はじめに
AIに書かせたスライドの箇条書きやメールの説明を読み返して、「間違ってはいないのに、何を言いたいのか分からない」と感じた経験はないでしょうか。短くまとめてと頼むほど、読み手が知りたいことが抜け、聞かれてもいない打ち消しの文だけが残ることもあります。
本記事では、AIの分かりにくい説明文を直すスキル「explain-before-shorten」について、何をするスキルか、説明が分かりにくくなる理由、スキルが直す順番、会社で使う前に確かめることと頼み方を解説します。スマートエイトは生成AI研修で、AIの下書きを社内外に出せる文書に仕上げる手順を扱ってきました。
結論を先に書きます。AIの説明が分かりにくくなるのは、短く書こうとして、何が起きるか・どんな場合かの説明を省いてしまうからです。explain-before-shortenは、まず隣の人に口頭で説明するつもりで中身を組み立て、そのあと意味と条件を保ったまま短くする順番を、AIに守らせます。
書き方のAIっぽさを整えたいなら、別のスキルの yomiyasu が向いています。explain-before-shorten が向くのは、読んでも中身が分からない説明文です。
本記事は2026年10月28日時点で、作者がZennに公開した記事と、そこに載っているスキルの全文を読んでまとめています。作者が公開しているのはこの全文で、配布用のファイルやインストールの手順は用意されていません。
explain-before-shortenとは何か|「短くする前に説明する」ためのスキル
explain-before-shortenは、AIが書いた説明文を、言葉を削る前にいったん話して伝わる説明に組み立て直させるスキル*です。名前は英語で「短くする前に説明する」という意味で、直す順番そのものを表しています。
使う場面は、スライドや技術文書、メールの説明文を作る時と直す時で、誤字の修正やプログラムのコードを短くする依頼には使いません。名前に「口頭」とあっても、仕上がりの文が話し言葉になるわけではなく、話すつもりで考えるのは中身を整理するためです。

誰が作った、どんなスキルか
作者は、日本マイクロソフトで働く Kazuki Ota さんです。技術者が記事を投稿するサイトのZennで、Microsoftの社員が有志で書く場から2026年10月26日に公開しました。記事は個人の見解として書かれた物で、Microsoftの製品でも、会社の公式の見解でもありません。
きっかけは、作者が自作の道具でスライドを作っていた時のことです。AIに箇条書きを作らせると、説明が足りないうえに、いきなり打ち消しから入る文がたびたび出てきたといいます。その言い直し方をスキルの形にまとめてもらったところ、割と良い物ができたため、メモとして公開した経緯です。社内の手順を同じようにスキルにまとめる方法は、Claude skill creatorの使い方で取り上げました。
公開から2日後の10月28日の時点で、記事にはZennで128のいいねが付き、ブックマークを共有するはてなブックマークでも149件が付いています。
yomiyasuとは何が違うのか
AIの文章を直すスキルでは、AIっぽい文章を直すyomiyasuも広く使われています。yomiyasu は、比喩の動詞や中身のない前置き、主語と述語の対応があいまいな文を直し、書いてある中身を読みやすく整えるスキルです。
2つの違いは、元の文にない説明を足すかどうかに出ます。yomiyasu の決まりでは、誤解を正している打ち消しは残し、元の文にない主体や原因、条件は足しません。explain-before-shorten は、そのページで伝えたいことを先に決め、それに要る説明を前後の文脈から組み立ててから短くします。
伝えたいことが決まっていて書き方だけを整えたいなら yomiyasu、何を伝えるかから組み立て直したいなら explain-before-shorten、と考えると選びやすくなります。
*スキル:AIに特定の作業の手順や判断の基準を渡す、指示を書いたファイルのまとまり。必要な場面でAIが読み込んで使う。
AIの説明文はなぜ分かりにくいのか|短くしすぎて「何が起きるか」が消える
作者がスキルを作るきっかけになった文と、スキルに載っている書き換えの例を並べると、分かりにくさには共通の形が見えてきます。どれも、短くまとめようとして、何が起きるかや、どんな場合かの説明を省いている点です。

聞かれていない打ち消しで、説明が抜ける
作者が直したかったのは、処理の状態を表す「Completed」の説明でした。AIの文は、コードが最後まで動いた状態だと述べたあと、入力の不正が0件だという意味ではない、と打ち消して終わっていました。
打ち消しの中身は間違っていません。ただ、作者がそのページで伝えたかったのは別のことで、肝心の説明は足りないままでした。作者はこうした文を、説明が要るのに「いきなり否定から入る」文として挙げています。
作者は、こうした文があちこちに散らばったスライドを、1つずつ点検していたといいます。1文ずつ見れば正しいため、見直しで直すべき箇所として気づきにくいのが厄介な点です。
「分離」「保証」のような語ひとつで動きを済ませる
スキルは、「分離」「管理」「対応」「保証」のような語に、実際の動きや条件の説明を肩代わりさせないよう求めています。短くまとまって見えても、実際に何がどう動くのかが、読み手には伝わらないからです。
書き換えの例の1つ目は、「受付と完了確認を分離する」という短い文です。2つのことを分けるのは分かっても、相手に何が返り、結果をどう知るのかが読み取れません。
2つ目の「上限数は到達保証ではない」は、スキルが「短いだけの独自表現」を作るなという決まりの中で、名指しで挙げている言い方です。言葉は締まって見えますが、読み手は「では何が起きるのか」を自分で補わなければなりません。
違う話を1文につなげる
3つ目の型は、仕組み・使う条件・例外・注意点のような違う話を、1文につなげてしまう形です。
書き換えの例の3つ目「上限なしでも中断に備える」は、設定の条件と、それでも起きることが、1つの短い句に押し込まれています。どの条件が何にかかるのかを、読み手が組み立て直す必要があります。
スキルに載っている3つの例を、2-2と2-3の型に当てはめると次のとおりです。右の列は、スキルの書き換えを要約した物です。
型 | 短くしすぎた表現 | スキルの書き換えの要旨 |
|---|---|---|
語ひとつで動きを済ませる | 受付と完了確認を分離する | 受け付けた時点で返事をし、結果はあとで問い合わせて確かめる形にする |
語ひとつで動きを済ませる | 上限数は到達保証ではない | 割り当ての上限などに引っかかり、表に書いた台数まで届かないことがある |
違う話を1文につなげる | 上限なしでも中断に備える | 実行時間の上限を外しても、サービス側の更新などで途中で止まる場合がある |
どの書き換えも、文は長くなる代わりに、何が起きるかが一度で伝わります。例はあくまで言い換えの作り方を示す物で、別の製品や構成にそのまま当てはめないよう、スキル自身が注意しています。
explain-before-shortenの6つの手順|伝えたいことを決めてから短くする
スキルの中心は6つの手順で、説明する・短くする・確かめるの3段に分かれます。使う範囲や出力の形の決まりも含めた全文は、作者の記事で読めます。

説明する段階の手順1〜3では、まだ削りません。そのページで伝えたいことを1つに決め、相手に話して聞かせるつもりで説明を組み立てます。
短くするのは手順4になってからで、削ったあとも、誰が何をするのかと、どんな条件の話かは残します。確かめる段階の手順5と6では、長い説明を知らない人が短い文だけで分かるかを見直します。
2章の3つの型と照らすと、どの手順で直すかが見えてきます。聞かれていない打ち消しに当たるのは、伝えたいことを先に決める手順1です。語ひとつで済ませた文には話して聞かせる手順2が、違う話をつないだ文には話を切り分ける手順3が当たります。
削る手順が説明の後ろに置かれているのは、2章の3つの型がどれも、説明より先に削ったことから生まれているためです。
explain-before-shortenの使い方|会社で確かめること・入れ方・頼み方
会社で使うなら、入れる前に3つを確かめ、そのうえで入れ方と頼み方に進みます。

会社で使う前に何を確かめるか
1つ目は、使ってよい条件です。スキルの全文は作者の記事の一部で、使ってよい範囲を示すライセンスは付いていません。会社の業務で写して使う、とくに部署や全社に配るなら、先に作者に確かめるか、手順の考え方を参考に自社の言葉で指示を書き起こすと安心です。
2つ目は中身です。このスキルは指示を書いた文書だけでできていて、動かすためのプログラムも、外部のサービスとの接続も要りません。入れる前に全文を一度読めば、何をさせるスキルかをその場で確かめられます。
3つ目は、直す文書とAIの組み合わせです。文章を読んで書き換えるのは組み合わせて使うAIなので、社外秘の資料を扱えるかは、そのAIの契約と社内の入力ルールで決まります。会社が利用を認めたAIの環境で使ってください。
どうやって入れるのか
作者は、スキルの全文をZennの記事に載せる形で公開しています。GitHubのような配布用の置き場や、インストールのコマンドは用意されていません。
スキルとして使うには、explain-before-shorten という名前のフォルダを作り、全文を、スキルの本体のファイル名である SKILL.md で保存します。そのうえで、使っているAIのスキルの機能に登録します。スキルの共通の書き方では、全文の先頭の「name」の欄に書いた名前と、フォルダの名前をそろえる決まりです。
Claude・ChatGPT・Microsoft 365 Copilot など、どのAIでこの形のスキルを入れられるかと、入れる時の条件は、Agent Skillsとは|ClaudeのスキルをChatGPT・Copilotで使う条件で整理しています。
どう頼めばいいのか
作者の頼み方は、意味が分からない箇所を名指しし、「/」に続けてスキルの名前を書いて見直しを頼む形です。こう頼むと、わりと良い文章に落ち着くといいます。
「直して」と頼めばファイルに反映し、相談として頼めば書き換えの案を示すところで止める決まりです。社外に出す文書なら、まず相談として頼み、案を人が読んでから反映すると、意図と違う言い換えに気づけます。
よくある質問|explain-before-shortenで迷いやすい点
yomiyasuと一緒に使えますか?
両方を同時に有効にするより、1つずつ使うほうが無難です。yomiyasu の説明書は、ほかの日本語の校正スキルと併用すると指示が食い違う場合があるとして、出力が乱れたら似たスキルを一時的に止めて使うよう勧めています。
順に使うなら、先に explain-before-shorten で何を伝えるかを組み立て直し、そのあと yomiyasu で書き方を整える順が、2つのスキルの役割に合っています。
スキルを入れられないAIでも、同じ直し方はできますか?
近い直し方はできます。頼む文に、手順の考え方を短く書き添えます。例えば「まず、隣の人に口頭で説明するとしたらどう言うかを考え、そのあと意味と条件を変えずに短くしてください」と添えれば、スキルと同じ順番をAIに頼む形になります。
英語の文章にも使えますか?
このスキルが対象にするのは、日本語の説明文です。手順の考え方は言葉を問いませんが、書き換えの例や決まりは、日本語の文を直す前提で書かれています。
料金はかかりますか?
スキルの全文は、作者の記事で誰でも読めます。かかるのは組み合わせて使うAIの利用料で、会社で写して使うときの条件は4-1のとおりです。
さいごに
本記事では、AIの分かりにくい説明文を直すスキル「explain-before-shorten」について、説明が分かりにくくなる理由と直す順番、会社で使う前の確認と頼み方を解説しました。AIの説明が分かりにくいのは、短くしようとして、何が起きるかやどんな場合かの説明を省くからで、このスキルは先に口頭の説明を組み立ててから短くする順番を守らせます。
スライドやメールでAIの下書きを使っているなら、まず1か所、読んで意味が取れなかった文を選び、「口頭で説明するとしたら」と頼み直してみてください。スキルを入れなくても、2章の3つの型に当てはまる文を探すだけで、直す場所は見つかります。
スマートエイトの生成AI研修では、AIの下書きを社内外に出せる文書に仕上げるまでの手順を、受講する方の実際の業務の文面で練習します。
※生成AI研修資料/導入事例も無料ダウンロードいただけます。




