はじめに

Geminiにプロンプト例をコピペしてみたものの、出てきた文章をそのまま仕事に使えなかった経験はないでしょうか。テンプレートを集めても、どこを直せばよいのかが分からないままでは、手直しの時間が減りません。

本記事では、スマートエイトが求人広告代理店向けのGeminiプロンプト研修で使っている演習7本をもとに、業務で使えるテンプレートの組み方を解説します。基本の5要素と応用の6つの技を、求人原稿の作成を通しの例にして順に示します。

結論として、テンプレートの価値は文面そのものより「出力のどこを確かめるか」とセットで持つ点にあります。各テンプレートに確認する場所を1つ決めておくと、Geminiの下書きを人が直す時間が短くなります。

本記事は2026年10月16日時点のGoogle公式の情報をもとにしています。例に出す求人情報はすべて架空です。扱うのは指示の書き方で、個人のアカウントでも仕事用のアカウントでも使えますが、型を保存する機能だけは4-2のとおりアカウントの種類で違います。

Geminiのプロンプトテンプレートは5要素で組む|公式の4要素に「制約」を足す

5要素のプロンプトテンプレートの図。役割・タスク・コンテキスト・出力形式の4つを公式の4要素としてまとめ、5つ目の制約を研修で足した要素として分けて示している

1行の指示と5要素の指示で何が変わるか

研修の最初の演習では、同じ求人原稿を2通りの指示で書かせて並べます。1つは「カフェスタッフの求人原稿を書いてください」という1行だけの指示で、もう1つは5つの要素に分けて組んだ指示です。

Googleの公式ガイドは、プロンプトの主な要素をペルソナ・タスク・背景情報・形式の4つに整理しています。研修ではこの4つに「制約」を足し、役割・タスク・コンテキスト・出力形式・制約の5要素で教えています。

1行の指示では、時給や勤務地をGeminiがもっともらしく埋めてしまうことがあります。5要素で組むと、媒体と読み手に合わせた言葉づかいになり、そのまま入稿に近い形で返ってきます。

そのまま使える5要素のテンプレート

業務で使うときは、次の型を下書きの置き場に保存しておき、カッコの中だけを案件ごとに差し替えます。求人原稿のほかに、営業メールや社内向けの案内文でも同じ型が使えます。

# 役割
あなたは〔職種〕です。〔得意なこと・経験〕。

# タスク
〔何を・どこに出すために〕書いてください。

# コンテキスト
- 読み手:〔誰が・どんな状況で読むか〕
- 前に出したい点:〔推したいこと〕
- 参考情報(事実):〔求人票・資料から貼る〕

# 出力形式
1. 〔見出しや字数〕
2. 〔本文の字数〕
3. 〔箇条書きにする項目〕

# 制約
- 参考情報にない情報を作らない。不明な点は「(要確認)」と書く
- 誇張表現を使わない
- 〔業界で避けるべき表現〕を使わない

制約の欄が、5要素のなかで最も仕事の質を左右します。求人広告なら、年齢や性別を限定する表現を避ける決まりをここに書いておくと、毎回の指示から漏れません。募集での年齢制限は労働施策総合推進法で、性別による区別は男女雇用機会均等法で、原則として禁じられています。

出力のどこを確かめるか

5要素の出力でまず見るのは、「(要確認)」が正しく残っているかどうかです。参考情報に書いていない休日や交通費を、Geminiが勝手に埋めていないかを確かめます。

研修では、1行の指示との違いを「具体性」「トーン」「そのまま使える度合い」の3点で挙げてもらいます。違いを自分の言葉で言えると、次に型を作るとき、どの要素を厚く書けばよいかが分かります。

*コンテキスト:AIに渡す前提の情報。読み手・目的・事実の資料などを指し、公式ガイドでは「背景情報」と呼んでいる。

Geminiプロンプトの書き方を一段上げる3つの技|例示・逆質問・計画→実行

研修の応用編では、5要素の型に足して使う6つの技を1つずつ演習します。この章では、書かせる前に効く3つを扱います。

書く前に効く3つの技の図。例示・逆質問・計画→実行の順に並べ、それぞれ出力のどこを確かめるかを添えている

例示:形容詞の代わりにお手本を貼る

「若手向けの明るい感じで」と形容詞で頼んでも、Geminiと人とで思い浮かべる文体はそろいません。そこで、過去に応募が多かった原稿をお手本として貼り、その構成と文体をまねて新しい求人を書かせます。

確かめる場所は2つあります。1つは冒頭1行がお手本と同じく読み手への語りかけになっているかで、もう1つはお手本側の時給や職種が新しい原稿に混ざっていないかです。お手本は1〜2本が目安で、自社で実際に応募が集まった原稿を使うと効きます。

逆質問:書かせる前に足りない情報を聞かせる

クライアントから届いた情報が職種と勤務地と時給だけ、という場面はよくあります。そのまま書かせると、Geminiは足りない部分を作文で埋めてしまいます。

研修では「まだ原稿を書かないでください」と止めたうえで、応募率を左右する順に確認したい質問を7つまで挙げさせます。答えた分だけで原稿を書かせ、答えていない項目は「(要確認)」にさせます。

確かめるのは、質問が実務のヒアリング項目になっているかです。最寄り駅からの距離やシフト、扱う荷物の重さが出ていれば、そのまま営業の聞き漏らしを防ぐチェックリストとして使えます。

計画→実行:構成に合意してから本文を書かせる

いきなり本文を書かせると、方向がずれていた場合に本文ごと直すことになります。研修では、まず見出しと一言の説明を5項目前後の構成案として出させ、人が順番を入れ替えたり項目を削ったりしてから本文を書かせます。

確かめるのは、本文の前に方向を直せたかどうかです。別のチャットで一発で書かせた原稿と直しの量を比べると、手戻りがどこで減ったかが分かります。提案書や長い営業メールのように、成果物が長いほど効く技です。

出力を育てる残り3つの技|自己批判・失敗仮説・別チャットでのレビュー

残りの3つは、Geminiが書いた後に使う技です。1回目の出力を完成品として扱わず、読み手や反対者の目で点検させてから仕上げます。

書いた後に効く3つの技の図。Geminiの1回目の出力を、自己批判→改善・失敗仮説・生成とレビューの分離の3つで点検し、最終の可否は人が決めることを示している

自己批判→改善:読み手になりきって読み直させる

原稿を作ったチャットの続きで、「20代・接客未経験の求職者になったつもりで読み直してください」と頼みます。応募をためらう点を3つ挙げさせ、解消案を出させ、事実を変えずに改善版を書かせる流れです。

確かめる場所は、指摘が表現の好みではなく「読み手の不安」になっているかです。続けて「子育て中で平日昼だけ働きたい40代」に読み手を替えると指摘が変わり、ペルソナを指定する効き目が目で見て分かります。

失敗仮説:提案の穴をAI自身に探させる

媒体の出稿プランのような提案ものは、頼み方のままだと良い面だけが並びます。そこで依頼文の最後に、不確実性・失敗の筋書き・反証の3行を足します。

# 追加の指示
- 不確実性:この提案の成否を左右する不足情報を3つ挙げてください
- 失敗仮説:このプランが失敗するとしたら、可能性の高い筋書きを3つ挙げてください
- 反証:提案した各案について「この前提が崩れたら選び直す」条件を1つずつ挙げてください

確かめるのは、挙がった不確実性がそのままクライアントへの確認リストになるかです。挙げた失敗の筋書きは放っておかず、潰す手当てを提案に入れてから客先に出します。

生成とレビューを分ける:別の新しいチャットで点検させる

書いたチャットの続きで「これで大丈夫?」と聞くと、直前の文脈に引きずられて点検が甘くなります。研修では新しいチャットを開き、校閲者の役割とチェックリストを渡して原稿だけを点検させます。

チェックリストには、年齢を限定する表現、性別を限定する表現、根拠を示せない誇大表現、入力にない事実の4項目を入れます。点検結果は「該当文・項目・理由・修正案」の表で返させ、修正版の全文も出させます。

確かめる場所は、わざと仕込んだNGを全部拾えたかと、修正版が求人の魅力を削りすぎていないかです。表現の最終的な可否は、媒体の掲載基準と社内ルールで人が判断します。

Geminiプロンプト一覧を自社のプロンプト集にする|7本の使い分けと保存

7本のテンプレート一覧と確かめる場所

ここまでの7本を、使う業務と確かめる場所で一覧にすると次のとおりです。研修では1本10分前後で演習し、最後に自分の案件のデータへ差し替えて回します。

演習

技

使う業務の例

出力のどこを確かめるか

0

5要素

求人原稿・営業メール

「(要確認)」が勝手に埋められていないか

1

例示

当たり原稿の型での新規原稿

冒頭1行の型と、お手本側の事実の混入

2

逆質問

情報が薄い依頼の初手

質問がヒアリング項目になっているか

3

計画→実行

提案書・長いメール

本文の前に方向を直せたか

4

自己批判→改善

原稿の仕上げ

指摘が読み手の不安になっているか

5

失敗仮説

媒体プラン・企画の提案

不確実性が確認リストになるか

6

生成とレビューの分離

納品前の校閲

仕込んだNGを全部拾えたか

一覧の右端の列は、文例だけを並べたプロンプト集には載っていないことの多い部分です。テンプレートを社内で配るときは、この列まで含めて配ると、受け取った人が出力を自分で判定できます。

よく使う型はGemかスキルに保存して使い回す

毎回テンプレートを貼るのが手間なら、型をGeminiに保存しておきます。個人のアカウントでは2026年11月から保存先が*Gemから*スキルに移り、作ったGemは自動でスキルに作り直されます。仕事用のアカウントは、Business・Enterpriseなら2027年3月までGemのまま使えます。

スキルはパソコンならgemini.google.comのサイドバーの[設定]→[スキル]から作り、チャットで「/」に続けて名前を打つと呼び出せます。Gemはサイドバーの「Gem」から作ります。

求人広告の会社なら、5要素の役割と制約を入れた「求人原稿」と、校閲のチェックリストを入れた「校閲」を分けて保存するのが使いやすい形です。Gemは1つずつ別のチャットで動きますが、スキルは同じチャットの中で自動で働くことがあります。スキルで3-3の分け方を守るなら、新しいチャットを開いてから校閲のスキルを呼んでください。

型を作り込む時間が回収できているかは、生成AIの費用対効果を測る4つの問いで確かめられます。原稿1本あたりの手直し時間を、型を入れる前後で比べるのが分かりやすい測り方です。

自分の案件のデータに差し替えるときの線引き

研修の教材はすべて架空の求人で作っていますが、実務では自社の案件データに差し替えて使います。そのとき、社内のAI利用ルールを先に確かめ、社外秘の情報や応募者の個人情報は貼らないのが前提です。

求人票の事実のうち、公開前の給与条件やクライアントの社名をどう扱うかは、会社ごとに線を引いておく必要があります。うっかり貼ってしまった場合の対処は、Geminiに個人情報を入れてしまった時の手順にまとめています。

*Gem:Geminiに名前とカスタム指示を保存しておき、専用のチャットとして呼び出せる機能。個人のアカウントでは2026年11月からスキルへ移る。 *スキル:Geminiに保存した指示を「/」と名前で呼び出す機能。内容に合う場面ではGeminiが自動で使うこともある。

よくある質問|Geminiのプロンプト例と公式ガイドについて

Geminiのプロンプトの書き方の公式ガイドはありますか?

あります。Google Workspaceのサイトにある、ビジネスで効果を発揮するAIプロンプトの書き方のページが公式のガイドです。本記事の5要素のうち、制約を除く4つはこのガイドの要素に対応しています。

プロンプト例をコピペするだけでは駄目ですか?

コピペでも下書きは出ますが、業務の事実と業界の決まりが入っていないため、手直しが多くなります。コピペしたら、コンテキストと制約の欄だけは自社の案件に書き換えてから使ってください。

プロンプトは長く書くほど良いのですか?

長さより、5要素がそろっているかが大切です。1回で完璧な指示を書こうとせず、出力を見て足りない要素を足していく使い方をおすすめします。公式ガイドも、結果が希望と違うときはプロンプトを微調整して会話を続けることを勧めています。

6つの技は全部の仕事で使うべきですか?

すべてを毎回使う必要はありません。短い原稿なら5要素と例示で十分で、計画→実行や失敗仮説は提案書のように長い成果物や判断を含む仕事で効きます。4-1の一覧で、業務に合う技を選んでください。

さいごに

本記事では、求人広告代理店向けの研修で使っている演習7本をもとに、Geminiのプロンプトテンプレートを5要素と6つの技で組む方法を解説しました。どのテンプレートも、出力のどこを確かめるかとセットで持つと、手直しの時間が短くなります。

「プロンプト集を配ったのに社内で使われない」「人によって出力の質がばらつく」という悩みは、確かめる場所が共有されていないことが原因になりがちです。まずは日々書いている書類を1つ選び、5要素の型と確認の場所を決めてみてください。

スマートエイトの生成AI研修では、自社の業務を題材にして、こうした型を受講者自身が作る演習を行っています。

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