はじめに

AIに書かせたメールや提案書を読み返して、「間違ってはいないのに、なぜかAIが書いたと分かる」と感じた経験はないでしょうか。社外に出す文書ほど、その違和感が気になって結局ほとんど書き直すことになりがちです。

本記事では、AIが書いた日本語を自然な文に直すスキル「yomiyasu(よみやす)」の使い方を、会社の文書に引きつけて解説します。どんな文がAIっぽく読まれるのか、その型と直し方、実際に提案メールを通した結果、Claudeへの入れ方までを順に見ていきます。スマートエイトは生成AI研修と導入支援で、AIの下書きを業務文書に仕上げる手順を扱ってきました。

AIっぽさの正体は、言葉選びより「誰が何をしたかが消えた文」と「飾り」にあります。yomiyasuは、元の文の意味を変えずにそこだけを直す点に特徴があります。

本記事は2026年10月4日時点の公開情報と、同日に Claude Code で動かした結果をもとにしています。yomiyasuは個人が公開した無料のスキルで、説明書にあたるREADMEが案内する導入先はClaude Code・Codex・Cursorと、ZIPで登録するClaudeのウェブ版です。動作を確かめたのは Claude Code です。

yomiyasuとは何か|AIっぽい文章を「文の骨格」から直すスキル

誰が作った、何をするスキルか

yomiyasuは、AIが生成した日本語の不自然さを直し、読みやすく情報の詰まった文へ推敲するためのスキル*です。作者は最適化技術のスタートアップ ALGO ARTIS に所属する大賀愛一郎さんで、個人の研究・創作物として公開されています。

最初の版が出たのは2026年9月30日で、日本時間の10月4日には v1.0.5 まで更新されています。対象として想定されているのは、技術記事や仕様書、社内レポートのような実務の文章です。

話題の大きさは数字にも表れています。10月4日時点で、公開先のGitHubで付いたスターは1,340、作者の開発の経緯を書いた解説記事にははてなブックマークが500件以上付いています。

検索すると、理想科学工業の「ヨミヤス」が上位に並びます。PDFの文書データから文字の大きさや行間、配色の見やすさを評価する有償のクラウドサービスで、本記事のyomiyasuとは別のものです。

禁止語リストではなく、文の組み立てを直す

AIっぽさを消す工夫として、「解像度」「手触り」のような言葉を禁止する方法がよく試されてきました。READMEは、この方法では別の曖昧な語に置き換わるだけで、不自然な文の組み立ては残ると指摘しています。

そこでyomiyasuは、直し方を7つの原則にまとめています。業務の言葉に置き換えると、次のようになります。

  • 誰が何をするのかを書き、「これ」「両者」のような指す先の曖昧な語を名詞に戻す
  • 読み手へのお願いと、機能の説明を書き分ける
  • 道具や概念が意思を持つかのような書き方をやめる
  • 「倒す」「効く」「潰す」のような比喩の動詞を、ふだんの言葉に直す
  • 「重要なのは」のような前置きや、わざわざ否定してから言い直す形を整える
  • 数字や条件は残し、元にない情報は足さない
  • 1文の長さと読点を抑え、絵文字や太字の多用をやめる

いちばん大事にしているのは「意味を変えないこと」

スキルの本体には、最優先のルールとして意味の保持と情報の不増補が書かれています。主張・比重・言い切りの強さ・文の働きの4点を、書き直す前と後で変えないという決まりです。

この方針は、会社の文書でAIに推敲を任せるときの不安にそのまま応えています。読みやすくする代わりに約束の強さが変わったり、書いていない条件が足されたりすると、社外には出せません。yomiyasuは、判断できないことは本文で埋めず、最後に「書き手に確かめたい点」として返す作りになっています。

*スキル:AIに特定の作業の手順や判断基準を覚えさせる追加ファイルのまとまり。必要な場面でAIが読み込んで使う。

業務文書でAIっぽく読まれる型|メール・提案書・社内報告の場合

AIっぽく読まれる6つの型を並べた図。比喩の動詞、雰囲気だけの言葉、中身のない前置き、否定してから言い直す形、太字と箇条書きの多さ、定型の締めの6つに、それぞれの例を添えている

比喩の動詞と「雰囲気だけの言葉」

yomiyasuが持つ語彙の一覧では、最初にAIが好む比喩の動詞が並んでいます。「〜側に倒す」「時間を溶かす」「1つずつ潰す」「地味に効く」といった言い方です。

会社の文書でこれが困るのは、読み手が意味を補わないと読めない点です。「安全側に倒す」は「安全を優先して決める」と書けば一度で伝わります。一方で「骨が折れる」「手を焼く」のような昔からある慣用句は、AIっぽい比喩として扱わず残す決まりになっています。

もう1つは、中身がないのにそれらしく見える言葉です。「肌感」「温度感」「解像度を上げる」「腹落ち」などがこれにあたります。元の文に書いてある範囲で、何をどこまで調べたのかを書けば言い換えられます。

中身のない前置きと、否定してから言い直す形

「重要なのは」「結論から言うと」「ここで注目すべきは」のような前置きも、AIっぽさの代表です。ただしyomiyasuは、前置きを機械的に消しません。何が大事かという評価そのものを担っているなら、「〜が重要です」と述語に移して残します。

「AではなくBです」という形も同じ扱いです。Aと誤解されやすい点を正しているなら、否定は意味を持つので残します。否定を外しても主張が変わらないときだけ、「Bです」と言い切る形にします。

業務文書向けの指針では、さらに責任の所在と条件をはっきりさせることを求めています。「適宜対応する」のような書き方は、元の資料に具体的な条件があるときだけ具体化し、無い条件は足しません。

太字と箇条書きの多さ、定型の締め

AIの下書きは、太字と箇条書きが多くなりがちです。yomiyasuに付いている検査ツールは、太字を1,000字あたり2個以下、箇条書きの行を全体の15%以下に抑えることを推奨しています。太字が3個、箇条書きが25%を超えると警告が出ます。

締めの定型も目に付きます。「いかがでしたでしょうか」「ぜひ試してみてください」「参考になれば幸いです」は、形だけの呼びかけとして削る対象です。

業務文書でよく見る型を、直し方と並べると次のとおりです。

型

AIっぽい例

直し方の例

比喩の動詞

判断に迷ったら安全側に倒す

判断に迷ったら安全を優先して決める

雰囲気だけの言葉

現状の課題の解像度を上げる

現状の課題を詳しく整理する

中身のない前置き

重要なのは〜です

評価なら「〜が重要です」と述語に移す

否定してから言い直す形

単なる導入ではなく見直しです

誤解を正す意味がなければ「見直しです」

太字と箇条書きの多さ

要点ごとに太字と箇条書き

つながりのある話は地の文に戻す

定型の締め

いかがでしたでしょうか

削って本文の結びで終える

yomiyasuで提案メールを直すと何が変わるか|実際に試した結果

AIっぽい型を詰め込んだ提案メールを用意した

スマートエイトは2026年10月4日、架空の取引先に送る提案メールの一部を用意し、yomiyasuを通しました。請求書チェックの見直しを提案する321字の文面で、2章の型をあえて多めに入れています。

元の文には、「担当者の肌感に頼って」「確認漏れが静かに積み上がっています」「チェック項目を共通側に倒して」「チーム全体の解像度が一段上がります」といった言い回しがありました。3点の箇条書きにはすべて太字が付き、最後は「地味に効いてきます。ぜひご検討ください!」で結んでいます。

同梱の検査ツール、いわゆるリンター*にかけると、この元の文は100点満点で58点でした。太字の頻度が1,000字あたり12.46個、箇条書きの比率が37.5%で、「肌感」「解像度」「側に倒す」「潰す」「効く」などを含む9件が指摘されています。

書き直した後と「変えたところ」

次に、Claude Code*にyomiyasuを入れ、「この文章を業務文書向けに読みやすくして。取引先への提案メールの一部です」と頼みました。返ってきた文では、比喩の言い回しがふだんの言葉に置き換わっています。

  • 肌感 → 感覚
  • 静かに積み上がっています → 気づかないうちに積み重なっています
  • 共通側に倒して → チーム共通のものにして
  • 時間を溶かさずに済みます → 多くの時間を取られずに済みます
  • 地味に効いてきます → 目立つ変化ではありませんが、着実に効果が表れます

「静かに」は「気づかないうちに」、「地味に」は「目立つ変化ではありませんが」に直っています。比喩は消えても、気づけない怖さや、目立たないが確かに効くという含みは残っています。太字と「!」も外れ、検査ツールの点数は88点に上がりました。

残したものと、書き手に返された質問

「重要なのは、単なるツールの導入ではなく、業務フロー全体の見直しです」という1文は、太字が外れただけで、否定の形のまま残りました。提案の軸を示す否定なので意味がある、という判断です。3点の箇条書きも、提案メールでは一覧のほうが読みやすいとして残っています。

最後には「書き手に確かめたい点」が2つ付いていました。「解像度が一段上がります」を仮に「確認の精度が一段上がります」と訳したので、意図が違えば直すという確認です。もう1つは、前後の文をつなぐ意図があるかの問いでした。分からないことを本文で勝手に埋めない作りが、出力の形にも出ています。

一方で、検査ツールは「時間を溶かさずに」を指摘していませんでした。拾うのは決まった言い回しのパターンだけなので、最後は人が読んで決める前提で使います。効果を見るときは、推敲にかかった時間も含めて数えるのが現実的です。効果の数え方は生成AIの費用対効果を測る4つの問いで整理しています。

*Claude Code:Anthropicが提供する、ファイルを読み書きしながら作業するAIツール。開発者向けだが文書作業にも使われる。 *リンター:文章やプログラムを決まったルールで機械的に点検し、問題になりそうな箇所を一覧にする道具。

yomiyasuの入れ方と使い方|Claudeのウェブ版・Claude Code・頼み方

Claudeのウェブ版に入れる手順

Claudeのウェブ版では、スキルをZIPファイルでアップロードして使えます。Freeを含む全プランが対象で、事前にコード実行の設定*をオンにします。画面の名前は英語表記で書きます。

Claudeのウェブ版へyomiyasuを入れる4つの手順の図。登録専用のyomiyasu.zipをダウンロード、Settingsでコード実行をオン、CustomizeのSkillsからZIPを解凍せずに登録、エラーが出たときはSKILL.mdのargument-hintの行を消して圧縮し直す
  • 手順1 作者が用意した登録専用のyomiyasu.zipをダウンロードします
  • 手順2 個人プランでは「Settings」の「Capabilities」を開き、「Code execution and file creation」をオンにします
  • 手順3 「Customize」の「Skills」で「+」→「Create skill」→「Upload a skill」と進み、ZIPを解凍せずに渡します
  • 手順4 手順3でエラーが出たら、解凍してSKILL.md先頭の「argument-hint」の行を消し、圧縮し直して渡します

この行は Claude Code 向けの項目で、登録専用ZIPにも入っています。Anthropicの公式ドキュメントには、ウェブ版の登録ではこうした項目があるとエラーになると書かれ、同じエラーの報告もあります。READMEはそのまま渡せると案内しているので、まず手順3を試し、エラーなら手順4に進みます。

GitHubの「Download ZIP」で取れる全体のZIPは、別形式の設定ファイルを含むため登録できません。その場合はSKILL.mdとreferencesフォルダだけを選んで圧縮します。

*コード実行の設定:Claudeがファイルを作ったりプログラムを動かしたりできる設定。

Claude Code・Codex・Cursorに入れる場合

開発者向けのツールを使っている場合は、READMEが4つの入れ方を案内しています。いちばん手軽なのは、ターミナルで次の1行を実行する方法です。

npx skills add nanaism/yomiyasu

Claude Code ではプラグインとして入れる方法もあり、Codex・Cursor*向けには別のコマンドが用意されています。更新が多いスキルなので、入れた後もときどき最新版に上げるコマンドを実行すると安心です。

*Codex・Cursor:Codex は OpenAI、Cursor は Anysphere が提供する、AIがコードを書く作業を手伝う開発ツール。

頼み方と、会社で入れる前に確かめること

使い方は、直したい文章を貼り付けて「この文章を読みやすくして」と頼むだけです。「業務仕様向けに」「技術記事向けに」「エッセイ向けに」と添えると、用途に合った直し方になります。誰に向けた何の文書かを一言添えると、文末の整え方も安定します。

会社の端末に入れる前には、中身を一度開いて読むことをおすすめします。スマートエイトが公開スキルを点検したときも、中身が日本語のテキスト1枚だけのものがありました。yomiyasuの本体も指示を書いた文書で、v1.0.5の登録専用ZIPに入っている検査スクリプト2本にも、外部と通信する処理は入っていませんでした。

もう1つの注意は、似た役割のスキルとの同時使用です。READMEは、文体を整える別のスキルと同時に有効にすると指示がぶつかるおそれがあるとして、一時的に止めて使うよう勧めています。入れるスキルを選ぶ基準はビジネスで使えるClaude Skillsおすすめ12選でまとめています。

よくある質問|yomiyasuの料金・対応AI・同名の製品

yomiyasuは無料で使えますか?

yomiyasuそのものは無料です。MITライセンス*で公開されており、会社の業務で使うことも、手を加えて使うこともできます。かかるのは、組み合わせて使うClaudeなどのAIの利用料だけです。

理想科学の「ヨミヤス」と同じものですか?

別のものです。理想科学工業の「ヨミヤス」は、PDFの文書データから文字の大きさや行間、配色の見やすさを評価する有償のクラウドサービスです。本記事のyomiyasuは、AIが書いた日本語の文を推敲するためのスキルで、提供元も目的も違います。

ChatGPTやCopilotでも使えますか?

GitHub Copilot(VS Code のエージェントモードや Copilot CLI など)はスキルの形式に対応していて、4-2 の npx skills add でも入れられます。READMEが入れ方を案内しているのは、Claude Code・Codex・Cursorと、ZIPで登録するClaudeのウェブ版です。ChatGPT や Microsoft 365 Copilot で使うなら、2章の表の型を指示文に貼り、「意味と数字は変えず、元にない情報は足さないで」と添えて頼む方法が現実的です。

社外秘の文書を直しても大丈夫ですか?

登録専用ZIPに入っているのは、手順を書いた文書と検査スクリプト2本で、10月4日にv1.0.5で確かめた範囲では、外部と通信する処理は入っていません。プラグインやコマンドで入れるとリポジトリの検証用スクリプトも入ることがあるので、中身を一度確かめてから使ってください。文章を読むのは組み合わせて使うAIなので、扱えるかどうかはそのAIの契約と、社内の入力ルールで決まります。社外秘の文書は、会社が利用を認めたAIの環境で使ってください。

*MITライセンス:著作権表示を残せば、商用利用・改変・再配布を自由に認める、ソフトウェアで広く使われる公開条件。

さいごに

本記事では、AIが書いた日本語を直すスキル「yomiyasu」について、直す型と実際の結果、入れ方を解説しました。AIっぽさは「倒す」「解像度」のような言葉に目が行きがちですが、根は誰が何をしたかが消えた文と、太字や前置きのような飾りにあります。yomiyasuは意味を変えずにそこを直し、分からないことは書き手に返してきます。

社外に出すメールや提案書でAIの下書きを使っている会社なら、まず1本、手元の文面を通してみてください。入れる時間が取れない場合でも、2章の表を見ながら自分の下書きを読み返すだけで、直す場所は見つかります。

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