はじめに
銀行やカードの明細を1行ずつ見ながら、この支払いは通信費か、支払手数料か、と迷う時間が積み重なっていないでしょうか。勘定科目の判定をChatGPTに手伝わせたくても、何をどう渡せばよいのか、出てきた答えをどこまで信じてよいのかが分からないままでは、手が出しにくいものです。
本記事では、ChatGPTで経費の勘定科目を判定する手順を、明細の渡し方から仕訳の下書きの形まで解説します。スマートエイトは、自社の2か月分の費用をAIに科目別に分けさせ、その中で迷った行と、費用ではなかった出金を一覧にしました。
結論として、ChatGPTに任せるのは科目の候補と理由、どれだけ確かかの3つです。決めるのは人で、確かさが低い行だけを人が答えるようにすると、全部の行を目で追わずに済みます。
本記事は、スマートエイトが自社の2026年7月・8月の費用で行った作業をもとにしています。科目の最終的な判断は、会社の経理の方針と税理士の確認で決まります。
ChatGPTで経費の勘定科目は判定できる|決めるのは人、候補と理由を出すのがAI

任せられるのは候補・理由・確度の3つ
ChatGPTに明細の摘要と金額を渡すと、その支払いがどの勘定科目に当たりそうかを、理由を添えて答えられます。摘要に「振込手数料」とあれば支払手数料、税理士の事務所の名前があれば支払報酬料、というように、摘要の言葉から判断する仕事はAIの得意な範囲です。
ただし、AIの答えは候補として扱います。同じ摘要でも、会社によって使う科目が違うことがあるからです。そこで、候補と理由に加えて、どれだけ確かかを3段で付けさせます。確かな行は確かめるだけで済み、迷う行だけを人が考える形にできます。
ChatGPTの利用料そのものは何の科目か
ChatGPTの利用料を何の科目にするかで迷う人も多いはずです。勘定科目は1つに決まっているわけではなく、通信費や支払手数料など、事業での使い方に合うものを選びます。選んだ科目は、一度決めたら続けて使うのが原則です。
スマートエイトの会計ソフトでは、ChatGPTを含むAIのツールや、クラウドのサービスの月額を、カードの明細から通信費として扱っていました。こうした月額のサービスが多い会社ほど、科目を先に1つに決めておくと、毎月の判定で迷う行が減ります。
自社の2か月分の費用を科目別に分けた実例|会計ソフトと銀行の明細を突き合わせた

スマートエイトは2026年9月に、7月と8月の費用を科目別に分け直しました。月の費用の合計を、会計ソフトの記帳だけに頼らずにつかみ直すためです。
3つの明細を1行ずつ突き合わせた
使った材料は、会計ソフトのfreee*に入っている記帳と、銀行の明細100行、カードの明細の3つです。銀行の明細の100行は、すべてfreeeの側にも明細として入っていました。そのうえで、出金を1行ずつ見て、どの科目に当たるかを当てていきました。
この作業はAIに任せました。このときはClaude Code*をfreeeにつなぎ、記帳と明細の読み出しだけをさせて、記帳の書き換えや登録は一度もさせていません。明細を渡して候補と確度を返させる手順は、ChatGPTでも同じ形で組めます。
確度を3段で付けた
1行ごとの判定には、確度を3段で付けました。
- 確:摘要から科目が1つに決まる
- 推:同じ種類の過去の仕訳や、振込先の名義から推定した
- 要:確認しないと決まらない
銀行の出金で「要」を付けた行は6行で、紹介料なのか外注費なのか、家賃の支払いが事務所の分なのか社宅の分なのか、といった行です。
「推」の行で確かめたい点や、通販で買った物が消耗品なのか書籍なのかといったカードの行も合わせると、確認が要る点は17件になりました。多くは摘要だけでは決まらず、中身を知っている人に聞くしかありません。
カードの明細は、全部が通信費になっていた
突き合わせて分かったことの1つは、登録済みのカードの明細が、全額通信費に寄せられていたことです。未処理の分の摘要を見ると、AIのツールの月額のほかに、社会保険労務士への報酬、印刷、ノベルティ、通販の消耗品、タクシーの配車アプリ、オンライン講座の受講料が混ざっていました。
カードで払う物の種類が増えると、まとめて1つの科目に入れたくなります。科目を1行ずつ判定するAIの作業は、このまとめ方を見直すきっかけにもなります。
*freee:会社の会計や経費の処理を行うクラウドの会計ソフト。明細の取り込みと記帳ができる。 *Claude Code:Anthropicの、作業を任せる型のAI。手元のファイルや、つないだサービスを読み書きして作業を進める。
ChatGPTに勘定科目を判定させる手順|明細の渡し方と指示の書き方

明細をCSVで書き出して渡す
最初に、会計ソフトや銀行の画面から、明細をCSV*で書き出します。ChatGPTに渡す列は、日付、摘要、金額、入金か出金かの4つで足ります。
渡す前に、個人の名前が入る行は伏せておきます。個人への業務委託の振込や、社員の立替の精算の行には、人の名前がそのまま出るためです。「個人A」のように置き換えておけば、科目の判定には差し支えません。
費用でない出金を先に外す
出金の行がすべて費用とは限りません。自社の明細を分けたときも、次のような出金を費用から外しました。先に外しておかないと、同じ費用を二重に数えることになります。
出金 | 費用か | 理由 |
|---|---|---|
クレジットカードの引き落とし | 費用ではない | 使った月にカードの明細で計上する。引き落としの行も足すと二重になる |
借入金の返済 | 利息だけが費用 | 元金は借りたお金を返しているだけで費用ではない |
源泉所得税の納付 | 費用ではない | 給与から預かった税を納めている |
立て替えた経費の精算 | 費用ではない | 費用は、立て替えたときの明細で計上する |
役員報酬の振り込み | 総額の側で費用 | 振り込むのは手取りで、費用にするのは総額 |
自社のカードは、使った月の翌月14日に銀行から引き落とされていました。6月と7月の利用額が、それぞれ翌月14日の引き落としの額と一致したことで確かめています。
指示の書き方
指示には、自社の勘定科目の一覧を一緒に渡し、その中から選ばせます。一覧に無い科目を作らせないためです。
# 役割
あなたは中小企業の経理の担当者です。
# 渡すもの
・銀行とカードの明細(CSV)
・当社の勘定科目の一覧
# やってほしいこと
出金の1行ずつに、次の4つを付けて表で返してください。
・費用か、費用ではないか
・勘定科目の候補(当社の一覧の中から選ぶ)
・確度:確(摘要から1つに決まる)/推(似た支払いや名義から推定)/要(確認しないと決まらない)
・根拠(摘要のどの言葉から判断したか)
# 守ること
・一覧に無い科目を作らない
・「要」の行には、何が分かれば決まるかを1行で書く最後の1行が、次の章で人が答える一覧の元になります。
*CSV:表のデータを、項目をカンマで区切った文字で書いた形式。会計ソフトや銀行の画面から書き出せることが多い。
仕訳の下書きまで進める|「要」の行と、1つの出金を2行に分ける仕訳

「要」の行だけ人が答える
ChatGPTが「要」と付けた行は、何が分かれば決まるかと一緒に一覧にします。自社の作業では、行ごとに「何が決まらないか」と「決まると何が動くか」を並べました。
たとえば、印刷代とTシャツの制作費は、広告宣伝費か消耗品費かが決まりませんでした。社会保険料の納付は、会社の負担と本人の負担をどう分けるかが決まらないと、月の費用が変わります。こうした行は、中身を知っている人が答えを書き込めば、そのまま次の判定に使えます。
1つの出金を2行に分ける
仕訳の下書きでは、1つの出金を2つの科目に分ける行が出てきます。自社の明細でも、次の2つは1行のままでは仕訳になりませんでした。
- 借入金の返済:元金の分は借入金を減らし、利息の分だけを支払利息にする
- 社会保険料の納付:会社の負担の分は法定福利費、本人の負担の分は給与から差し引いた預り金*にする
元金と利息の内訳は、返済予定表を見れば決まります。ChatGPTに渡すときは、返済予定表の該当の月の行も一緒に渡すと、2行に分けた下書きまで作らせられます。
会計ソフトへの登録は人が行う
下書きができたら、会計ソフトへの登録は人が行います。スマートエイトも、会計ソフトにつないだAIには読み出しだけをさせ、記帳の書き換えはさせていません。AIを会計ソフトにつないで直近の経費を確かめる様子は、YouTubeの実演の動画で公開しています。
判定にかかっていた時間がどれだけ減ったかは、月ごとに測っておくと、続けるかどうかを決めやすくなります。測り方は、生成AIの費用対効果を測る4つの問い|OpenAI CFOの採点表の使い方が参考になります。
*預り金:給与から差し引いて、会社が一時的に預かっているお金。源泉所得税や社会保険料の本人負担の分が入る。
よくある質問|そのまま使えるか・消費税・会計ソフト・領収書
ChatGPTが出した科目を、そのまま記帳してよいですか?
「確」の行でも、登録の前に人が目を通します。摘要が同じでも、その月だけ用途が違う支払いが混ざることがあるためです。「推」の行は過去の仕訳と見比べ、「要」の行は中身を知っている人か税理士に確かめてから記帳します。
消費税の区分も、ChatGPTに判定させられますか?
候補は出させられます。ただ、同じ科目でも、取引先や請求書の内容によって区分が変わることがあります。税の区分は確度を低めに付けさせ、迷う行は税理士に確認してから決めます。
会計ソフトとつながなくても使えますか?
使えます。明細をCSVで書き出して渡す方法なら、会計ソフトとつなぐ設定が無くても今日から始められます。判定の結果を表で受け取り、会計ソフトには人が登録します。
領収書の写真から科目を判定できますか?
写真から中身を読み取らせてから、科目の候補を出させられます。紙の書類をAIに渡す前に確かめておく条件は、ChatGPTの書類スキャンの使い方|紙の業務をAIに渡す前の3つの条件で扱っています。
さいごに
本記事では、ChatGPTで経費の勘定科目を判定する手順を、明細の渡し方から仕訳の下書きまで解説しました。ChatGPTには科目の候補と理由、確度の3つを出させ、費用でない出金は先に外し、「要」の行だけ人が答えます。1つの出金を2行に分ける仕訳も、返済予定表などを一緒に渡せば下書きにできます。
まずは1か月分の明細を書き出し、自社の勘定科目の一覧と一緒に渡すところから始めてください。迷う行が一覧になるだけでも、判定にかかる時間の使い方が変わります。スマートエイトの生成AI研修では、自社の書類や明細を題材に、AIに経理の下書きを任せる手順を組み立てる演習を行っています。
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