はじめに
採用のために、ショート動画で職場の様子を見せたいと考えたものの、制作会社の見積もりを見て手が止まった経験はないでしょうか。社内には動画を作れる人がおらず、撮影に出てもらう社員の時間も取れない、という会社も多いはずです。
本記事では、撮影も出演者もなしに、AIで採用ショート動画を作る5つの工程と、社名やロゴの字を崩さずに作る方法を解説します。下の動画は、スマートエイトがAIで作った採用動画の見本です。
結論として、人物も場面も動きもAIで作り、テロップと題・締めのロゴを後から重ねれば、縦26秒の採用動画を撮影なしで作れます。崩れやすいのはAIに刷らせた箱の社名の字で、「回さない」と頼む文を足すより、最初の絵と動きを変える方が直ります。
スマートエイトが自社で作った見本と、作る途中で字が崩れたカットの記録をもとに書いています。自社の求人で作る進め方は、スマートエイトの研修でも扱っています。
見本は2026年10月に作りました。映っている人物と倉庫、締めに出てくる求人サイトの名前は、すべてAIで作った架空のものです。
AIで作った採用動画の見本|撮影なしでどこまで作れるか
見本はどんな採用動画か?
見本は、倉庫内のアルバイトの「メリットランキング」を、3位から1位の順に見せる縦長の動画です。長さは26秒で、14のカットを1.2〜2.3秒ずつつないでいます。
3位は「体を動かして運動不足を解消できる」、2位は「接客なしでストレスフリー」、1位は「学校の授業と両立しやすい」です。最後に「それがソウコナビ」と求人サイトを紹介し、「働く仲間を募集中!」の画面で締めます。
画面に映る人物、倉庫、箱、人の動きは、すべてAIで作りました。テロップと、題・締めに出る会社のロゴ、ナレーションは、AIの映像の上に後から重ねています。箱に入った社名のロゴは、AIに刷らせました。
画像と動きはRunway*で、声はGoogle AI Studio*の読み上げで作っています。
撮影なしで、人が決めたのはどこか?
人が決めたのは、作り方の方針です。どのAIで画像を作るか、字が崩れたら動きを変えて直すこと、どのカットを作り直すかを、人が判断しました。
手を動かす作業は、次のとおりAIに任せています。
- カットごとの依頼文の下書き
- Runwayでの生成の操作
- 保存した動画の選別
- カットのつなぎとテロップの描画
- 声の候補づくり
- 数コマおきに拡大して、字や顔の崩れを探す検品の下見
社名のロゴを入れた13カットのうち、7カットは1回で使え、残りの6カットは頼み方を変えて作り直しています。
制作会社に頼むのと何が違うか?
制作会社に頼む場合、採用動画の費用は50万円から300万円が目安です。
縦型のショート動画なら、30〜40秒で1本10万円から作る制作会社もあります。
AIで作ると、撮影の日程や出演者の調整が要りません。カットごとに作り直せるため、順位の並びやテロップの文を変えた別の版も、同じ素材から何本も試せます。
その代わり、崩れたカットを作り直すかを決める仕事は自社に残ります。崩れやすい場面と直し方は、この後で詳しく解説します。
*Runway:画像と短い動画を作れる生成AIのサービスです。作った画像を最初のコマにして動かせます。
*Google AI Studio:Googleの生成AIをブラウザで試せるサービスです。文章から読み上げの音声を作れます。
撮影なしで作る5つの工程|採用ショート動画の作り方
撮影なしの採用ショート動画は、次の5つの工程で作れます。撮影も出演者の手配も要らず、上から順に進めると1本になります。
- 場面の順番とテロップの文を決める
- 人物と場面の画像を作る
- 画像を最初のコマにして、2〜3秒だけ動かす
- テロップと声を重ねる
- カットをつないで書き出す

最初に何を決めるのか?
最初に決めるのは、どの順番で何を言い、どの場面を何秒見せるかです。見本は、仕事のよい点を3位から1位へ発表するランキングの形です。

各順位は、見出しのテロップ1つと補足のテロップ2つで見せています。テロップの文はナレーションの句とほぼ同じ言葉にそろえてあるので、音を消して見ても話の筋が追えます。
カットは、1つを2秒前後に短く分けます。見本は14カットで、1つが1.2〜2.3秒です。短く分けておけば、AIに作らせる動画も2〜3秒で足り、崩れたカットだけを作り直せます。

人物と場面の画像はどう作るのか?
まず、出てもらう人物の手本の画像を、AIで1枚作ります。手本の作り方は、広告動画で人物が別人になるのを防ぐ手順で解説しています。
場面の画像は、14カット分を1枚ずつ作りました。どのカットも同じ人に見せるため、依頼文と一緒に、服が正しく写った画像と人物の手本の画像の2枚を渡しています。
2枚は、RunwayのImageの画面で参照画像の枠(Reference)に入れ、依頼文の中で「@」を打って「Image 1」「Image 2」と呼び出します。1枚目に服が正しく写った画像、2枚目に人物の手本を入れました。


依頼文には「2枚の女性は同じ人で、服は1枚目から取り、ポーズと背景はどちらも写さない」と書きました。人物の手本の1枚だけを渡したときは、14枚中7枚で上着が、白い線と紺の切り替えが入ったウインドブレーカーのような物にずれています。服の手本を足して2枚にすると、7枚とも直りました。
場面の画像の依頼文は、何の場面かを1文で書き、2枚が同じ人だと伝えてから、人物の大きさと位置、動作、背景、服の順に書きました。人物の大きさは「胸から上」とだけ書くと小さめに置かれ、頭の位置や肩幅が画面の何割かを数で書くと寄りになります。

倉庫の箱には、社名のロゴも入れています。白い無地の箱で一度作った画像とロゴの画像を渡し、「箱の面にだけロゴを刷り、ほかは何も変えない」と頼んで刷りました。
動き・テロップ・声はどう付けるのか?
動きは、場面の画像を最初のコマに置いて、2〜3秒の動画にします。完成版には、字が崩れやすい後半を捨てて、頭の1.2〜2.3秒だけを使いました。
動きの依頼文には、させる動作を具体に書きます。「歩いてくる」とだけ書くと、台車から手を離すなど、頼んでいない動作が出ます。台車を押すカットは、「右手は終わりまで台車の取っ手に置いたまま、台車は横を同じ速さで進む」と書き足すと、台車を置き去りにする動きも、台車が回って字が崩れることも無くなりました。
依頼文はAIに英語で書かせました。最初のカットの分を日本語にすると、次の順です。
- コンベヤーできびきびと働く
- 固定したカメラは、まったく動かない
- 両手で箱を先へ押し、次の箱へ手を伸ばす
- コンベヤーの奥、画面の上側にとどまる
- 箱は回らず傾かずに滑り、ほかの箱は動かない
- 顔は最初のコマのまま変えない
- 1つのカットで続け、箱の印刷は最後までくっきり保つ
5行目の、箱を回さない指定は、書いても守られないカットがありました。
AIに描かせた字は崩れやすいため、テロップと題・締めのロゴは、文字を後から入れる手順で重ねました。

声は、Google AI Studioの読み上げで作った1本を句ごとに切って、テロップに合わせました。スマートエイトは、AIに書かせたプログラムでテロップの画像と声を重ね、14本をつないで書き出しています。同じ作業は、普段使いの動画編集アプリでもできます。


社名やロゴの字が崩れるのはどんな時か|崩れやすい動きと字の大きさ
見本で字が崩れたのは、AIに刷らせた箱の字でした。後から重ねたテロップと題・締めのロゴは、崩れていません。
どんな動きで崩れるのか?
崩れが出たのは、次のような動きが入ったカットです。
- 箱が回り、最初のコマで見えていなかった面が正面に来る
- 箱がカメラに近づいたり、傾いたりする
- 箱を持ち上げたり、運んだりする
- カメラが動いたり、人物を追ったりする
- 画面の外から、箱が流れ込んでくる
箱もカメラも動かないカットでは、字は崩れませんでした。
崩れると、社名の綴りが変わります。手前に流れてくる大きい箱では「Smart Eight」が「Smenrt」に、運ばれる箱では「Smarfight」になりました。

「Smenrt」の箱は、最初のコマでは画面の下にはみ出していて、途中から流れ込んできた物です。完成前に組んだ版では、この崩れが画面の中で約1.3秒見えていました。
日本語と英字で、崩れ方は違うのか?
違います。画像の段では字の大きさで差が出て、動画にすると日本語の文が偽の字になり、大きい英字は保たれました。見本を作る途中の版では、箱に英字の社名と日本語の文を刷っていました。
画像の段では、大きく刷った英字の社名と日本語の2行は、13枚とも崩れませんでした。崩れたのは小さい字だけで、「が」の濁点が落ちて「か」に読める、頼んでいない偽の1行が増える、といった形です。
動画にすると、大きく刷った日本語の2行も偽の字になりました。持ち上げる箱の日本語の行は、4回作ったうち3回で別の字になっています。同じ箱に刷った大きい英字の社名は、どのカットでも崩れていません。
そこで完成版では、箱に刷る字を英字の社名とマークだけにしました。残った崩れの多くは小さく映る奥の箱の1〜2字で、スマホの幅で再生すると読めない大きさです。
「回さない」と書けば防げるのか?
書くだけでは防げませんでした。依頼文に「箱は回らない・傾かない」の一文を全カットに足した後も、3つのカットは2回作っても直っていません。
カメラも同じです。「三脚に固定したカメラは寄らず、振らず、追わない」と書いたカットでも、カメラは2回とも人物を追って右へ動きました。
人物の動作も、書いたとおりに動くとは限りません。箱を持ち上げてしまったカットに「箱を持ち上げない」と書き足して作り直しても、胸の高さまで持ち上げてから戻しました。
社名の綴りも、念を押せば守られるとは限りません。綴りを変えないよう念を押す一文を足して作り直した1本の方が、前より字が崩れていたこともあります。
禁止の一文を足しても直らないときは、最初の絵と動きそのものを変えます。
社名が崩れない作り方|最初の絵と動きを変える
崩れたカットは、禁止の一文を足すより、人物の動作と最初の絵を変えると直りました。見本で効いた直し方を、順に紹介します。
動きをどう変えればよいか?
箱が回る動作を、そもそもさせないようにします。途中の版では、「向きを変えて箱を置く」動きを「箱を持ってカメラへ1〜2歩進むだけ」に替えると、持っている箱の英字が終わりまで正しいままでした。
替えた依頼文には、「向きを変えない」「箱を置かない」「カメラは動かさない」も書いています。禁止の一文を足すのとの違いは、させる動作そのものを、箱が回りようのない動作にした点にあります。
台車を押すカットで、取っ手に置く右手と台車の進み方を書き足すと台車が回らなくなったのも、同じ考え方です。
最初の絵で何を変えればよいか?
動かす前に、最初の絵の字を確かめます。箱の社名が「Smart / Eight」と2行に割れた絵は、「マークの右に1行で置く」と書き足して作り直しました。
箱の持ち方も、最初の絵で決まります。箱を胸の高さへ持ち上げるカットは、動きを「持ったまま顔だけ右へ向ける」にし、最初の絵も箱を正面向き・水平に持つ絵に変えると、4回目で初めて大きい字が崩れなくなりました。代わりに胸に偽の字のラベルが浮いたので、直した後もコマを拡大して確かめます。
画面の端で切れた箱は、最初の絵から消します。手前で切れていた箱2つを取り除き、動きの依頼文に「新しい箱は画面に入れない」と書くと、「Smenrt」は消え、手前の箱の社名は使う範囲でずっと正しいままでした。

「手前の箱を少し奥へ」と頼んで直そうとしたときは、ほぼ元の絵のまま返ってきました。見本では、ずらすより取り除くと頼む方が効いています。
それでも崩れたら、どうするか?
崩れが動き出してから出ているなら、崩れる前のコマで切ります。見本の各カットを頭の1.2〜2.3秒に切ったのも、崩れが後半に出やすいためです。
社名をはっきり読ませたい場面は、箱に描かせず、題や締めのロゴのように後から重ねます。映像の上の帯に置いたロゴは、動きと関係なく崩れません。

社名が日本語の会社は、日本語の社名を箱に描かせず、題や締めの帯に後から重ねます。箱に大きく刷った日本語の行は、見本の途中の版でも、動画にすると偽の字になりました。
作り直すかどうかは、画面で目立つ箱の社名が別の語になり、1秒前後見えるかで決めました。テロップの下に隠れる崩れや、1〜2字だけの崩れは、そのまま使っています。
奥に小さく映る箱も、作り直しの対象から外しています。スマホの幅で再生して1語として読めない大きさなら、見る人の目には崩れとして入らないためです。
よくある質問|AIで採用動画を作る前に
費用と時間はどれくらいかかるか?
撮影費と出演料はかからず、かかるのは道具の月額料金と作る人の時間です。見本の生成も、使っている道具の月額料金の範囲に収まりました。
時間がかかるのは最初の1本です。見本も、依頼文の型が決まるまでは何度も作り直しました。型ができた後は、社名のロゴを入れた13カットの依頼文を用意してから、作り直して書き出すまで、1時間半かかりませんでした。
作った動画が費用と時間に見合ったかは、作った本数ではなく、動画から来た応募の数で確かめます。測り方は、生成AIの費用対効果を測る4つの問いで解説しています。
自社の社員や店舗の写真を使ってよいか?
使う場合は、動画にすることまで本人の同意を取ります。写真を載せる同意と、AIで動かして動画にする同意は、別の物として扱います。
写真の掲載に同意した人が、自分の顔が動く動画まで認めたとは限りません。写真をAIの道具に読み込ませることも含めて、先に本人に伝えておきます。読み込ませる前に、その道具が、渡した画像を学習に使わない設定になっているかも確かめます。
店舗や倉庫を映す場合は、ほかの会社の社名やロゴが写り込んでいないかも確かめます。見本でも、箱と背景とテロップを並べて見て、スマートエイト以外の社名が無いかを点検しました。
どの動画生成ツールを使えばよいか?
見本は、Runwayの中で使えるGoogleの画像生成のAI、Nano Banana Pro*で場面の画像を作り、Runwayの動画生成のAI、Gen-4.5*で動かしました。声は、Google AI Studioの読み上げで作っています。
画像の道具を全カットでそろえたのは、顔がカットごとに変わるのを避けるためです。Gen-4.5には人物の手本を渡す入口が無く、顔は画像の段階で決まります。
選ぶときは、画像の道具なら人物の手本を2枚渡せるか、動画の道具なら作った画像を最初のコマにして動かせるかを確かめます。
Runwayの中で選べる動画生成のAIの違いと、使う長さや動きの細かさでの選び方は、4つのモデルを同じ依頼文で比べた記事で解説しています。
*Nano Banana Pro:Googleの画像生成のAIです。Runwayの中でも使え、手本の画像を渡して人物や服をそろえた画像を作れます。
*Gen-4.5:Runwayの動画生成のAIです。最初のコマにする画像と依頼文から、数秒の動画を作れます。
さいごに
本記事では、撮影も出演者もなしに進める採用動画制作の5つの工程と、社名の字を崩さない作り方を解説しました。崩れやすいのはAIに刷らせた箱の社名で、禁止の一文を足すより、最初の絵と動きを変える方が直ります。
制作会社の見積もりで手が止まった会社でも、撮影なしの採用ショート動画なら自社で作れます。まずは自社の求人1件で、見本の題と3位にあたる最初の5カット、約8秒分だけ作ってみることをおすすめします。
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