はじめに

Claudeで作った業務のスキルを、ChatGPTやMicrosoft 365 Copilotを使う部署にも配れないか、と考えたことはないでしょうか。社内で使うAIが部署ごとに違うと、同じ手順を道具の数だけ作り直すことになります。

2026年10月22日、Anthropicは、スキルの書き方の共通規格「Agent Skills」を、特定の会社に属さない団体へ寄贈しました。本記事では、Agent Skillsとは何か、どの道具でもう使えるのか、Claudeのスキルを移すと何がそのまま動き、何が動かないのかを解説します。スマートエイトは、自社の業務もClaudeのスキルで回しています。

結論を先に書きます。スキルの名前・説明・手順の本文は共通なので、ChatGPTでもMicrosoft 365 CopilotでもGeminiでも、ファイルを上げれば読み込めます。

止まりやすいのは、Claudeの開発者向けの道具だけが読む項目と、スキルに付けたプログラムです。ほかの道具へ配るスキルは共通の項目だけで書き、正本を1か所に置いて道具ごとに配ります。

本記事は2026年10月28日時点の公式情報をもとにしています。ChatGPTのスキルは、Business・Enterprise・Healthcare・Eduの契約で使えます。Microsoft 365 Copilotのスキルは、会社のアカウントではMicrosoft 365 Copilotのライセンスが前提です。

Agent Skillsとは|スキルの書き方が各社共通の規格になった

Agent Skillsは、AIに業務の手順を渡すための、ファイルの書き方の決まりです。もとはAnthropicがClaudeのために作った書き方で、今は各社のAIが同じ書き方を読みます。

Agent Skillsのスキルの形を示す図。1つのフォルダの中に、名前と説明と手順を書いた手順書のSKILL.mdがあり、見本やプログラムを一緒に入れられる。AIはふだん名前と説明だけを読み、頼まれた仕事が説明に合うと手順を読み、必要なときだけ見本やプログラムを開く

Agent Skillsは、何を決めた規格なのか

決めているのは、スキルをどんな形のフォルダに入れるかです。スキルは1つのフォルダで、中に*SKILL.mdという手順書を必ず1つ置きます。手順書の先頭に名前と説明を書き、その下に作業の手順を書きます。

例えば、営業会議の議事録を社内の型にまとめるスキルなら、手順書は次のようになります。

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name: minutes-format
description: 会議の文字起こしやメモを、社内の議事録の型(決まったこと・宿題・次回の予定)にまとめる。議事録の作成や会議メモの整理を頼まれたときに使う。
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# 議事録の型

1. 決まったことを、1件1行で書く
2. 宿題は「何を・誰が・いつまでに」をそろえて書く。担当か期限が出ていない宿題は「担当未定」「期限未定」と書く
3. 次回の会議の日時が出ていれば書く。出ていなければ書かない
4. 会議で出ていない内容は足さない

AIは、ふだんは名前と説明だけを読んでおき、頼まれた仕事が説明に合ったときに手順の本文を読みます。必要なときだけ読み込む作りなので、スキルを何十本入れておいても、AIが一度に読む量はほとんど増えません。手順書のほかに、型の見本や計算のプログラムを同じフォルダに入れることもできます。

10月22日の寄贈で、何が変わったのか

変わったのは、規格を決める主体です。Anthropicは2026年10月22日、Agent Skillsを*AAIFへ寄贈しました。規格そのものに加え、名前とロゴ、規格を置いている場所、公式サイトの住所もまとめて渡しています。

これからは、Anthropic・Google・OpenAIなどのエンジニアが、会社の代表ではなく個人の立場で規格を保守します。

AAIFは同じ日に、Agent Skillsを含む4つのプロジェクトの受け入れを発表しました。ほかの3つは、OpenAIなどから寄贈された物です。1社が書き方を決める形から、各社で決める形に変わったことになります。

Anthropic自身の集計では、2025年12月の規格の公開から、70を超えるAIの道具が対応しました。公開されたスキルは100万件、インストールは延べ約2億8,000万回に達しています。

*SKILL.md:スキルの手順書になるファイル。先頭に名前と説明を書き、その下に作業の手順を書く。中身はふつうの文章でよい。 *AAIF:AIエージェントの共通規格を預かる団体。オープンソースを支えるLinux Foundationの傘下にあり、2025年にAnthropicやOpenAIが立ち上げた。

Agent Skillsはどこで使えるか|ChatGPT・Copilot・Geminiの対応状況

共通の規格に沿ったスキルは、ChatGPT・Microsoft 365 Copilot・Geminiでも、ファイルを上げれば使えます。ただし、使える契約と、管理者が有効にする手順は道具ごとに違います。

道具

スキルの入れ方

使う条件

Claude

フォルダをZIPにまとめて上げる

Free・Pro・Max・Team・Enterprise。プログラムを動かす設定をオンにする

ChatGPT

ファイルを上げる。会話で作らせる

Business・Enterprise・Healthcare・Edu。使えるかは管理者の設定で決まる

Microsoft 365 Copilotの*Cowork

ファイルを上げる。OneDriveの決まったフォルダに置く

会社のアカウントとMicrosoft 365 Copilotのライセンス

Geminiアプリ

ファイルを上げる

有料の契約がなくても使える

GitHub Copilot・VS Code・Cursor

作業フォルダにあるClaudeのスキルをそのまま読む

作業フォルダの中に置く

ChatGPTとMicrosoft 365 Copilotでは、どう使うのか

ChatGPTのスキルは、Business・Enterprise・Healthcare・Eduの契約で使えます。画面でChatGPTに作らせるほか、ほかの道具で作ったスキルのファイルを上げることもできます。

会社で契約したChatGPTでは、スキルを使えるかどうかを管理者の設定で決めるため、試す前に管理者に設定を確かめてもらいます。

Microsoft 365 Copilotでは、Coworkの画面からスキルのファイルを取り込めます。手順書1つか、手順書を一番上に置いたZIPを選ぶと、Coworkが中身を確かめてOneDriveに保存します。

Coworkは、会社のアカウント向けに一般提供されています。使うには、Microsoft 365 Copilotのライセンスと、使った量に応じた課金が有効になっていることが前提です。

自分で作れるスキルは50本までで、スマートフォンのアプリでは自分で作ったスキルを使えません。

Geminiと開発の道具では、どう使うのか

Geminiアプリでも、スキルのファイルを上げて使えます。名前は英小文字とハイフンで書く決まりで、インターネットにつなぐプログラムは動きません。

会社のアカウントで使える範囲と作り方は、Geminiスキルの使い方で解説しています。

社内にエンジニアがいる会社では、GitHub Copilot・VS Code・Cursorも対象に入ります。この3つは、作業フォルダの中にあるClaudeのスキルの置き場をそのまま読みます。Claude用に作ったスキルを、置き直さずに使えます。

まだ決まっていないことは何か

規格そのものは、これから育てる段階にあります。Anthropicは、版の番号を付けた公開、変更を提案する正式な手順、スキルを書く人と入れる人に向けた安全の手引きを、これからの計画として挙げています。

もう1つ、スキルは道具をまたいで自動では同期しません。ChatGPTで直したスキルが、Coworkに入れた同じスキルに反映されることはないので、直したら入れた道具ごとに上げ直します。

*Cowork:Microsoft 365 Copilotの中で、メールの送信や資料づくりを代わりに進める機能。送信などの操作の前には、そのつど承認を求める。

Claudeのスキルを移すと何が動くか|そのまま動く物と動かない物

ほかの道具に移しても、名前・説明・手順の本文はそのまま動きます。止まりやすいのは、Claude専用の項目と、スキルに付けたプログラムです。

Claudeのスキルをほかの道具へ移したときの図。名前・説明・手順の本文はそのまま動き、Claude Code専用の項目と付けたプログラムは移す先で確かめる

そのまま動くのは、どこまでか

共通の規格に入っている項目は、名前と説明の2つが必須で、ほかに任意の項目が4つあるだけです。名前は英小文字・数字・ハイフンで64字まで書き、フォルダの名前とそろえます。

説明は1,024字まで書け、日本語でかまいません。手順の本文には書き方の決まりがないので、日本語の文章で書いた手順は、そのまま各社のAIに渡ります。

1章の議事録のスキルは、この共通の項目だけで書いてあります。ファイルを上げれば、ChatGPTでもCoworkでも、同じ手順書として読み込めます。

Claude Code専用の書き方は、ほかでも効くのか

共通の規格の外にある項目なので、ほかの道具で同じように動く前提では配りません。*Claude Codeは共通の規格に、自動で呼ばせない指定や、作業を終えたときなどに点検を走らせる仕組みといった項目を足しています。

同じClaudeでも、ブラウザ版やAPIに上げると、足した項目があるだけで取り込みが止まります。

スマートエイトが業務で使う138本を調べると、107本は共通の項目だけで書かれていて、項目の上ではそのまま移せる形でした。作業を終えたときに点検を走らせる項目を使っていたのは、請求書・見積書・契約書の作成や記事の入稿のように、間違いが許されない業務のスキル15本です。移すときに手当てが要るスキルは、本数は少なくても、会社にとっていちばん大事な物に当たります。

例えば請求書のスキルでは、金額の書き方・発行日・敬称・合計の検算を、作り終えるたびに点検させています。このスキルをほかの道具へ移すと、手順は動いても、点検は消えるか、動き方が変わります。そこで移す前に、点検の中身を手順の本文の最後に書き写しておきます。

付けたプログラムは、どこでも動くのか

道具によっては動きません。Geminiアプリはインターネットにつなぐプログラムを動かさず、WordやExcelのファイルもスキルに同梱できない作りです。Claudeのブラウザ版やアプリでは、プログラムを動かす設定をオンにしないと、スキルそのものが使えません。

プログラムを付けたスキルは、移す先の道具で一度動かしてから配ります。計算や書き換えをプログラムに任せている所は、動かなかったときに人が確かめる手順も、本文に書いておきます。

*Claude Code:Claudeを自分のパソコンのフォルダで動かす道具。ファイルの読み書きやプログラムの実行まで任せられ、スキルもフォルダに置いて使う。

会社でスキルを配る前に何を決めるか|複数のAIで使うときの3つ

道具が増えるほど、同じスキルの写しが社内に散らばります。配る前に、正本の置き場、作る人と配る人、外から入れるスキルの扱いの3つを決めておきます。

スキルの正本は道具の外の共有フォルダに1つだけ置き、直すたびに版の番号を上げ、Claude・ChatGPT・Microsoft 365 Copilotへは写しを上げる図

正本はどこに置けばいいのか

正本は、道具の外の共有フォルダに1つだけ置きます。各道具に入れたスキルは、そこからの写しとして扱います。スキルは道具をまたいで同期しないため、どれが最新かを決めておかないと、部署ごとに手順がずれていきます。

手順書の任意の項目には、作った人や版の番号を書く欄があります。直すたびに版の番号を上げ、正本から各道具へ上げ直します。Geminiアプリは、ファイルを1つ直すときもスキルを丸ごと上げ直す作りです。

Claudeの中だけは例外で、アカウントで有効にしたスキルがClaude Codeへ一方向に届きます。それ以外の道具へは、人が上げ直します。

誰が作り、誰が配るのか

作る人と、全社に配る人を分けます。作る人には、ふだんその業務をしている社員が向いています。手順の抜けや、例外のときにどうするかを知っているのは、その業務をしている人だからです。

全社に配る役は、道具の管理者が担います。ClaudeのTeamとEnterpriseでは、組織のオーナーが全員のスキルの一覧にスキルを配れます。配られたスキルは社員の一覧に印付きで並び、社員が各自でオンとオフを切り替えます。

ChatGPTのEnterpriseとEduでは、管理者が、スキルを作れる人、ほかの人と共有できる人、ほかの人の代わりに入れられる人を、役割ごとに分けられます。Coworkは、作ったスキルを共有する相手を、社内の人の中から選ぶ作りです。

配ったスキルの効果は、使った人数ではなく、そのスキルで片付いた件数で数えます。数え方に迷う場合は、生成AIの費用対効果を測る4つの問いが参考になります。

外から入れるスキルは、どう扱えばいいのか

中身を読んでから入れます。スキルはAIへの指示として動くため、Microsoftも、信頼できる出どころの物だけを上げるよう呼びかけています。

入れる前に、手順の本文と同梱のプログラムを1回読み、何を読み書きするかを確かめます。Claude Codeには、スキルを読み込むときにコマンドを走らせる書き方を、管理者がまとめて止める設定もあります。

公開されているスキルの選び方は、ビジネスで使えるClaude Skillsおすすめ12選で、中身の読み方とあわせて解説しています。

よくある質問|Agent Skillsで迷いやすい点

スキルを使うのに、追加の料金はかかりますか?

ClaudeとGeminiアプリは、無料の契約でもスキルを使えます。ChatGPTは、スキルそのものはクレジットを減らさないと案内しています。Microsoft 365 CopilotのCoworkは、ライセンスと、使った量に応じた課金が前提です。

Claude Codeのスキルを、まとめてChatGPTへ移せますか?

ChatGPTのデスクトップアプリなら移せます。設定の「インポート」でClaude CodeかCursorを選ぶと、スキルや指示のファイルをまとめて取り込めます。取り込んでも、元のClaude Codeの設定は変わりません。

取り込んだ後は、3章で挙げたClaude Code専用の項目と、付けたプログラムが動くかを確かめます。外のサービスにつなぐ設定は、取り込んだ後にもう一度サインインが要る場合があります。

Agent SkillsとMCPは、何が違いますか?

*MCPは、AIを外のサービスやデータにつなぐための共通規格です。Agent Skillsは、つないだ道具を使って仕事をどう進めるかの手順を渡す規格で、役割が違います。

OpenAIは、スキルと、外のサービスにつなぐ仕組みを1つにまとめた物をプラグインと呼んでいます。手順はスキルで、つなぎ先はMCPで、と分けて考えると整理しやすくなります。

*MCP:AIを外のサービスやデータにつなぐための共通規格。Anthropicが作り、AAIFの立ち上げのときに寄贈した。

さいごに

本記事では、Agent Skillsとは何か、どの道具で今使えるか、Claudeのスキルを移すと何が動き何が動かないかを解説しました。名前・説明・手順の本文は共通なので、ChatGPTやMicrosoft 365 Copilotにもそのまま持ち込めます。Claude Code専用の項目と付けたプログラムは、移す先で一度動かして確かめます。

社内で使うAIが部署ごとに違う会社ほど、共通の書き方で手順をそろえる効き目は大きくなります。最初の一歩は、よく使うスキルを1本選び、共通の項目だけで書き直して、正本の置き場を決めることです。

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