はじめに
AIの研修や開発を外に頼むか検討している会社は、まだAIに何も手を付けていない会社だと思っていないでしょうか。支援する側も、まず「AIで何ができるか」の説明から入ることが多いものです。
本記事では、スマートエイトの商談の記録を集計し、商談した会社がAIや業務の自動化にどこまで手を付けていたかをまとめました。スマートエイトは、法人向けの生成AI研修とAIの開発を手がけています。
結論を先に書きます。2026年3月〜10月にスマートエイトと商談した会社の45%は、すでにAIや業務の自動化の道具、外注、研修に手を付けていました。試したがうまく使えていないか、使っても一部の人の調べ物や下書きで止まっていた会社です。
「AIで何ができ、自社のどこに使えるか分からない」と話した会社は27%で、手を付けて止まっていた会社のほうが多くなっています。そう話した会社でも、半数を超える会社が、すでに何かに手を付けていました。
会社の規模で分けても、手を付けて止まっていた会社のほうが多くなっています。最後の章では、試して止まった会社が次にすることを、目的を1つに決めるところから、4つのステップでまとめます。
調査の概要
このレポートは、2026年3月〜10月に、AIの研修・開発・導入支援についてスマートエイトと商談した会社を対象にしています。商談の記録を、会社名を伏せて、相手が話した困りごとの型に分けて集計しました。1社が複数の型を話せばそれぞれに数えるので、割合の合計は100%を超えます。
このレポートの数字や図を引用するときは、「出典:株式会社スマートエイト調べ(2026年3月〜10月の商談の記録)」と書き、このページへのリンクを添えてください。
商談した会社の45%は、すでにAIや業務の自動化に手を付けていた|「何ができるか分からない」は27%
商談で相手が話したAIの困りごとを並べると、「AIで何ができるか分からない」という話より、「手を付けたが止まっている」という話のほうが多く出ました。この章では、2つの割合と、その重なり方を見ます。

外の支援を検討する会社は、まだ何もしていない会社なのか
2026年版の中小企業白書に載った帝国データバンクの調査は、2019年以降に省力化の投資に取り組んだ中小企業のうち、AIの活用には取り組んでいない会社に理由を聞いています。1位は「活用する業務がイメージできていない」で、63.4%でした。調査は2025年11〜12月に行われています。
この数字を見ると、AIの外部の支援を検討するのは、何をすればよいか分からない会社だと考えたくなります。ただ、この調査が理由を聞いたのは、AIの活用に取り組んでいない会社です。
AIの研修や開発について商談した会社が、どの段階にいるのかは、別に数える必要があります。それが、このレポートで数えたことです。
手を付けて止まった会社は45%、何ができるか分からない会社は27%
スマートエイトと商談した会社のうち、AIや業務の自動化の道具、外注、研修に手を付けていて、それが止まっていると話した会社は45%でした。止まり方は2つあります。
1つは、試したがうまく使えていない会社で、23%です。もう1つは、AIを使ってはいるが、一部の人か、調べ物や下書きの使い方で止まっている会社で、28%です。
一方、「AIで何ができ、自社のどこに使えるか分からない」と話した会社は27%でした。2つの止まり方は、1つずつ見ると23%と28%で、27%と大きくは変わりません。
2つの止まり方を両方話した会社は少なく、多くは別々の会社です。そのため、合わせると45%になり、「分からない」と話した会社より多くなります。
「分からない」と話した会社の半数を超える会社も、すでに手を付けていた
「AIで何ができ、自社のどこに使えるか分からない」と話した会社を見ると、その57%は、手を付けて止まった話もしていました。何かを試したか一部で使ったうえで、「何ができ、どこに使えるか分からない」と話していたことになります。

「分からない」と話し、手を付けた話が一度も出なかった会社は、全体の12%でした。この12%に当たる会社が最初の業務を選ぶ手順は、中小企業のAI導入は何から始めるかで整理しています。
試したが、うまく使えていない|道具・外注・自作・研修のどの入れ方でも、止まった話が出た
手を付けて止まった会社のうち、試したがうまく使えていないと話した会社は、全体の23%でした。試した物は、買った道具、外注した開発、自分で作った仕組み、受けた研修とさまざまです。
どの入れ方の会社にも、止まった話がありました。止まった所を並べると、大きく次の4つの形に分かれます。
- 出来が、仕事に使える所まで届かない
- 作った物が使われなくなる、手入れが続かない
- 費用が見合わない
- 外注や研修が1回で終わる
出来が、仕事に使える所まで届かない
1つ目は、入れた道具やAIの出す物が、仕事にそのまま使える出来にならない形です。紙やPDFの文字の読み取り、自社の書式に沿った資料のスライド、業務の流れ図などで、思っていた物に届かなかったという話が出ました。
紙の資料を扱う会社では、PDFの一覧をExcelに移すと文字が崩れる、古い印刷物の段組が読み取れない、という話がありました。出来の物差しは仕事ごとに違います。
作った物が使われなくなる、手入れが続かない
2つ目は、作ったり入れたりした物が、日々の仕事に乗らない形です。自分たちで作った道具の手順が複雑で使われない、試した道具が難しくて途中でやめた、という話がありました。
自分で作ったAIの仕組みが、ちゃんと動いているのか分からないまま、という会社もあります。
費用が見合わない
3つ目は、費用が見合わない形です。毎月まとまった費用をかけてAIの道具を入れたのに、社内で使いこなせていない、という話がありました。
入れる前に効果をどう測るかを決めておくやり方は、生成AIの費用対効果を測る4つの問いにまとめています。
外注や研修が1回で終わる
4つ目は、外注や試しの検証、研修が1回で終わり、仕事につながらない形です。試しの検証を受けたが単発で終わった、外注先から次の提案が出ない、講習やセミナーを受けても実務に落とせなかった、という話です。
講習の後にAIが新しくなり、習った使い方が古くなったという会社もありました。
使ってはいるが、広がらない|一部の人の調べ物と下書きで止まる
手を付けて止まった会社のもう1つの形は、AIを使ってはいるが、社内に広がらない会社です。全体の28%で、試したがうまく使えていない会社より多くなりました。
話の中身は、使う人が一部に限られる形と、使い方が浅い所で止まる形の2つに分かれます。
使うのは、一部の人だけ
よく出たのは、AIを使いこなしているのは自分だけ、または社内の数人だけ、という話です。使う部署と、まったく使わない部署に分かれている会社もありました。
全員に使える環境を用意したのに、実際に使うのは一部の人だけ、という話もありました。有料のアカウントを役職の高い人にだけ配り、ほかの社員は使えていない会社もあります。
会社として契約していないAIを、社員が個人で使っている会社もありました。社員が個人で使い始めたAIを見つけて振り分ける手順は、シャドーAIの見つけ方と棚卸しで解説しています。
使い方が、調べ物と下書きで止まる
もう1つは、使ってはいるが、使い方が調べ物、文章の下書き、アイデアの壁打ち、会議の要約で止まっている形です。聞いて答えをもらう使い方から先の、業務の流れに組み込む所まで進んでいない、という話でした。
検索の代わりに使っているだけ、分からないことを聞く程度、という話は、製造や医療・介護、専門サービスの会社から出ました。契約書や企画書のたたきを、自分の手元で作るのに使う程度という会社もあります。
個人の手元では役に立っていても、業務の流れはAIを入れる前と変わっていない、という状態です。
会社の規模で分けても、手を付けた会社のほうが多い|広告・マーケティングでは4社に3社
会社の規模で、数字が偏っていないかを確かめました。業種では、広告・マーケティングの会社を分けて見ています。

社員100名未満の会社では、手を付けて止まった会社が41%、「何ができるか分からない」が20%でした。100名以上の会社では65%と18%で、差がさらに大きくなっています。
広告・マーケティングの会社では、4社に3社にあたる75%が手を付けて止まっていて、「何ができるか分からない」は19%でした。試したがうまく使えていない会社だけでも44%あります。
広告・マーケティングの会社を除いても、41%と29%で、手を付けて止まった会社のほうが多くなりました。
試して止まった会社が、次にすること|目的を1つに決めるところから、4つのステップで進め直す
目的と業務が決まらないままAIを入れると、一部の社員が調べ物や文章づくりに個人で使うだけになり、効果を数字で示せず、次の予算も付きません。2章の「費用が見合わない」「1回で終わる」と、3章の「一部の人の調べ物と下書きで止まる」は、どちらもこの止まり方と同じ形です。
新しい道具を探す前に、目的を決め、業務を棚卸しし、目的に合った道で作り、測って広げる、の4つのステップで進め直します。

目的を1つに決め、測る数字を決める
ステップ1では、AIで何を変えるかを決めます。目的は次の3つで、目的によって測る数字も進め方も変わります。
目的 | こんな会社に | 測る数字 |
|---|---|---|
特定の部署の人件費を下げる | 経理や事務など、作業の多い部署の人件費が、PLを圧迫している | 移した人数・減らした人数 |
全体の生産性を上げる | 部署を問わず、社員一人ひとりの無駄な作業が多い | お客様と売上の仕事に回せた時間、増えた案件数、1人あたりの粗利 |
売上を上げる | 問い合わせやアポを増やす記事・投稿・営業のDMまで、手が回っていない | 記事・投稿・DMの数と、問い合わせ・アポの数 |
目的は1つに絞り、いちばん解決したいことから選びます。2つ以上を同時に追うと、何を測るかが決まらず、効果を示せません。
業務を棚卸しし、最初の業務を選ぶ
ステップ2では、どの目的でも、最初に業務を棚卸しします。業務を1行ずつ書き出し、次の5つを書き込みます。前に試して止めた道具がある業務も、この表に入れ直します。
- 業務と担当:業務の名前、主な担当者、何のための業務か
- 月の時間:1回の時間と月の回数
- 業務の流れ:1工程を1行で書き、毎回同じか、人によるか
- 人にしかできない判断:無いか、一部あるか、ほとんどが判断か
- 材料のデータ:表計算や管理画面にあるか、口頭や紙だけか
時間が大きく、流れが毎回同じで、人にしかできない判断が無く、材料のデータがそろっている業務が、最初の候補になります。材料が口頭や紙だけの業務は、材料を整えてから作ります。2章の、紙やPDFの読み取りで出来が届かなかった業務は、材料のデータの列から見直します。
人件費や生産性が目的なら月の時間から、売上が目的なら月の回数から見ます。
目的に合った道で作り、測って広げる
ステップ3では、ステップ1で決めた目的ごとのやり方で、最初の業務をAIに任せる仕組みを作ります。人件費の道では、浮いた人をどこへ移すかを先に決めます。時間が減っても給料は変わらず、人を移すか減らすまで人件費は下がらないからです。
3章の、使うのが一部の人だけの会社では、生産性の道でAIアンバサダーを育てます。研修で自分の業務の仕組みを作り切り、部署のほかの社員に広げる社員で、時間のかかる業務を持ち、仕事に能動的な社員を選びます。売上の道では、AI検索で選ばれる記事、SNSの投稿、営業のDMの量をAIで増やします。
ステップ4では、仕組みを作る前と後を、人の確認も含めた分数で測ります。効果の出た業務から部署、全社へ広げ、業務の棚卸しを更新して、次にAIに任せる業務を出します。
4つのステップの進め方と目的ごとの事例は、無料の資料「経営者のためのAI導入ロードマップ」にまとめています。
さいごに
本記事では、スマートエイトと商談した会社の記録から、AIや業務の自動化にどこまで手を付けていたかを集計しました。45%はすでにAIや業務の自動化に手を付けて止まっていて、「何ができ、どこに使えるか分からない」と話した27%の会社より多くなっています。
AIの研修や開発について話を聞く段階の会社でも、最初の一歩はもう踏んでいて、二歩目で止まっている会社が少なくありません。次に要るのは新しい道具ではなく、目的を1つに決め、業務を棚卸しし直すことです。
明日は、AIで何を変えたいのかを、人件費・生産性・売上の中から1つに決めてみてください。そのうえで、前に止めた道具の業務も含めて、業務を1行ずつ書き出すところから始めます。
スマートエイトの生成AI研修では、受講する方が自社の業務を題材にして、その場でAIの仕組みを作るところまで進めます。
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