにしました。

行政でも線は動いています。東京都は、検証して承認した庁内のCopilotなどに限り、機密性の高い情報の扱いを認めました。線を緩めた後の効果を測るときは、生成AIの費用対効果を測る4つの問いが使えます。

よくある質問|Microsoft 365 Copilotの情報漏洩対策について

無料のCopilot Chatでも、会社の情報は守られますか?

会社のアカウントでサインインしていれば、企業データ保護が効きます。組織の内容を使うのは、社員が貼り付けやアップロードで渡したときや、OutlookやTeamsで開いている内容を使うときなどです。個人のアカウントで開いていないかだけは、最初に確かめてください。

Copilotで情報漏洩が起きた事例はありますか?

2025年6月に、細工したメールを使ってCopilotから情報を引き出せる脆弱性EchoLeakが公表されました。Microsoftは修正済みで、悪用は確認されていないとしています。設定を固めたうえで、更新の情報を追うのも対策の一部です。

Copilotに学習させない設定やオプトアウトは必要ですか?

会社のアカウントで使うCopilotは、もともと基礎のモデルの学習に使われません。学習を止める設定を探すより、社員が個人のアカウントで開いていないかを確かめるほうが先です。

図面や顧客名は、社名を隠せば入れてよいですか?

会社のCopilotなら、その資料を社内のMicrosoft 365に保存してよいかが基準になります。保存してよい資料なら、Copilotに処理させても扱いは同じです。社名を隠すかどうかは、4章の1枚の線で会社が決めておきます。

さいごに

本記事では、Microsoft 365 Copilotの情報漏洩の不安に、学習と記録の場所という仕組みから答えました。会社のアカウントで使う限り、基礎のモデルの学習には使われず、記録は自社の中に残ります。

注意したいのは、社内の共有設定の広さと、個人のアカウントで開いてしまうことです。導入の前に共有のしすぎを洗い出し、入れてよい情報の線を会社が1枚にまとめてから、社員に使ってもらってください。

スマートエイトの生成AI研修では、契約しているライセンスで使える機能だけを扱い、情報の線を1枚にしてから社内の文書で演習します。

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