はじめに

新しいモデルが出るたびに、社内で使うAIを切り替えるべきか、上司や現場から聞かれて答えに迷った経験はないでしょうか。料金が下がったと聞いても、自社の仕事で同じ結果が出るかは、発表を読んだだけでは分かりません。

OpenAIは米国時間の10月26日に、GPT-6.1 Terraを発表しました。本記事では、GPT-6.1 Terraとは何か、Astra・Solとの違い、会社で切り替える前に確かめる3点を解説します。

結論として、Terraは、画面や書類を読み取り、アプリを操作し、文章を書く仕事に向いた、速くて安い中位のモデルです。会社で切り替えるなら、社員が使う画面で選べるか、どの仕事を移すか、APIのデータをどこに置いているかの3点を先に確かめると、移した後に元へ戻す手間を省けます。

本記事は2026年10月28日時点の公式の情報と報道をもとにしています。Terraは、ChatGPT WorkとCodexを使うPlus・Pro・Business・Enterprise・Eduの利用者へ順に提供されており、APIからも使えます。普段のチャット画面では使えません。開発者向けのGitHub Copilotでも、10月26日から順に、会社向けのプランを含めて選べます。

GPT-6.1 Terraとは|画面を読み、アプリを動かし、文章を書く中位のモデル

Terraは、性能と料金の釣り合いを取った、中位のモデルです。前の版にあたるGPT-5.6 Terraの後を継ぎ、画面の読み取り、アプリの操作、読みやすい文章の3つを強めました。

GPT-6.1 Terraが強めた3つを、経理の請求書の仕事に当てはめた図。請求書のPDFを読む所が画面と書類の読み取り、会計ソフトに打ち込む所がアプリの操作、取引先へ確認のメールを書く所が文章にあたる

GPT-6.1 Terraは何が得意なのか

Terraは、画像の理解と正確なコンピューター操作を組み合わせた、仕事向けの速いモデルとして作られています。画像や画面の中身を読み取ってから、そのままブラウザやパソコンのアプリで次の操作に進めます。

文章は、結果を先に書き、補足を平易な言葉で添える書き方を狙っています。提案書の下書き、グラフの読み取り、アプリの中の情報を使う作業が、公式の案内で挙がっている向いた仕事です。

知らないことを推測で埋める癖も減りました。外部の評価会社の測定では、答えを知らない問いに推測で答えた割合が、前の版の88%から38%に下がっています。

会社のどんな仕事に当てはまるのか

例えば経理で、取引先から届いた請求書のPDFを読み、会計ソフトの画面に打ち込み、金額の合わない取引先へ確認のメールを書く仕事を考えます。請求書を読む所が画面と書類の読み取り、打ち込む所がアプリの操作、メールが文章にあたり、Terraが強めた3つがそのまま並びます。

ChatGPTの画面で使うほか、自社の業務システムからAPI*で呼び出して、同じ読み取りや文章づくりを組み込むこともできます。

反対に、何日もかけて大きなプログラムを組む仕事は、上位のモデルの方が向いています。次の章で、上位のモデルとの違いを見ていきます。

*API:自社のシステムやツールから、AIを直接呼び出して使うための窓口。画面を開かずに、決まった処理の中へAIを組み込める。

GPT-6.1 TerraはAstra・Solと何が違うか|料金・速さ・任せる仕事

Terraは、上位のSolやAstraより安くて速い代わりに、複雑なプログラムづくりでは上位に一歩譲ります。並び・料金・任せる仕事の順に、違いを見ます。

OpenAIの4つのモデルを、性能と料金の高い順にAstra・Sol・Terra・Lunaと並べ、それぞれに向く仕事を添えた図。Terraは文章・画面の読み取り・アプリ操作を受け持つ

4つのモデルはどう並ぶのか

OpenAIの主力のモデルは、性能と料金の高い順に、Astra*、Sol、Terra、Lunaの4段に並びます。Astraは長い判断が要る仕事の全体、Solは費用を抑えて長く回す仕事、Terraは文章と画面の読み取りとアプリの操作、Lunaは答えの形が決まった大量の仕事に向くとされています。

Terraの位置は、Astraに迫る性能を持つSolの一段下です。Solは長く回す仕事をAstraより安く進めるモデル、Terraはそれよりさらに速く安く、日々の業務をこなすモデルと考えると、選び分けやすくなります。

APIの料金はどれだけ違うのか

APIの料金は、読み込ませる量と書かせる量を、100万トークン*あたりで数えます。Terraは入力1ドル・出力5ドルで、Solの半額、Astraの10分の1です。モデルごとの標準の料金は次のとおりです。

モデル

入力

出力

GPT-6 Astra

10ドル

50ドル

GPT-6.1 Sol

2ドル

10ドル

GPT-6.1 Terra

1ドル

5ドル

GPT-6 Luna

0.1ドル

0.5ドル

1回に読み込ませる量が27万2千トークンを超えると、その回は入力が2倍、出力が1.5倍の料金になります。急がない処理を後回しにしてよい方式を選べば、標準の半額で使えます。

「Astraと同等」なのに、Sol・Astraに残す仕事は何か

「Astraと同等」は、コンピューターを使う専門業務の課題で測った結果です。OpenAI自身の評価では、この課題でTerraはAstraと同等の成績を10分の1のトークン単価で出し、前の版より15ポイント高い点を、約3分の1の費用で取りました。

課題を終える速さは、AstraとSolのどちらと比べても3倍を超えます。一方で、より複雑なプログラムづくりに勧められているのは、引き続きSolとAstraです。

プログラムの力も前の版より大きく伸び、コマンドを打って作業を進めるテストでは、解けた割合が21.5%から50.3%に上がりました。それでも外部の評価会社の採点では、Solの54点に対してTerraは48点で、難しいプログラムづくりはSolに分があります。

*Astra・Sol・Luna:OpenAIのモデルの名前。性能と料金の高い順にAstra、Sol、Terra、Lunaと並び、仕事の重さで選び分ける。 *トークン:AIが文章を読み書きするときに数える量の単位。読み込ませる文章や書かせる文章が長いほど、使うトークンも増える。

GPT-6.1 Terraに切り替える前に何を確かめるか|使う画面・移す仕事・データの置き場

料金が半分になっても、社員が使う画面で選べなければ使えず、仕事によっては結果が落ちます。APIで使う会社は、データの置き場の条件にも当たります。切り替える前に、次の3点を確かめてください。

社員が使う画面でTerraを選べるか

Terraを選べるのは、ChatGPT Work*とCodex*の中だけで、普段のチャット画面は対象外です。社員の多くが普段のチャットだけを使う会社では、Terraに切り替えても、その社員の仕事は速くも安くもなりません。

Enterpriseでは、使えるかどうかが、ワークスペースへの提供の状況と管理者の設定で決まります。全社に案内する前に、管理者がワークスペースで使えるようにしているかを確かめてください。

Terraは、モデルの一覧を開いて、使う人が自分で選びます。部署で使うなら、「この仕事ではTerraを選ぶ」と手順に書いておくと、人によって使うモデルがばらつきません。

どの仕事をTerraに移すか

移す仕事は、1章の請求書の例のように、画面や書類を読み、アプリに入力し、短い文章を書く仕事から選びます。複雑なプログラムづくりや、長い判断が要る調べ物は、SolやAstraに残します。

移すかどうかは、同じ仕事を今のモデルとTerraで回して決めます。例えば先月の請求書を10枚選び、両方のモデルで打ち込みと確認のメールまで進め、人が直した箇所の数と、終わるまでの時間を比べます。

直した箇所が増えず、時間が短くなった仕事だけを移します。効果を何で数えるかに迷う場合は、生成AIの費用対効果を測る4つの問いを、数え方の整理に使えます。

APIのデータの置き場は米国か欧州か

自社のシステムからAPIで使う会社は、データを置く地域を確かめます。APIは地域を選んでデータを置けますが、Terraが対応する地域は米国と欧州の2つだけです。

社内の決まりで、APIのデータの保存先に日本を指定している会社は、その指定のままではTerraを使えません。米国か欧州を指定して使う場合も、標準の料金に1割が上乗せされるため、見積もりに入れておきます。

APIに送ったデータは、会社が許可しない限り、モデルの学習には使われません。不正な使い方を見張るための記録は、最大30日残ります。

*ChatGPT Work:ChatGPTの中で、資料づくりや調べ物を手順に分け、アプリの操作も含めて長く進めてもらう仕事用の画面。 *Codex:プログラムを書かせたり直させたりするための、OpenAIの道具。作業を任せると、ファイルを読みながら進めていく。

よくある質問|GPT-6.1 Terraを会社で使う前に

Businessの席でも使えますか?

使えます。Businessを含む5つのプランへ、アカウントごとに順に届いています。Businessの席では、ChatGPT Workのモデルの一覧の「Advanced」にTerraが出ているかで確かめてください。

GPT-5.6 Terraから乗り換えると、APIの料金はどう変わりますか?

100万トークンあたりの標準の料金は、入力が2ドルから1ドルへ、出力が12ドルから5ドルへ下がります。同じ入力を繰り返し送るときの割安な料金も、0.2ドルから0.05ドルと4分の1です。

外部の評価会社が同じ課題で測った1件あたりの費用は、最も深く考える設定で、1.40ドルから0.40ドルに下がりました。単価だけでなく、1件を終えるまでに使う量も変わるため、見積もりは実際の仕事で回し直して作ってください。

Codexで使うには何が必要ですか?

手元のパソコンでCodexを動かすCodex CLI*では、0.159.0以降の版が必要です。パソコン用のChatGPTのアプリと、ブラウザで開くChatGPT Workでは、モデルの一覧の「Advanced」を開いてTerraを選びます。

画面の操作をTerraに任せるとき、何を決めておけばよいですか?

取り消せない操作を、どこで人が確かめるかを決めておきます。OpenAIの評価では、前の版より頼まれた作業の範囲から外れにくく、作業を乗っ取ろうとする悪意のある指示にも強い耐性を示しています。悪意のある指示とは、読み込ませたメールやWebページに紛れ込ませた命令のことです。

それでも、送信・支払い・削除のように取り消せない操作は、実行の前に人が確かめる決まりにしておきます。1章の請求書の例なら、打ち込みまではTerraに任せ、確認のメールの送信だけは担当者が自分で押す、と分けておくと安心です。

Microsoftのクラウドからも使えますか?

使えます。2026年10月26日の更新で、TerraはMicrosoftのクラウドでAIを呼び出すMicrosoft Foundryでも使えるようになりました。処理する場所を限らない配置なら、料金はOpenAIのAPIと同じ入力1ドル・出力5ドルです。

Microsoft Foundryでは、米国・欧州に加えて、アジア太平洋の範囲で処理する配置も選べます。範囲を限る配置の料金は、米国が標準の1割増し、欧州とアジア太平洋が2割増しです。3-3のとおり、OpenAIのAPIでは日本を指定したままTerraを使えません。社内の決まりをアジア太平洋の範囲で満たせるかを、情報システムの担当者と確かめてください。

*Codex CLI:パソコンで文字の命令を打ち込み、Codexを動かすための道具。画面のボタンではなく、命令の文字で操作する。

さいごに

GPT-6.1 Terraは、画面や書類を読み、アプリを動かし、文章を書く仕事を、SolやAstraより安く速く進める中位のモデルです。APIの料金はSolの半額で、OpenAIの評価では、コンピューターを使う業務の課題でAstraと同等の成績を出しています。

切り替える前には、社員がChatGPT WorkやCodexで選べるか、どの仕事を移すか、APIのデータの置き場が米国か欧州かの3点を確かめます。まずは今月、請求書の入力のように画面と書類を行き来する仕事を1つ選び、今のモデルとTerraで同じ件数を回して比べてみてください。

どの仕事をAIに任せ、結果をどう確かめるかは、スマートエイトの生成AI研修でも、受講者自身の業務を題材に扱っています。

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