はじめに
DeepSeekの新しいモデルが安くて性能も高いと聞き、社内で使ってよいのか判断を求められて困っていないでしょうか。中国の会社のAIは危ないと聞く一方で、料金の安さは無視しにくいものです。
本記事では、10月17日に公開されたDeepSeek V4.1 Flashの新版について、何が変わったのか、料金は円でいくらか、入れたデータがどこに置かれるのかを整理します。そのうえで、会社で使ってよい場面と避ける場面を、入れる情報の種類で仕分けます。スマートエイトは生成AI研修と導入支援の中で、AIに入れてよい情報の決め方を企業と一緒に作ってきました。
結論を先に書きます。公式のアプリ・Webに入れた内容は、中国のサーバーに保存されます。そのため公式のサービスは公開してよい情報だけに使い、安い単価を活かします。社外に出せない情報を扱いたいなら、公開された重みを自社やクラウドで動かす道があります。
本記事は2026年10月19日時点のDeepSeekの公式資料と日本の公的機関の公表資料に基づいています。料金は1ドル158円で円に直しています。対象は、DeepSeekが運営する公式のアプリ・Web・APIと、Hugging Faceで公開された新版の重みです。
DeepSeek V4.1 Flashの新版で変わったこと|10月17日の更新と料金
DeepSeek V4.1 Flashは、9月10日に公開された、DeepSeekの新しい系統でいちばん小さいモデルです。10月17日に、その更新版が出ました。まずは何が変わり、料金がいくらかを押さえます。

新版「V4.1-Flash-1017」の中身
新版の名前は「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」で、DeepSeekは2026年10月17日の公開としています。公式のWeb・アプリ・APIのモデルが、この日から新版に切り替わりました。
DeepSeekが自社で測った成績では、ソフトウェア開発の課題を解かせる試験で74.2から77.0へ、コマンドで作業を進める試験で31.2から42.3へ上がりました。同じ表では、AnthropicのClaude Opus 5を上回った項目もあり、新版の重み*はMITライセンスで公開されています。
あわせて、仕事を終えるまでの時間と、答えの長さを前の版より減らしたとしています。答えが短くなれば、同じ仕事を頼んだときの料金も下がります。
料金を円に直すと
APIの料金は、送る文章と返ってくる文章のトークン*の数で決まります。新版でも料金は前の版から変わっていません。100万トークンあたりの料金を、1ドル158円で円に直すと次のとおりです。
100万トークンあたり | ピーク外 | ピーク |
|---|---|---|
送る文章 | 約24円 | 約47円 |
返ってくる文章 | 約95円 | 約190円 |
公開されている業界ニュース1,000本を、1本5,000トークン読ませて500トークンの要約を返させる例で計算します。ピーク時間なら約330円、ピーク外なら約170円です。1本あたりに直すと、ピーク時間でも1円に届きません。
日本の昼間はピーク料金に当たる
料金はピーク時間に2倍になります。ピークは協定世界時の平日1時〜4時と6時〜10時で、日本時間に直すと平日の10時〜13時と15時〜19時です。中国の祝日と週末はピーク外になります。
9時〜18時の営業時間でいえば、9時間のうち6時間がピークに入ります。日中に人が使う分は、高いほうの料金で考えておきます。大量の処理を夜や週末にまとめて流せば、同じ仕事を半分の料金で回せます。
*重み:AIの中身にあたる数値の集まり。公開されていると、自社のサーバーに入れてAIを動かせる。 *トークン:AIが文章を区切って数える単位。APIの料金は、この数に単価を掛けて決まる。
アプリとWebのデータは中国のサーバーに置かれる|APIの扱いと日本政府の注意
新版で性能と料金の条件は良くなりましたが、入れたデータの扱いは変わっていません。会社で使えるかを決めるのは、ここです。

入れたデータが置かれる場所と、学習への利用
公式のアプリとWebを運営するのは、中国に登記住所を持つ杭州のDeepSeek社です。プライバシーポリシーは、集めた情報を中華人民共和国にあるサーバーに保存しますと定めています。
同じポリシーには、入力した内容をモデルの訓練と改善に使うことがあるとも書かれています。訓練に使わせない権利は利用者にあり、日本語版ではprivacy@deepseek.com宛てに申し出て使う形です。中国語版のポリシーには、アプリの設定から切り替える手順も書かれています。
API*で送った文章は、DeepSeek社が受け取って処理します。API向けの利用規約は、契約の解釈や争いを中国本土の法律で扱うと定めています。これは契約の決まりで、送った文章の保存先を定めたものではありません。
会社で使う側としては、APIもアプリ・Webと同じく外の会社に文章を渡す使い方として、入れる情報を同じ線で扱うのが安全です。プライバシーポリシーの最終更新は2026年2月10日、API規約の施行は2026年4月29日で、どちらも新版より前の日付です。
日本政府が出した注意
個人情報保護委員会は、2025年2月にDeepSeekについて情報提供を出しています。利用に伴って取得されたデータが中国のサーバーに保存されることと、そのデータに中国の法令が適用されることの2点です。
政府の各機関に向けては、2025年2月6日にDeepSeek等の生成AIの業務利用に関する注意喚起が出ました。総務省の資料は、その概要として上の2点を挙げています。
どちらも、民間の会社に使用の禁止を求めるものではありません。DeepSeek社が取得したデータは中国の法令のもとで扱われると知ったうえで、何を入れるかを会社が決める、という整理になります。
*API:自社の仕組みや他の道具から、AIを呼び出して使うための窓口。画面を開かずに、プログラムから文章を送って答えを受け取る。
自社やクラウドで動かすという道|公開された重みを使う条件
DeepSeekが他の多くのAIと違うのは、重みが公開されていて、自分で用意したサーバーで動かせる点です。こうすれば、データの置き場を自社で決められます。

MITライセンスで商用にも使える
新版の重みは、MITライセンス*で公開されています。商用の利用も、社内向けに手を入れて使うことも認められています。
自社のサーバーや、自分で拠点を選べるクラウドの上で動かせば、入れた文章はDeepSeek社のサーバーを通りません。2章で見た中国のサーバーの話は、この使い方には当てはまりません。
ただし、モデルの中身を自社で確かめられるわけではありません。動かす場所を自社で決めても、出てきた答えを人が確かめる手順は、どのAIを使う場合と同じように要ります。
動かすのに要るもの
新版の重みのファイルは、Hugging Face上で合計約510GBあります。社員が使う普通のパソコンでは動かせず、GPU*を何枚も積んだサーバーか、それを借りられるクラウドが要ります。容量を軽くした版も外部の開発者が作っていますが、性能は元の版より下がることがあり、その幅は版ごとに違います。
もう1つ要るのが、サーバーを動かし続ける人です。モデルの更新、障害への対応、使う人の管理まで含めると、社内に担当を置くか、外部に任せる費用がかかります。
社外に出せない文書を扱うことだけが目的なら、もっと小さく動かしやすいモデルを選ぶ手もあります。国産で無料の候補をELYZA-Thinkingで社外に出せない文書を扱う4条件で整理しているので、比べるときの材料にしてください。
*MITライセンス:ソフトウェアの利用条件の1つ。著作権の表示を残せば、商用でも改変しても使ってよいと定める。 *GPU:AIの計算を速く進めるための部品。大きなAIを動かすには、この部品を何枚も積んだサーバーが要る。
会社で使えるかは情報の分け方で決まる|ChatGPT・Gemini・Claudeとの使い分け
DeepSeek V4.1 Flashを会社で使えるかは、モデルの良し悪しより、何を入れるかで決まります。ここでは、入れる情報を3つに分けて、使い方ごとに当てはめます。

入れてよい情報を3つに分ける
スマートエイトが研修で使っているのは、入れる情報を「OK・要確認・NG」の3つに分けるやり方です。OKは公開されている情報、NGは個人情報やパスワードです。要確認は、社内だけの資料、まだ出していない施策、相手が分かる顧客の声などを指し、迷ったら入れません。
この3つを、DeepSeekの使い方に当てはめると次のようになります。
使い方 | OK | 要確認 | NG |
|---|---|---|---|
公式アプリ・Web | 使える | 入れない | 入れない |
公式API | 使える | 入れない | 入れない |
重みを自社やクラウドで動かす | 使える | 社内の決まりで判断 | 社内の決まりで判断 |
1章の例でいえば、公開されている業界ニュースの要約は公式のAPIで流せます。社外秘の会議メモの要約は、公式のアプリやAPIには入れず、自社で動かす場合だけ候補になります。
DeepSeekを選ぶ理由がある業務
選ぶ理由がはっきりあるのは、公開されている情報を大量に処理する仕事です。業界ニュースの要約、公開されている他社の求人票やプレスリリースの分類のように、件数が多いほど単価の安さが効きます。夜や週末にまとめて流せば、料金はさらに半分になります。
もう1つは、社外に出せない文書をAIで扱いたいが、外部のサービスには送りたくない会社が、自社で動かすモデルの候補に入れる場合です。こちらは3章のとおり、サーバーと担当者の費用まで含めて比べます。
どちらの場合も、安さが本当に効いたかは、処理できた件数で確かめます。効果の数え方は生成AIの費用対効果を測る4つの問いにまとめています。
選ぶ理由が薄い業務
社員が毎日使うメールの下書きや会議メモの整理は、多くが要確認の情報を含みます。ChatGPT・Gemini・Claudeを会社で契約しているなら、こうした仕事はそちらに寄せたほうが、入れてよい情報の線を1本にできます。
道具が2つに分かれると、社員は仕事のたびに「これはどちらに入れてよいか」を考えることになります。DeepSeekは、公開情報の大量処理という決まった仕事に絞って使うと、社内の決まりが崩れにくくなります。
よくある質問|DeepSeek V4.1 Flashを会社で使う前に
前のV4.1 Flashから使い方は変わりますか?
APIの呼び出し方も料金も、前の版から変わりません。呼び出すときのモデル名は「deepseek-flash」のままで、新版に自動で切り替わっています。公式のWebとアプリも、同じ日に新版へ更新されました。
新しく付いた検索の機能に料金はかかりますか?
新版と同時に、DeepSeek自社の検索エンジンを使う検索と、ページの取得の機能が全員に開かれました。料金は成功した1,000回ごとに0.75ドルで、約119円です。Claude CodeやCodexなどからサーバー側で呼び出した分は、日本時間の11月1日1時まで無料です。
社内でDeepSeekを禁止すべきですか?
一律に禁止するより、使い方ごとに決めるほうが実務に合います。公式のアプリ・Web・APIには公開情報だけを入れると決め、要確認とNGの情報は入れないと社内の決まりに書きます。自社で動かす場合は、ほかの社内システムと同じ扱いで別に判断します。
性能の数字はそのまま信じてよいですか?
1章の成績は、DeepSeekが自社の環境で測った数字です。第三者による評価はまだ少ないと報じられています。自社の仕事で使えるかは、公開してよい資料を使って、実際の業務を10件ほど試してから決めると確実です。
さいごに
DeepSeek V4.1 Flashの新版は、性能を上げながら料金を据え置き、重みも公開しました。一方で、公式のアプリ・Webに入れた内容が中国のサーバーに保存されるという条件は、前の版から変わっていません。
会社で使うかどうかは、入れる情報を「OK・要確認・NG」に分けて、使い方ごとに線を引けば判断できます。まずは、公開されている情報を大量に処理している仕事が社内にあるかを、1つ探してみてください。
AIに入れてよい情報の決め方や、仕事ごとの道具の選び方は、スマートエイトの生成AI研修で、受講する会社の実際の業務を題材に扱っています。
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