はじめに

毎月、別のファイルやPDFから同じ項目をエクセルに写す作業に、まとまった時間を取られていないでしょうか。マクロを探してみたものの、元の書類の形がその都度違って使えなかった、という声もよく聞きます。

本記事では、エクセルの転記を自動化する方法を、転記元の形ごとに4つの手段で整理して解説します。スマートエイトが商談で聞いた手作業の集計と、商談で伺った転記の中身をもとにしています。

結論として、転記元がエクセルやCSVのように形の決まったファイルなら関数・Power Query・マクロで、PDFやメールのように形が揺れる書類ならAIで読み取るのが向いています。両方が混ざる業務は、読み取りと書き込みを別の工程に分けると止まりにくくなります。

本記事の機能の説明は、2026年10月18日時点のMicrosoftの公式情報をもとにしています。

エクセルの転記を自動化する前に|商談で約2割の会社が挙げた手作業

スマートエイトが商談で聞いた困りごとを、人がしている作業の種類ごとに数え直すと、転記と入力は約2割の会社が手作業として挙げていました。資料づくりや候補の選定と並んで、多く挙がる作業です。

転記元の形で自動化の手段を選ぶ図。エクセルやCSVのように形の決まったファイルは関数・Power Query・マクロへ、PDF・紙・メールの本文のように形が揺れる書類はAIの読み取りへ分かれることを示している

約2割の会社が、転記と入力を手作業として挙げた

ここでいう転記と入力は、紙・PDF・FAX・メール・別のシステムにある情報を、人がエクセルや別のシステムへ打ち込んだり写したりする作業です。商談の記録を作業の種類で分けて数えると、約2割の会社がこの作業を挙げていました。

挙がった例には、Webフォームから届いた申し込みを顧客管理のソフトへ手で入れる作業や、自社の求人情報を外部のサービスの画面へ1件ずつ登録する作業がありました。どれも元の情報はすでに別の場所にあり、人が写しているだけという点が共通しています。

1件10分でも、月では大きな時間になる

1件あたりの時間で答えた会社では、真ん中の値が10分でした。月の時間を数字で答えた会社では、真ん中の値が23時間です。

1件の作業は短くても、毎日の件数を掛けると、月の時間はすぐに大きくなります。転記の自動化を検討するときは、1件の時間より、月に何件あるかを先に数えるほうが判断を誤りません。

転記元の形で、手段が決まる

自動化の手段を選ぶ前に、転記元がどんな形かを見ます。エクセルやCSVのように列の並びが毎回同じファイルか、PDF・紙・メールの本文のように書類ごとに形が揺れるものかで、向く手段が変わります。

たとえば、社内のシステムから毎月同じ形で書き出す売上のCSVは前者で、取引先ごとに書式が違う注文書のPDFは後者です。1つの業務に両方が混ざっていることも多いので、転記元を1つずつ書き出して分けておきます。

エクセルの転記を自動化する4つの手段|関数・Power Query・マクロ・AI

転記の自動化には、大きく4つの手段があります。どれが優れているかではなく、転記元の形と、毎月の件数で選びます。

関数とPower Queryは、形の決まったファイルどうしに

別のシートやブックの表から値を引いてくるだけなら、*XLOOKUPのような関数で足ります。会社名や商品コードを手がかりに、もう1つの表の同じ行から値を持ってこられます。

毎月同じ形で届くCSVを取り込んで整えるなら、*Power Queryに整える手順を記録させます。記録した手順は、更新するたびに自動で流れるので、次の月からは新しいファイルに差し替えて更新するだけで済みます。

マクロは、決まった位置から決まった位置へ

転記元の表から決まった列を選び、別のブックの決まった位置へ書き込む、といった手順の決まった作業はマクロが得意です。毎月の操作を、1回のボタンで済ませられます。

一方で、列が1つ増えたり、シートの名前が変わったりすると、マクロは決まった位置を見失い、エラーで止まるか、別の列の値を写してしまいます。取引先ごとに様式が違う書類を、マクロだけで受けようとしないほうが安全です。

画面をまたぐ転記はRPA、形が揺れる書類はAI

メールの添付を開いて社内のシステムの画面に打ち込むような、アプリをまたぐ転記には、人の画面の操作を代わりに行うRPAという自動化ツールが使われます。

PDFや紙の書類、メールの本文のように、書類ごとに項目の位置が違う転記元は、AIに読み取らせる手段が向いています。書類の中から日付・品名・数量のような項目を探して抜き出す作業は、決まった位置を前提にするマクロより、AIのほうが得意です。

手段

向く転記元

苦手なこと

関数・Power Query

形の決まったエクセル・CSV

書類ごとに形が違う転記元

マクロ

毎回同じ様式のブック

列の追加やシート名の変更

RPA

アプリの画面をまたぐ作業

画面の変更と想定外の例外

AI

PDF・紙・メールの本文

読み取りの誤りがゼロにはならない

*XLOOKUP:表の中から一致する行を探し、同じ行の別の列の値を返すExcelの関数。照合や転記によく使う。 *Power Query:外部のファイルを取り込み、列の削除や並べ替えなどの整える手順を記録して、くり返し実行できるExcelの機能。

商談で聞いた転記の中身|PDF・FAX・管理画面から写す3つの型

商談で挙がった転記を、何から写しているかで分けると、PDFや紙の書類、FAXや電話のメモ、システムの管理画面やCSVの3つの型に分かれます。型が分かれば、2章のどの手段を当てるかもほぼ決まります。

商談で聞いた転記の3つの型の図。PDFや紙の書類から写す型はAIで読み取り、FAXや電話のメモから写す型は読み取りをAIに任せて人は照合に回り、管理画面やCSVから写す型は関数・Power Query・マクロで書き込むことを示している

PDFや紙の書類から写す型は、AIで読み取る

客先から届いたPDFの書類を、指定の様式のエクセルやWordに作り直す作業が、月の業務の半分ほどを占めていたシステム開発会社がありました。建材メーカーからは、顧客のPDFの数値を人が写して、設計のソフトに入れていると伺っています。

PDFを表に変えるソフトを以前に試したものの、文字化けや読み取りの崩れで続かなかった、という声も複数ありました。書類ごとに形が違う転記元は、項目の意味から探して抜き出せるAIのほうが向いています。

AIに読み取らせるときは、書き込む先の様式を一緒に渡し、数え方などの決まりを言葉で書いておきます。一覧を出させた後に、元の書類と照らして抜けがないかをAIにもう一度確かめさせると、取りこぼしが減ります。

FAXや電話のメモから写す型は、人を照合に回す

FAXで返ってくる数量をエクセルに打ち込み、それを基幹システムへ取り込んでいる卸・小売の会社がありました。福祉の事業者からは、電話の内容を紙に書き、システムへ写し、別の人がダブルチェックしていると伺っています。

この型は、写す人と確かめる人の2人分の時間がかかっている点が特徴です。FAXや紙のメモをスキャンしてAIに読み取らせ、人は読み取りの結果を元の紙と照らす役に回ると、2人分の手間を1人分に近づけられます。

管理画面やCSVから写す型は、AIを使わずに決まった仕組みで

広告代理店からは、管理画面からCSVを落としてシートへ手で写す作業や、請求のために管理画面の金額をくり返しコピーする作業が挙がりました。放送枠の情報を表に手で打ち込み、数人がかりの読み合わせで確かめている会社もありました。

この型の転記元は、毎回同じ形で出てきます。AIに読ませるより、関数やPower Queryで取り込み、決まった位置への書き込みはマクロに任せるほうが、毎月同じ結果になります。

転記の自動化を社内で作るか、開発を頼むか|決める前に測ること

手段が決まったら、社内で作るか、外に開発を頼むかを決めます。分かれ目は、転記元の様式の数と、止まったときに直せる人がいるかどうかです。

転記の自動化を社内で作るか開発を頼むかを分ける図。転記元と書き込み先が1つずつなら社内で作り、様式が取引先ごとに違って書き込み先も複数あるなら、読み取りと書き込みをつないだ仕組みとして開発を頼むことを示している

社内で作れるのは、転記元と書き込み先が1つずつの場合

転記元が1種類で、書き込み先のブックも1つなら、関数やマクロ、AIへの指示を社内で作って回せます。止まったときに直すのも、作った担当者自身です。社内で作る場合も、転記元・書き込み先・数え方の決まりを1枚に書き残しておくと、担当が替わったときに引き継げます。

開発を頼むのは、様式の数と関わる人が増えた場合

取引先ごとに書類の様式が違い、書き込み先のシステムも複数あるなら、読み取りと書き込みをつないだ仕組みとして作るほうが、担当者が替わっても止まりません。抜き出しと書き込みを別の工程にしておけば、様式が増えたときに直す場所が抜き出しの側だけで済みます。

1件の時間と月の件数を先に測る

どちらにするかを決める前に、転記1件にかかる時間と、月の件数を測っておきます。測った時間を投資の判断にどうつなぐかは、生成AIの費用対効果を測る4つの問いで整理しています。

よくある質問|エクセルの転記の自動化でつまずく点

別のブックへの転記は、関数だけでできますか?

転記元の列の並びが毎回同じなら、XLOOKUPなどの関数で足ります。毎月ファイルが入れ替わる場合は、Power Queryに取り込みの手順を記録しておくほうが手間が減ります。

手書きの紙も、AIで転記できますか?

写真やスキャンからでも読み取れますが、字の癖や書式によって誤りが出やすくなります。まず数枚で試し、読み取れた項目と読み取れなかった項目を分けてから、任せる範囲を決めます。紙の書類をAIに渡す前の条件は、ChatGPTの書類スキャンの使い方にまとめています。

マクロが急に動かなくなるのはなぜですか?

まず、転記元のファイルのシートの名前や列の並びが、マクロを作ったときから変わっていないかを確かめます。止まった行と、変わった様式をAIに見せると、直す場所を一緒に探してもらえます。

AIに任せれば、転記の誤りはゼロになりますか?

なりません。人の転記と同じく誤りは起きる前提で、合計の件数や金額を元の書類と照らす工程を残します。照らす場所を1か所に決めておくと、毎回の確認が短く済みます。

さいごに

本記事では、エクセルの転記を自動化する方法を、転記元の形で4つの手段を選び分ける考え方とあわせて解説しました。形の決まったファイルは関数・Power Query・マクロに、PDFや紙のように形が揺れる書類はAIに任せ、合計の照合は人に残すのが要点です。

「マクロを作ったが、様式が変わるたびに止まる」という場合は、まず転記元の形と月の件数を書き出してみてください。スマートエイトは、読み取りと書き込みをつないだ社内ツールの開発と、社員が自分で転記の手順を組めるようになる生成AI研修の両方を支援しています。

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