はじめに
ブラウザで同じ作業を毎日繰り返している、と感じたことはないでしょうか。管理画面を開いて数字を写す、同じ形式のフォームを埋める、複数のページを行き来して内容を突き合わせる。手順は決まっているのに、人が画面の前に座り続けなければ進みません。
Claude in Chromeは、その画面作業をブラウザの中でそのまま進める拡張機能です。2026年8月26日に正式版になりました。ただし、ここで「ブラウザ操作ができるようになった」と読むと、変わった点を取り違えます。ブラウザ操作そのものは、正式版の前のベータ版ですでに動いていました。
本記事では、正式版で実際に変わった1点を確認したうえで、導入の手順、「どのサイトまで自動実行を許すか」の決め方、最初に任せる作業までを整理します。スマートエイトは生成AI研修を通じて、企業がAIへ業務を渡すときの線引きを支援してきました。結論を先に書きます。変わったのは対応プランでも操作の種類でもなく、人の承認を待ってから動く形が既定から外れたことです。
本記事は、有料プランのClaudeアカウントで、Chromeのサイドパネルから頼む使い方を前提にしています。2026年10月15日時点の公式情報をもとにしています。
Claude in Chromeとは|ブラウザの手作業をそのまま進める拡張機能
権限の話に入る前に、この拡張機能が何をする道具なのかを押さえます。ここが曖昧なままだと、社内で許可の範囲を議論しても材料が揃いません。
Claude in Chromeは何をしてくれますか
Claude in Chromeは、Chromeに追加してブラウザ上の操作を任せる拡張機能です。ページを読む、文字を入力する、クリックする、ページを移動する、フォームを埋めるといった操作を、いま自分がログインしている状態のまま進めます。
このログイン済みの状態を使う点が、ほかの自動化との大きな違いになります。社内の管理画面やクラウドのサービスは、たいていIDとパスワードの内側にあります。連携用の設定を新しく作らなくても、自分が見えている画面はそのまま作業の対象になります。
裏を返せば、使う人の権限がそのまま渡ります。閲覧しかできない人が使えば閲覧の範囲で、承認権限を持つ人が使えば承認できる範囲まで動きます。誰のアカウントで動かすかが、そのまま許可の範囲を決めます。
どのプランで使えますか
対象は有料プランです。Pro・Max・Team・Enterpriseのどれでも使え、無料プランでは使えません。
社内で案内するときに事故が起きやすいのが、「すべてのプラン」と「すべての有料プラン」の一語の差です。無料プランで試そうとした人だけが手順の途中で止まり、問い合わせが集中します。配布の前に、対象者がどのプランに入っているかを確認してください。
Chromeのサイドパネルから頼む使い方は、2026年10月時点でもベータの扱いで、画面の作りもプランごとに順に入れ替わっています。社内の手順書には画面の写しを並べるより、任せる範囲の決まりを書いておくほうが長持ちします。
Claude CoworkやClaude Codeとどう違いますか
違いは「どのブラウザで動くか」にあります。Claude in Chromeは、あなたが普段使っているChromeの中で動きます。ログイン済みの管理画面をそのまま開いて操作できるのは、この形だからです。Claude Codeはプログラムを書く現場で動きます。
紛らわしいのがClaude Coworkです。Coworkはパソコンのファイルを扱う機能ですが、2026年8月26日にブラウザが内蔵されました。サイトの操作が要ると、Claude専用のブラウザがサイドパネルに開き、クリックや入力まで進めます。Pro・Max・Teamで使え、Enterpriseは管理者が有効にすれば使えます。
分かれ目は、ログイン済みの自分のChromeか、Claude専用のブラウザかです。専用のブラウザはあなたのタブやパスワードを見ないので、取引先のサイトから資料を集めるような、任せきりの作業に向きます。いま開いている画面を自分のアカウントで操作させるなら、Claude in Chromeです。
Claude in Chromeを入れていれば、Coworkも既定でそのChromeを使って作業します。手元のファイルを整理したい、CSVを集計したいという話なら、対象はCoworkです。使い分けはClaude Coworkとはにまとめています。
ほかの会社の製品との違いはClaude Cowork・ChatGPT Work・Copilotの違いで扱っています。
正式版で変わったのは1点|「毎回の確認」が既定から外れました
ここが本記事の中心です。正式版のニュースを読むときに、いちばん取り違えられやすい部分でもあります。
ベータ版では人が承認してから動いていました
Claude in Chromeは、2025年8月にパイロット版として始まり、2025年12月には有料プラン全体でベータ版として使えるようになっていました。
当時は、人が承認してからClaudeが動く形が基本でした。Claudeが最初に示す計画を人が承認し、その範囲の中だけを任せます。計画に無いサイトへ移るときや、ファイルをダウンロードする前には、そのつど止まって許可を求めます。
安全側に倒した設計ではありますが、実務では負担になります。手順が読めない作業ほど途中で止まり、人が画面の前に張り付いていなければ進みません。それなら自分で操作したほうが速い場面も出てきます。
ベータ版で足りなかったのは、できることの数ではありません。任せきれるかどうかでした。
正式版で外れたのは確認であって、できることではありません
正式版では、Claudeが1つ1つの操作に承認を求めずに、自分で操作を進められるようになりました。その代わりに、安全チェックが各操作を実行の前に点検し、頼んだ内容と合わない操作を止めます。
読み違えやすいのはここです。新しくできるようになった操作が増えたわけではありません。同じ操作を、人の確認を挟まずに続けられるようになりました。
差分を1行で言えば、人が出していた承認を、安全チェックが代わりに出すようになりました。ページを読む、入力する、クリックするという中身は、ベータ版の時点ですでに動いていました。
承認の扱いは3つから選べます
既定から外れたというのは、承認が消えたという意味ではありません。サイドパネルの入力欄のメニューで、3つのモードから選びます。
モード | 承認の扱い | 安全チェック |
|---|---|---|
手動で承認 | 操作の前に人が許可か拒否かを選ぶ | 人が各操作を見る |
自動で承認 | 止まらずに進む | 各操作を点検し、危ないものを止める |
すべての承認をスキップ | 止まらずに進む | 走らない |
サイドパネルは「自動で承認」から始まり、切り替えた選択は次の会話にも残ります。自動で承認のまま止められる操作が続くと、1手ごとに許可を求める形へ戻ります。点検が増える分、ほかのモードより利用の上限を多く使います。
社内で配るなら、手動と自動の2つに絞るのが無難です。スキップは以前の「確認なしで実行」にあたり、点検そのものが走りません。どのモードも人の判断の代わりにはならず、お金や自分の名義で送るメッセージ、重要なファイルが関わる作業は、そばで見るよう勧められています。
確認が既定から外れた分、範囲は先に決めます
便利さと危うさは同じ場所にあります。毎回の確認は面倒でしたが、間違った操作を人が止める関門でもありました。
その関門が既定から外れたので、判断の位置が前へ動きます。操作の途中で1つずつ止めて考えるのではなく、「どのサイトで、どこまで任せるか」を始める前に決める形になります。
社内で配るときの順番も、そのぶん変わります。使い方を教えてから範囲を決めるのではなく、範囲を決めてから配ります。ここを逆にすると、範囲が決まる前に自動実行が走ります。
導入と初期設定|最初に決めるのは許可の範囲です
導入そのものは短時間で終わります。時間がかかるのは設定ではなく、社内での合意のほうです。スマートエイトが全社展開を支援する場面でも、PCの性能が問題になるのは、打ち合わせ中に自動処理を同時に走らせるような重い使い方に限られます。
入れ方はほかの拡張機能と同じです
手順は特別ではありません。Chromeウェブストアから拡張機能を追加し、有料プランのClaudeアカウントでサインインします。
つまずくとすれば、多くは操作ではなく前提です。会社で使う場合は、誰のアカウントで動かすのかを先に決めてください。個人で契約したアカウントに社内の画面を触らせると、担当が替わったときに何が残っているのか分からなくなります。会社が管理するアカウントへ寄せておくほうが、後の棚卸しは楽になります。
サイトごとの許可はどう考えますか
範囲は、サイト単位で考えると整理しやすくなります。全部を許すか全部を止めるかの二択にせず、サイトごとに扱いを変えます。
判断の材料は2つで足ります。1つは、そのサイトで起きる操作が後から取り消せるかどうか。もう1つは、社外へ出せない情報がその画面に載っているかどうかです。
社内の在庫画面から数字を読み取る作業と、取引先へ請求書を送信する作業は、同じブラウザの中にあっても性質がまったく違います。同じ拡張機能で動くからといって、同じ扱いにしないでください。
許可したサイトは、あとから見直せます
「手動で承認」では、操作の前に許可を求められます。今回だけ許可する、このサイトでは常に許可する、拒否する、の3つから選べます。常に許可にしたサイトでも、ファイルのダウンロードや機微な情報の入力の前には確認が入ります。
許可したサイトは、拡張機能のアイコンを押し、サイドパネル右上の3点メニューから拡張機能の設定を開くと見直せます。権限のページで、常に許可にしたサイトの一覧を見る、サイトごとに許可を取り消す、許可の履歴を見る、の3つができます。配ったあとの棚卸しは、この一覧を開く作業になります。
管理者側で制限できますか
管理者向けの設定は、TeamとEnterpriseに用意されています。組織の設定にあるClaude in Chromeの項目で、拡張機能を組織ごとに使わせるか止めるかを決め、触れるサイトを絞れます。
絞り方は2つです。許可リスト*に載せたサイトだけを触らせる方法と、ブロックリストに載せたサイトをほかの設定に関わらず触らせない方法です。同じ一覧はCoworkの内蔵ブラウザにも効きます。許可リストは狭く始めて、様子を見ながら広げます。
既定にも注意が要ります。Teamでは拡張機能が最初から有効で、Enterpriseも、管理者がすでに止めていなければ有効です。「使ってよいサイトの一覧」を管理者側が持てるため、範囲の決定を社員一人ひとりの判断に委ねずに済みます。
*許可リスト:管理者が「使ってよい」と決めたサイトのアドレスの一覧。ここに載っていないサイトでは動かせない、という形で範囲を絞ります。
業務で使ってよいかの判断|取り消せる操作と取り消せない操作で線を引きます
社員に配ってよいかを決める段階です。判断の材料は、公表されている数値と、公式の禁止事項と、自社の業務の性質の3つになります。
プロンプトインジェクションの公表値をどう読みますか
ブラウザで動くAIには、固有のリスクがあります。ページの中に仕込まれた文章を、AIが指示として読んでしまうプロンプトインジェクション*です。
Anthropic自身の評価では、専門家が用意した強い攻撃のうち、モデルに届いたものが成功した割合は、保護を足さない状態のOpus 5で3.8%でした。安全チェックまで加えると、Sonnet 5とOpus 5で0%、Fable 5で0.3%です。どれも2026年8月の正式版の発表時点のClaudeのモデルです。
数字の読み方には注意してください。0%は「安全になった」ではありません。「その測定条件のもとで、安全チェックまで有効にした場合に0%だった」という意味です。条件を外して社内資料に写すと、誤った安心だけが広がります。
*プロンプトインジェクション:Webページやメールの文面にAI向けの指示を紛れ込ませ、本来の指示を上書きさせる攻撃。人が読むと無害な文章でも、AIが命令として受け取ることがあります。
公式が禁止している操作は何ですか
自社の線を引く前に、公式がすでに引いている線を確認します。権限の設定に関わらず、Claudeは次の操作を行いません。
- 購入と金融取引。投資の取引と、投資や資金についての助言も含みます
- アカウントの作成
- クレジットカード番号や本人確認書類など、機微な情報の取り扱い
- 信頼できない配布元からのファイルのダウンロード
- 完全な削除。ゴミ箱を空にする、メール・ファイル・メッセージを消す操作です
- システムファイルの変更
- メールやWebページの文面に書かれた指示に従うこと
どのモードでも人の許可を求める操作もあります。権限設定の変更、権限の付与、機微な情報の画面への入力の3つです。この一覧は、社内規程を書くときの下書きになります。
どこで線を引きますか
公式の禁止は、どの会社にも共通する下限です。自社の線は、その上へ重ねる形で、操作が取り消せるかどうかで引きます。この基準なら、現場の誰が判断しても同じ答えになります。
読み取り、突き合わせ、下書きの作成は、間違えてもやり直せます。ここは自動実行を許してかまいません。送信、購入、削除、確定は、押した瞬間に社外や本番の環境へ出ます。ここは人が最後のボタンを押す形に残します。購入と完全な削除は公式の禁止でも止まりますが、現場には「人が確定する」とまとめて伝えるほうが運用は楽です。
操作の性質 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
取り消せる | ページの読み取り、複数画面の突き合わせ、下書きの作成、社内メモへの記入 | 自動実行を許す |
取り消しにくい | 社内システムへの登録、設定の変更、共有ファイルの上書き | サイトを絞ったうえで許す |
取り消せない | メールやフォームの送信、購入、削除、社外への提出 | 人が確定する |

この切り方は、ブラウザに限った話ではありません。長く動き続けるAIをどこで止めるかという設計はAIエージェントの暴走対策でも扱っており、承認を残す場所の選び方は同じ考え方に立ちます。
最初に任せる3つ|タブの比較・表への書き出し・定期実行
許可の範囲が決まったら、次は何を頼むかです。ここでつまずくと、拡張機能を入れたまま誰も使わなくなります。公式が挙げている使い方から、導入の直後でも手順が短い3つを取り上げます。
期待値は正確に持っておくほうが安全です。商談では「デザインソフトの操作も任せられますか」と聞かれることがあります。画面を操作すること自体は動きますが、人が横で待っていられる速度には届きません。向いているのは、手順が決まっていて、人が見ていなくても最後まで進められる作業です。
開いているタブをまとめて比較する
1つ目は、開いたままのタブを横断して読ませる使い方です。読ませたいタブをClaude専用のタブグループへドラッグすると、グループ内のすべてのタブを見て、まとめて扱えます。相見積もりの比較や、仕様ページの読み合わせが、この形に当てはまります。
頼むときは、比較の軸と、表にするか箇条書きにするかを指示に含めると、集まったあとの手直しが減ります。Claudeは見えている画面から機微な内容だけを除けないので、グループへ入れるタブは作業のたびに選び直してください。
エクスポートボタンのないページから表へ写す
2つ目は、書き出し機能のない画面から数字を取り出す使い方です。Chromeウェブストアの紹介でも、6つの取引先の管理画面に散らばった6枚の請求書から、数字を1枚の表へ集める例が挙がっています。社内ダッシュボードや古い基幹システムのように、Claudeとつながっていない画面にも届きます。
頼むときは、表の列の名前と並び順を指示に含めておくと、あとで整え直す作業が減ります。転記が終わったら、合計と件数を元の画面と突き合わせてください。
うまくいった頼み方を保存して定期実行する
3つ目は、一度うまくいった頼み方を残して繰り返す使い方です。うまく動いた指示はショートカットとして保存でき、チャット欄で「/」を打つと呼び出せます。拡張機能のパネル右上の時計のアイコンからは、そのショートカットを毎日・毎週・毎月・毎年の予定で自動で走らせられます。
定期実行は、人が画面を見ていない時間に動きます。任せてよいのは、前の章で「自動実行を許す」に入れた、取り消せる操作だけで終わる手順に限ります。効果を測るときも、削れた時間ではなく「人が途中で手を入れずに完了したタスクの本数」で数えるほうが実態に合います。測り方の枠組みは生成AIの費用対効果を測る4つの問いにまとめています。
よくある質問|Claude in Chromeの対象と制限
無料プランでも使えますか?
使えません。料金表でも、Claude in ChromeはProから上のプランの機能です。社内へ案内する前に、対象者の契約プランを1件ずつ確認してください。
ベータ版から使っています。何を見直せばよいですか?
承認のモードと、常に許可にしたサイトの2つです。サイドパネルは「自動で承認」から始まるので、ベータ版のように人が承認してから動かしたい場合は、入力欄のメニューで「手動で承認」を選びます。常に許可にしたサイトは、拡張機能の設定の権限のページで見直せます。開き方は「許可したサイトは、あとから見直せます」の節に書いたとおりです。
社員に配るとき、管理者側で止められますか?
止められます。TeamとEnterpriseの管理者は、組織の設定で拡張機能を組織ごとに止められ、許可リストとブロックリストで触れるサイトも絞れます。管理者向けの設定があるのはこの2つのプランだけです。Teamでは最初から有効で、Enterpriseも止めていなければ有効なので、全社で配る予定があるなら、いま有効になっているかを先に確認してください。
Edgeやスマートフォンでも使えますか?
使えません。Edgeのように、Chromeと同じ仕組みで作られたほかのブラウザとスマートフォンでは、2026年10月時点でも拡張機能が動きません。Chrome以外を標準ブラウザにしている会社では、対象者が限られる点を最初に織り込んでください。
どのサイトまで自動実行を許すかを社内で決めきれない場合は、判断の型から整えるほうが早く進みます。その決め方まで扱うのが、スマートエイトの生成AI研修の詳細です。
さいごに
本記事では、Claude in Chromeの正式版で何が変わったのかを確認し、導入手順・許可範囲の決め方・最初に任せる作業を整理しました。変わったのは対応プランでも操作の種類でもありません。人の承認を待ってから動く形が既定から外れ、Claudeがブラウザ上で自律的に操作を続けられるようになった点です。
毎回の確認は、面倒であると同時に、間違いを止める関門でもありました。安全チェックが代わりに走るとはいえ、どのモードも人の判断の代わりにはなりません。判断は操作の途中ではなく、始める前に置くしかありません。どのサイトで、どこまで任せるかを先に決める作業が、そのまま安全設計になります。
次の一歩として、社内で使っているサイトを10個ほど書き出し、取り消せる操作だけの画面と、送信や購入が起きる画面に分けてみてください。分け終えた時点で、自動実行を許してよい範囲はほぼ決まります。TeamかEnterpriseを契約している場合は、その一覧をそのまま管理者側の許可リストに使えます。
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