はじめに
ChatGPTのプロンプトテンプレートをコピーして使ってみたものの、返ってきた文章が「どこかで見た一般論」だった経験はないでしょうか。テンプレートの欄が何のためにあるかを知らないまま使うと、欠けた欄の分だけ返答が崩れます。
本記事では、スマートエイトが生成AI研修で使っているプロンプトテクニック集16種をもとに、ChatGPTで使えるテンプレートを解説します。要素が1つ欠けた時に何が返ってくるかをBefore/Afterで示し、事実を扱う仕事に足す3つの対策と、型をChatGPTのどこに保存するかまで扱います。
結論を先に書きます。テンプレートは、毎回すべての欄を埋めるための物ではありません。返答が崩れた時に「どの要素が欠けていたか」を見つけて1行足す道具として使い、毎回同じになる欄はプロジェクトに保存しておくと、依頼文は短いまま返答が安定します。
本記事は2026年10月18日時点のOpenAIの公式ヘルプをもとにしています。例に出す会社名・料金・社内規程はすべて架空です。保存先の機能は、プランによって使える範囲や上限が違います。
ChatGPTのプロンプトテンプレートは5要素で見る|欠けた要素ごとのBefore/After
研修で教えるテンプレートの骨格は、役割・タスク・コンテキスト*・出力形式・制約の5要素です。この章では、取引先に新しい料金プランを案内するメールを通しの例にして、要素が欠けた時に返ってくる物を順に見ます。

1行の依頼では何が返ってくるか
まず「取引先に新しい料金プランの案内メールを書いてください」と1行だけで頼んだ場合を考えます。ChatGPTは、どの業界の誰に送るメールなのかを知らないまま書き始めます。
返ってくるのは、どの会社にも送れる丁寧な定型文です。料金や開始日は、もっともらしい値で埋められることがあります。
この1行に足りないのは、文章の上手さではありません。ChatGPTが判断に使う材料です。研修では、足りない材料の種類ごとに返答の崩れ方が決まっている、と教えています。
要素が1つ欠けると、返答はどう崩れるか
欠けた要素と、返ってきやすい物、足す1行の例を並べると次のとおりです。返答を読んで崩れ方が分かれば、どの欄を足せばよいかも決まります。
欠けた要素 | 返ってきやすい物 | 足す1行の例 |
|---|---|---|
役割 | 誰の視点でもない一般論 | あなたは法人営業の担当者です。既存の取引先との長い付き合いを大事にしています |
コンテキスト | 足りない事実を推測で埋めた文 | 読み手は導入3年目の取引先の総務担当です。料金表を下に貼ります |
出力形式 | 長い説明文だけ | 件名を1つ、本文を400字前後で。変更点は箇条書き3つにしてください |
制約 | 誇張やNG表現が混ざった文 | 料金表にない数字は書かないでください。不明な点は「要確認」と書いてください |
タスクは依頼の本体なので、欠けることはほとんどありません。ただし「料金プランについて」で止めると何を作るかがぼやけるため、「書いてください」「3案出してください」のように動詞で言い切ります。
崩れ方から逆算して1行ずつ足す
使い方のコツは、最初から5要素を全部埋めようとしないことです。1行で頼み、返答が一般論なら役割を、数字が怪しければコンテキストと制約を足します。
研修で効果が出やすいのは、役割と制約から足す順番です。制約に「不明な点は要確認と書く」を入れておくと、ChatGPTが埋めた箇所と、資料にあった箇所を人が見分けられます。
*コンテキスト:AIに渡す前提の情報。読み手・背景・参考資料の3つを指し、渡さないとAIが足りない事実を推測で埋める。
ChatGPTのプロンプト例|事実を扱う仕事に足す3つの対策
5要素がそろっていても、ChatGPTは資料にない事実をもっともらしく書くことがあります。テクニック集では、この対策をハルシネーション*対策として3つに分けています。

出典要求と推測の分離:根拠のない文を混ぜない
取引先に送る案内文のように、間違いが許されない文章では、文ごとに根拠を付けさせます。見込みや解釈を書いた文には、事実と分けるための印を付けさせます。
次の料金表【だけ】をもとに、取引先向けの案内文を書いてください。
- 各文の文末に(根拠:料金表の項目名)を付ける
- 料金表に根拠のない文は書かない
- 見込みや解釈を書くときは、文頭に「(推測)」と付ける確かめる場所は2つあります。文末の根拠が料金表の項目名と合っているかと、推測の印が付いた文を残すか消すかです。印のある文は、送る前に人が判断します。
根拠の限定と逃げ道:「記載なし」と答えてよいと伝える
社内の規程を貼って質問に答えさせるときは、根拠をその規程だけに絞ります。あわせて、書いていないことは「記載なし」と答えてよいと伝えます。
【経費精算規程を貼り付け】
この規程だけを根拠に、質問に答えてください。
- 規程に書かれていないことは「記載なし」と答える
- 記憶や一般論で補わない
質問1:取引先との会食は、1人あたりいくらまで精算できますか?
質問2:タクシー代は、何時以降なら使えますか?逃げ道がないと、ChatGPTは答えを作ろうとします。「記載なし」と返った質問は、規程の抜けとして総務に回すと、次の改定で埋められます。
決めつけない:結論を質問に埋め込まない
AIは、質問した人の意見に合わせて答えやすい性質があります。結論を質問に埋め込むと、その結論を支える理由ばかりが返ってきます。
【NG例】
値上げの案内は、早めに出すほど取引先は離れませんよね?理由を5つ挙げてください。
【OK例】
値上げの案内を出す時期が取引先の継続に与える影響を、早く出す利点と、
早すぎる場合の欠点の両方で整理してください。
件数はそろえず、確かなものだけを挙げてください。確かめる場所は、自分の考えと逆の根拠が出ているかです。件数を指定しないのは、数を埋めるために弱い理由まで並べさせないためです。
*ハルシネーション:AIが事実と違う内容を、もっともらしく書いてしまうこと。資料を渡しても起きるため、確かめる手順とセットで防ぐ。
ChatGPTでテンプレートを保存する場所|カスタム指示とプロジェクトの使い分け
型を毎回貼り付けるのは手間です。ChatGPTには同じ指示を書かずに済む置き場所が2つあり、5要素を「毎回同じ欄」と「毎回変わる欄」に分けて入れると使いやすくなります。

全部のチャットに効かせる欄はカスタム指示へ
カスタム指示*は、設定の[パーソナライズ]から書き、すべてのチャットにすぐ適用されます。保存できる字数は、Free・Goが1,500字、Plus以上のプランが5,000字までです。
ここには、業務を問わず守らせたい制約だけを書きます。たとえば「不明な点は要確認と書く」「根拠を示せない誇張表現を使わない」「です・ます調で書く」の3行です。業務ごとの役割まで書くと、別の仕事のチャットでもその役割が効いてしまいます。
業務ごとの役割と出力形式はプロジェクトの指示へ
プロジェクト*を作ると、チャット・ファイル・指示を1か所にまとめられます。プロジェクトの指示はそのプロジェクトの中だけで効き、カスタム指示より優先されます。
「取引先への案内メール」のプロジェクトを作り、役割・出力形式・業務の制約を指示に、料金表をファイルに入れておきます。こうすると毎回の依頼文は、何を書くかのタスクと、今回の相手や事情を伝えるコンテキストの2つで済みます。
注意が要るのは、カスタム指示がプロジェクトの中まで届かない場合があることです。共有したプロジェクトでは、メンバーそれぞれのカスタム指示は使われません。EnterpriseとEduでは、共有していないプロジェクトでも、効くのはプロジェクトの指示だけです。カスタム指示に書いた共通の制約は、プロジェクトの指示の側にも書いておきます。
*カスタム指示:ChatGPTに常に考慮してほしいことを、設定に保存しておく機能。保存した内容はすべてのチャットに効く。 *プロジェクト:関連するチャット・ファイル・指示をまとめて管理する機能。同じ前提で続ける仕事を1か所に集められる。
ChatGPTのプロンプトまとめ|16種のテクニックを使う順に並べる
ここまでの5要素とハルシネーション対策は、テクニック集の16種の一部です。この章では16種の全体を、使う順番に並べ直します。

16種は4つのまとまりに分かれる
テクニック集の16種は、次の4つのまとまりに分かれます。
- 共通の作法の1種:マークダウン記法*で、見出しと箇条書きに分けて書く
- 基本の5要素の6種:役割・タスク・コンテキスト・出力形式・制約と、それをまとめた総合テンプレート
- 応用の6技:例示・逆質問・計画→実行・自己批判→改善・失敗仮説・生成とレビューを分ける
- ハルシネーション対策の3種:2章の出典要求と推測の分離、根拠の限定と逃げ道、決めつけない聞き方
使う順番は、まず基本の5要素をそろえ、慣れたら応用の6技から1つ足します。事実を扱う場面では、ハルシネーション対策を重ねて使います。
応用の6技は、足りない時に1つだけ足す
応用の6技は、毎回全部を使う物ではありません。最初に足すなら、書かせる前に足りない情報をChatGPTに質問させる逆質問が使いやすい技です。6つの技の演習のしかたは、Geminiのプロンプトテンプレートを研修の演習7本で解説した記事にまとめています。
ChatGPTで「生成とレビューを分ける」技を使うときは、点検する場所に気を付けます。プロジェクトの中のチャットは、同じプロジェクトのほかの会話を参照することがあり、プランとメモリの設定によっては、プロジェクトの外のチャットからも参照されます。書いた時の会話に引きずられない点検にしたいなら、一時チャットを「パーソナライズなし」で開き、下書きを貼って点検させます。
テンプレートの効き目は「そのまま送れた通数」で測る
テンプレートを作り込む時間が回収できているかは、生成AIの費用対効果を測る4つの問いで確かめられます。案内メールなら、型を入れる前と後で、ChatGPTの下書きを手直しせずに送れた通数を比べるのが分かりやすい測り方です。
数えていると、手直しが要った下書きの共通点も見えてきます。毎回同じ箇所を直しているなら、その直しをプロジェクトの指示の制約に1行足してください。
*マークダウン記法:「#」で見出し、「-」で箇条書きを表す書き方。指示のまとまりが区切られ、AIが読み落としにくくなる。
よくある質問|ChatGPTのプロンプト例とテンプレートについて
コピペしたプロンプト例がうまく動かないのはなぜですか?
多くの場合、自社の事実を伝えるコンテキストと、業界の決まりを伝える制約が入っていないためです。コピペした例は、その2つの欄が空のままになっています。1章の表で返答の崩れ方を見て、足りない欄に1行ずつ足してください。
GPTsに保存したテンプレートはどうなりますか?
カスタムGPT*は、2026年12月11日に提供終了の予定です。移し先としてはプラグイン*が案内されています。個人のアカウントでは新しいGPTを作れないため、個人や小さなチームで使っている型は、3章のプロジェクトに移すのが手早い方法です。
会社の情報を入れると、学習に使われますか?
プランによって扱いが違います。BusinessとEnterpriseとEduでは、入力と出力は既定でモデルの改善に使われません。個人のプランでは使われることがあり、設定の[データ管理]にある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすれば外せます。
*カスタムGPT:指示とファイルを保存して作る、用途別のChatGPT。GPTsとも呼ばれ、2026年12月に提供終了の予定。 *プラグイン:ChatGPTに、再利用できる指示や参照ファイル、接続するアプリをまとめて足す仕組み。カスタムGPTの移し先として案内されている。
さいごに
本記事では、スマートエイトのプロンプトテクニック集16種をもとに、ChatGPTのプロンプトテンプレートを欠けた要素から直す方法を解説しました。返答の崩れ方から欠けた要素を見つけ、毎回同じ欄はカスタム指示とプロジェクトに保存すると、依頼文を短く保てます。
「テンプレートを配ったのに、人によって返答の質がばらつく」という悩みは、どの欄が何を防いでいるかが共有されていないことが原因になりがちです。まずは日々書いているメールを1つ選び、1行で頼んだ返答と、要素を足した返答を並べてみてください。
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